9.何でだろう。
朝が来た。
私の気持ちとは正反対の晴天だ。
結局、ツン対応とはどうすればいいのか悩んであまり眠れなかった。
ギャルゲーとかは、ツンデレ女子いるけど、そんな甘ったるいツン対応で
婚約破棄が出来るのか気になる。
「お嬢様、もうすぐで朝食でございます」
今井さんの声が聞こえる。
もうそんな時間か…。
「うん、今行く」
腹が減っては戦は出来ぬってね。
ーーーーー
「…何これ」
学園に来て早々、私は疲れていた。
嫉妬と羨望に満ちた目を向けてくる女子達。
私を見ただけで顔を赤くして走り去る男子達。
中には、私に告白してくれる女子もいた。
百合になっちゃいますよ~。
まぁ、私の名字百合だけど。
そんなギャグを頭で作ってみる。
そうやって現実逃避しなければ、私は冷静な思考になれない。
「百合千紗子様、私…。千紗子様が好きです」
今日五回目の告白。私は単純に嬉しい。
告白されるなんて経験なかったから。
でも、でも……。
「ごめんなさい。私、そういうのに疎くて…。
これで良いのか分からないけれど、まずはお友達になりましょう。
柴崎 綾芽さん」
そう。このロングヘアーの女の子は柴崎綾芽さんという方だ。
先日、図書室で同じ本を同じタイミングで取ろうとして、どうぞ対決をした女の子。
「……えっ!?いいんですか…?私なんかと…」
「はい。お友達になりましょう。あと、私なんかとなんて言っちゃいけませんよ?」
今の柴崎さんが前世の私に似ていて。
何だか友達になりたかった。
「ありがとうございます。千紗子様…!!」
ウルウルした瞳の柴崎さん。
…可愛い。
「いえ。私のこと、千紗子とか好きに呼んでください。敬語も外しましょう」
「えっ…。じゃ、じゃあ!ちーちゃん…」
何その呼び方!
可愛すぎる。初めての呼ばれ方に嬉しくなった私は調子に乗った。
「よろしくね、綾ちゃん」
綾ちゃんは、固まった。
「おーい、綾ちゃん?」
綾ちゃんの前で手をブンブン振るけど、何の反応もない。
変だなぁ…。
「…千紗?何してるの?」
「縁っ!!……助けて、お願い」
縁の頭にはハテナマークが浮かんでいる。
「あれ、この子…。柴崎さん?」
「う、うん。綾ちゃんって私が呼んだら動かなくなって…」
嫌だったのかな?
「あぁ~…。なるほどね…」
「何!?原因が分かったの?教えて…!!」
意味深な言葉を吐いた縁を問い詰める。
「分かったから!近い…!!」
「えっ。あ、ごめん」
縁からサッと離れる。
縁は弟みたいだから、距離感が分からなくなる。
「いや、良いけどさ。……柔らかかった…」
「え?」
「何でも」
むむむ…。これが思春期男子なのか。
よく分からないぞ。
「兎に角、柴崎さんを保健室に運ぼう」
「うん」
そういって縁が綾ちゃんをお姫様だっこしたシーンを見たとき、
チクッと胸が痛んだ。
柴崎綾芽の綾芽は花の菖蒲にちなんでつけました。