地下のお店へ
精神的ダメージを負った私はお酒を求めて酒場に行く。やっぱり今日は独りで飲もうかなー。よくよく考えたらやけ酒の理由が属性をバラされたなんて言えないわ。
私服に着替え少しキツメに化粧をして大人っぽくみせる。一人で飲むのに声をかけられない対策なのです。
市場で賑わう表通りの細い路地裏にひっそりとその酒場はある。
地下にお店があるから怪しさが倍増されている。
夕方から深夜までやっているその酒場はモダン風でジャズがあうバーだ。
独りで静に飲みたい時に利用させてもらってて、非番の兵士やお忍び貴族が利用しているのも見たことある。あと、噂話が集まっていて面白い。どこの誰が横領しているのだとか、誰がパワハラがキツいとか。今起こっている事件の調査具合だとかね。
小声で喋っているから普通は聞き取れないけど風の魔法で声を私の耳元までこっそり運ぶこともできるのだ。
ここで見聞きしたことは他言しないっていう暗黙の了解になっているのだ。
カランカランと店の扉を開く開店直後で人がいない。ラッキー!
「今晩はマスター、今日はマスターのおすすめでお願いするわ。」
「……承りました。」
このマスター、名前も知らないしあまり喋らない。基本的に一言二言喋るだけだ。
入り口から一番奥のカウンター席が私がいつも使っている席だ。
マスターのチョイスは外れがないので楽しみだ。
飲み始めて三時間がたった頃だろかおつまみのトロック鳥の唐揚げをつまみ、情報収集(趣味)をしながら飲んでいたら隣に人が座った。
え?隣以外にも空席あるよね?ヤダなー。折角人が独りになりたくて飲んでいるのに。
「今晩は、レディ。もしよろしければ私と一緒に飲みませんか?」
「今晩は、ごめんなさいね。今日は独りで飲みたい気分なの。他の方とお飲みになって下さる?」
私はコップを持つ左手を見せながら一口飲む。こういう時は察してもらおう作戦だ。事前に安物の指輪を左手に着けていたのだ!
「おや、これは手厳しい。ではここの支払いは私が出そう。」
「いいえ、結構よ。あなたの求めるかわいらしいレディを誘いなさいな。」
こいつ、何で引き下がらない?何か別の意図でもあるの?
すっかり酔いが醒め気味悪さを覚えた私は外でボコろうと決める。
「マスター。今日はそろそろお暇させていただくわ。」
代金を多目に置いてそそくさと外に出た。




