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きゅうちゃん1

吸血鬼の子とサキュバスの子と聖樹のドライアドの子の三人がそろった初場面。(主人公寝てる)


草木も眠る丑三つ時、少女がきょろきょろと何かを探しながら空を飛んでいた。

地上に視線をくれながらも時折背後を気にする様子からして追っ手でも気にしているのだろうか?

しかし、幸か不幸か少女に追手は今の所ついていない。


「いい加減、直接吸いたいのよ。瓶やグラスから飲むのにもうあきたの!

 だいたい、家にとじこもってちゃ腐ってしまうわよ。」


そう、少女が愚痴でこぼしている通り、この少女は家から抜け出してきたのだ。

世話役が過保護に家から出してくれないので。

追手として気にしているのはその世話役の事だろう。


「あ、見つけた。」


何かを見つけたようでにんまり少女は笑う。

少女の視線の先にあるのは一人の女の子のようだ。

遊び疲れて眠ってしまったのだろうか?大きな木の下で眠っている。


少女はその女の子の所へ翼をはためかせて飛んでいく。

そして抱え上げるとまた空へ。

自分と同程度の大きさの女の子を抱え上げているというのにその飛行速度に変わりはない。


「それにしても人間がなんであんなところにいたんだろう?・・・まあ、いっか。」


少女は人間の領域にまで羽を伸ばすつもりだったが、近場で見つけれてほくほく顔だ。

魔族の領域ですやすやと眠っている女の子。

それに疑問は感じても深くは考えない所が世話役がつけられ、

その世話役に過保護にされる所以なのだろう。残念ながらこの場に世話役はいない。



少女が飛んでいったのは自分の城。自分の大きなベッドに女の子を寝かす。

小さめではあるがれっきとした少女のものだ。

少女が生まれた、と知れ渡るとこの城が作られ、献上されたのだ。

きれいな白亜の城なのだが、今は夜なのでその造形しかわからない。


「えーっと、なんだっけ。まずは処女か確認するんだっけ?」


少女の所に遊びに来て自慢ばっかりするおばさんの言葉を思い出す。

ちなみにおばさん、と少女は言っているが、その容姿は若い。

少女が嫌っているからおばさん、と嫌味を込めて呼んでいるだけだ。

まあ、その態度が件の人物に自慢ばっかりされる所以だったりもするが今は関係ないので割愛する。


少女は確認するが、知識もなく何を確認すればいいかもわからず、

適当に見て、たぶん処女だろう、という事にしておいた。

そもそも少女と同年代くらいに見える女の子は普通に考えれば確認するまでもなく処女であろう。

なお、おばさんは処女か確認しないといけない、などとは言っておらず、

処女がおいしい、と言っただけであったりする。


「これで、あとは首筋にかみつけばいいんだよね。か、かむんだ。この首に。」


そう考えると少女は首から目が離せなくなる。

何か首がなまめかしく感じる。

これにかみつき、そこから血を吸いだし、飲む。

その事を想像するだけで快感に体が震える。


「じゃ、じゃあいただきます」


震えながらおそるおそる口を近づける。

その様はとても不格好で隙だらけなものだったが、この場には少女と女の子しかいない。

首と口の接近を妨げるものはなく、ついに、少女の口は女の子の首に接触した。


「ん!?んーーー」


加減が分からないので少女は思いっきり首筋を噛む。

少女の牙が女の子の皮膚をぷつり、と貫いたその瞬間から女の子の血が口に流れ込む。

少女にとっての初めての直飲みでの吸血。

その味は、快感は、今まで少女が飲んできた血が泥水だったのか、と思うほどの衝撃を与えた。


「もっと、もっと!」


少女は相手の事など考える余裕もなく、飲めるだけ飲んでいく。

いや、余裕があったとしても人間相手に気を使うことなどなかっただろうが。


少女は初めての直での吸血なのでそのせいで衝撃が大きくなっているという事もあるが、

この女の子の血は吸血鬼にとってかなり魅力的なものだった。


体形、体調、性交経験、人生経験などによってその味は変わるのだが、

一番大きな要因となるのがその個体の保有魔力量によるものだ。

その点、この女の子は満点に近い点数と言える。

いや、人間でいうならこの女の子に並ぶものは存在しないかもしれない。


「すっごくおいし。うん、えっと、あとなんだっけ?まぐわいだったっけ?吸いつくすんだっけ?」


少女はぽーっと女の子を見つめる。

一応は新鮮さを保つための魔道具の瓶に入っているとはいえ

取り置きのの血しか飲んだことがない少女にとってはこの最高の血は強すぎたのかもしれない。

少女は血に酔ったような状態になっていた。


そんなぼけた頭で考えて選んだのはまぐわいの方だった。

おばさんが語っていた時の様子ではそっちの方がいきいきとして話していた気もして。

何かに浮かされたような顔で女の子の服をはいでいく。

後に考えると不自然なほどにこの時の少女の頭は性の方向に考えが偏っていた。



そして剥き終えると少女はごくり、と女の子の裸身に思わず唾をのんだ。


そしていざ事に及ぼうとしたが、それは成らなかった。


いつの間にか接近されていた影によって蹴り飛ばされたから。


「うぐっ、だ、だれだ!」

「さすがに頑丈ですね。幼いとはいえさすがは始祖、といったところですか。

 ところで知ってますか?人って排泄の時と性交の時が一番隙が大きいらしいですよ。」


壁にぶち当たってようやく止まった少女は起き上がりながら誰何するが、相手は答えない。

恐るべき威力だったが、少女の方もそれぐらいで倒れるほどやわではない。

油断なく相手を見る。影と認識した相手は見た目では自分と同年代ぐらいの少女であった。

そして、こちらは相手の事を知らないが、相手はどうやら自分の事を知っている様子である。


「私が始祖と知っての上での行動なのね。いいわ、その喧嘩、買ったげる。」


吸血鬼の始祖である自分に喧嘩を売ったのだ。

幼く、戦闘経験こそいまだにないがその力は絶大だ。その分プライドも高い。

相手の見た目が自分と同年代ぐらいに見えるのもその自信を後押ししていた。


「いえ、喧嘩を売られたのはどちらかというと私の方なんですけど。

 その子は私の大事な子ですから。返してもらいますよ。」


そう敵が宣言し、地面を足でコン、と叩いた瞬間、視界が森に染まった。


「なっ、なにこれ」


驚くのも無理はない。室内のいたるところから草や木が生えたのだ。

時には床や天井を破って木が生えている。

窓から見える外の景色から察するに城の周囲もどうやら木々に囲まれている様である。


「吸血鬼はあまり領域を気にしない種族ですけど、さすがにここは甘すぎです。

 周りを歩いただけで私の色に染めれてしまうのは攻めてください、と言っているようなものですよ?

 まあ、その歩いていた時間のせいでその子の血が吸われてしまったのですけどね。」


辺り一面を森にする、という離れ業をなした少女は平然と言葉を重ねる。


「ああ、自己紹介をするのを忘れてました。

 私は今代の聖樹のドライアドのアイラと申します。

 森の中でドライアドに勝てるとは思わない事です。降参をお勧めしますよ?」



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