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「唖然とするのも無理はない。わしはフォカロス・ファーネル。ナイスミドルじゃ。先に説明しなわからんわな。ガハハハハ」
「わたしはリタ・ファーネル。プリティーガールよ。うるさいハゲの代わりに、少しだけ説明してあげる」
親子か……?
「あの……」
「ここはあんたの内なる世界よ。扉が六枚あるのは感じてるはず。それは前任者を表わしているわ。あんたは七代目。ハゲが二代目で、わたしは三代目。一応忠告しておくけど、扉を勝手に開けようとしないことね。優しいのはわたし達くらいだと思って」
ラインハルトの言葉を遮り説明が始まる。人の話を聞かないタイプ。親子だと確信する。
「しつも……」
「ガハハハハ。まったく、わしの娘として恥を知らねばな。そんな説明じゃ足りんわい。坊主、レコーディスを使ったな? 全てはそこから始まる」
「このハゲ! 恥とは何よ! 大体ねぇ、説明したところで理解出来ると思う? まだ毛も生えてない子供よ?」
「生えて……」
「生えてるの!? ごめんなさいね。七百年ぶりで……」
「いいよいいよ。少しだけ大人だからね」
眉間に皺が寄る。傾げた頭が戻ってこない。しかし、夢の中にしては鮮明な声で、意識もはっきりしている状況。冷静に、一つずつ整理していく。
フォカロスって、バーラムが言ってた人だよな……レコーディスを作ったっていう。それに、七代目? ――でもこれって、もしかして特別な力が宿っていたりしてな! 手に力を込めたら何かが発動するみたいな!?
右腕に左手をそっと添える。掌を返した右腕に力を込める。――――しかし、何も起きなかった。
「なにしてんの? アメちゃんでも欲しいの?」
「ガハハハハ。その手は、あれじゃな。俺の右腕の封印よ、静まれ! ってやつじゃな」
「ちげーよ! 若干合ってるけども! それよりさ、何で俺からは見えないのに、二人は見えてるの?」
辺りを見渡す。背中に乗っているか? と、手で触わる。速度勝負だ! と、回転もする。が、二人の姿は確認できない。
「視界を共有してるのよ。言うなれば、私たちはあんたの頭の中に存在してるわけ。実体を持たないのよ。――そうね、例外はあるけど、また今度にしましょう。あんたを呼ぶ声を聞こえるわ」
「――――・――ト、君。ハルト君! あーさーだよ! 起きて!」
バーラムの声で目が覚める。昨夜の出来事は覚えている。夢であって、現実。ここは下水道でもなければ、家でもない。
「あ、起きた? おはよう。なかなか起きないから心配したよ」
バーラムの顔と空が見える。今日も良い天気だなぁ。土の感触? イテテテ……身体中が痛い。
「ご飯の準備も出来てるから、準備が出来たら昨日のところまでおいで」
「ん。ありがとう」
朝飯はなんだろな~。いつもはパンとジュースだし、そんなところ――――――!?
バーラムが歩く方角にリリアが見える。既にリリアは食事中の様子も、ラインハルトに気付き軽く手を振る。
「リリア! 後ろ!」
高さ三メートルはあろうかという猛獣を、リリアの背後に捕らえる。咄嗟に声をかけるも身体は思い通りに動かない。歯を噛み締め最悪が頭をよぎる。
「あっはっは。ハルト君は寝ぼけてるのかな。もう仕留めてあるから大丈夫。さっ朝ごはんにしよう」
あっけらかんと笑い飛ばされ、開いた口が塞がらない。天を仰ぎ心が躍る。