転生サキュバス3
「後輩ちゃん、さすがに詩を書かれても私には分からないよ。」
朝礼までの時間にまず交換日記から書いていこうと一冊目を開いたところで一旦停止。
うーん、とりあえずよかったです、って書いとけばいいのかな。
いや、嘘はダメだよね。どうにか読まないと。
「大まかにいえば
かわいい。ギャップがかわいい、もう、すべてがかわいい。と書かれておるな。」
「あ、きゅうちゃん。おはよう。」
「うむ、おはよう。」
私の友達のもう一人、きゅうちゃん。
まあまあの頻度で遠くに出かけてて学校にいない時もあるけど、今日は来たみたい。
「で、何がかわいいって書いてあるの?」
少し嫌な予感がしながらもきゅうちゃんに詩の内容を確認してみる。
「それは、おぬしに決まっておろうに。」
「いやいや、決まってはないよ。」
木に止まってた小鳥がかわいかったよー、っていう日々の記録かもしれないじゃない。
まあ、違ってたみたいだけど。
「だいたい、おぬし、その後輩どもよりもちんまいのではないか?
もっと食・・・っても変わらんのじゃったな。難儀な物じゃな。」
まあね。食べても、食べてもあんまり効果はないんだよねー。その現実を思い出してちょっと苦笑い。
「まあね。けど詩は読んでくれてありがとね。」
話題を変えた私に乗ってきゅうちゃんも答えてくれる。
「よいよい。ところで詳しく訳してやろうか?」
きゅうちゃん、いたずらっぽい顔似合うなー。結構魅力的。
普段は老獪な感じなのに時々すっごく子供っぽくなるんだよねー。
「いや、恥ずかしいしいいよ。
詳しくは分からなかったけど、褒められてることは分かった、ありがとう、って返しとくから。」
「くっくっく、恥ずかしがりやじゃのー。」
後輩ちゃん達から見た私ってすっごいフィルターかかってるんだよねー。
そんな内容を読んだら気恥ずかしさと、現実との違いに絶望して死ねる。
いや、そんなことじゃ死なないけど、死にそうな気分っていうか、なんというか。
とにかく詩の詳しい内容は聞かないし、分らなかった、ってことで。
きゅうちゃんが詩とかに詳しかって助かったけど、きゅうちゃんが詩に詳しかったことで困るよ。
この子の交換日記はたまに詩的に書かれてるから困るんだよなー。
まあ、解読がおもしろいからいいけど。ただし、難易度がイージーなのに限る。
ノーマル辺りからすでに難解だし、ハードとかもうちんぷんかんぷん。
他の二人の交換日記の内容は日常で起こった事や、相談、私への質問とかで返しやすいんだけどね。
交換日記の内容や返事に時々きゅうちゃんにからかわれながらも書いていって残るは手紙5通のみ。
けど、まあ、あまり時間もないし次の休み時間に書こうかな。
それにラブレターっぽい一通は教室で開くのはちょっとまずいだろうし。
「これね~、読まない方がいいよ~。」
と、思ったらアイラちゃんがまさにその一通を開いてた。
「ちょ、ちょっと、勝手に開いちゃダメじゃない。というか、読んだらもっとダメでしょ!」
アイラちゃんから手紙を取ろうと手を伸ばすもその手はすかっ、と空ぶってしまう。
きゅうちゃんが横から手を伸ばしてかすめ取ったのだ。
そして手紙をちらっ、と見た後にうかんだのは怒りの混じった表情。
「これは害悪でしかないぞ。そこなのんびり娘の言う通り読まぬ方がよい。」
うーん、これは読みたくないなー。でも、読まずに捨てるのはダメだと思う。
内容によっては返事もせずに捨てるけど、とりあえず一度は読まないと。
という事でひょい、ときゅうちゃんから手紙をすり取る。
読まない様に勧めてはいるけど、妨害してまで止める気はもともとなかったから簡単に取り返せた。
【こうして手紙を書かせていただいたのはムーさんと付き合いたいからです。自分はムーさんを束縛しません。ムーさんが不特定多数の男性(もしかしたら女性も)と関係を持とうとも自分は咎めません。たとえムーさんのお父さんと一緒にすると言われても自分はーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー】
ボシュッ
燃やした。
掌の上で燃やした。
灰すら残らない様に燃やした。
教室中から視線が集まってるけどそんなこと気にしない。
「ふむ、久しぶりに見るがやっぱりきれいじゃの。おぬしの翼。
それにすさまじい魔力量じゃ。さすが、という所じゃの。」
ああ、出てたか。翼。
どうも、みなさん。私、淫魔してます。俗にいうサキュバスです。
サキュバスだからこそこんな手紙が来るし、家族と交わってても問題ないとかいうふざけた手紙が来ます。
サキュバスの常識では実際なんの問題もなくて、むしろ私が変わり種となってるところが困ったところ。
サキュバス的におかしい私は両親からたびたび、まだなのか、とせっつかれます。
サキュバスなのにおかしい私は性関係の事に嫌悪感を持ってるのでいろいろと大変です。
はあ。
取りあえず翼とかしっぽとかしまお。
サキュバス的には擬態状態、ただし私的には通常状態である人間の姿に戻ります。
「アイラちゃん、機嫌が悪いから朝礼休むって先生に伝えといて。」
「わかった~。ついてく~?」
気遣いをしてくれるけど今はノーサンキュー。
「一人にしといて。」
そうして教室を出た私は、ただでさえ空腹の中、魔力を急に使ったせいか、はたまた
怒りやストレスのせいか、バタンキュー、と倒れてしまうのであった。
サキュバスだけど、サキュバスってないサキュバスを書きたくて転生サキュバス少女生存録を書き始めた記憶があります。