8
「昨日は喋るだけ喋って、今日はこっちの質問にも答えてもらうからな!」
「ガハハハハ。そういうつもりではなかったんじゃが、まぁよい。答えられる……」
「はぁ? 何もわからないだろうから、優しさで説明してあげたってのに、まったく、これだから子供は……」
「こらこらリタよ。せっかくわしが応えてあげようと、心の準備をしているのに……」
「ハゲは黙っていなさいよ! まだまだ説明しないといけないことが、いーーーーっぱいあるのよ! じゃないと、何も知らず、この子死ぬだけよ」
まーた始まった……座るか。
「あのぉー」
「おっと、スマン。スマン。口封じするからすこーしだけ待ってなさい。ガハハハハ」
「え、イヤ……鍵は閉めないでーーーー!!」
鍵?
「――――――待たせたな坊主! ガハハハハ」
「あ、うん。良くわからないけど、頭の中でごちゃごちゃされるとワーーーーってなるから姿だけでも出せない?」
「そうじゃな。それは説明しなければならぬことの一つ。よし、わしの名前を叫んでみるんじゃ」
「え? うん。それじゃ――フォカロス!」
空間に声だけが木霊する。
「説明不足じゃった。姿をイメージしながら名前を呼ぶんじゃ。ナイスミドルじゃ。わかったな。ハゲてないからな。ガハハハハ」
「ハゲロス!! あっ」
目の前に、頭頂部が綺麗な、小さいおっさんがポンッと現れる。
「コラッ! 名前も姿もこれじゃないわい! しかし、まぁ、こういうことじゃな。名前ってのはその人と成りを表すもんじゃ。名前とイメージが伴ったとき、わしもリタも仮初の肉体を持つことが出来る。そして、実体と近いほど、より大きな力を発揮することが可能じゃ」
顎鬚を優しくとかし、時折、頭頂部を寂しそうに触れる。
「思ったより簡単だね。この調子で……リタ!」
「ガハハハハ。無駄じゃ。鍵かけちゃったもーん。一応わしがここの管理人じゃからな」
鍵輪を人差指で軽快にクルクル回す。
「まぁ、坊主の練習にならんし、また開けるかのぅ…………」
鍵の一つが強い光を放つ。と、同時に桃色の扉が呼応する。光と光が道を作り、静かに音を立てる。
「坊主。呼んであげるんじゃ」
「リタ!」
正面に、十代半ば、ピンク髪、白いワンピースを着た中肉中背の女性が腕を組み、仁王立ちで召還される。
「よっくも鍵をかけてくれたわね! でもま、容姿は合格点だから許してあげるわ!」
「リタはそんなに若くないし、胸ももうすこーしだけあるわい。ガハハハハハ」
「パパは、ぶふっあははははは…………いいんじゃない……腹痛い……」
「笑いすぎじゃ! これじゃ力の十分の一も出せんが……最初じゃ、よいよい。次じゃな。色々な姿をイメージしながら、実体に近づけていくんじゃ。リタも座ったらどうじゃ。足の隙間から見えとるぞ?」
骨と何かが勢いよく接触する音と共に、小さいおっさんが宙を舞う。足を振り上げきったリタの服装も、次からは動きやすくしてあげようと、冷静に考えるラインハルトだった。
「レコーディスってなんなの?」
ラインハルトの正面に二人が並ぶ形で寛ぐ。
「その質問にはわしが答えよう。簡単に言えば、記録媒体じゃな。画期的じゃろ? わしの最高傑作と呼んでもいい出来じゃわい」
「お陰様で、こっちは死んでもここに居座り続けてるんですけどね!」
「それは、まぁ、あれじゃ。ガハハハハ」
そういえば、俺が七代目とか言ってたような………………。