7.お弁当と仕事。
いつもより長めです。
昼休み。
私は、凪と縁、蓮野さんと教室で昼食を食べることにした。
「千紗子はお弁当なのね」
蓮野さんが珍しげに私のお弁当を覗き込む。
「そうなんです。私料理が好きで…」
前世で、お母さんから『花嫁修業よ!』と言われて色々教え込まれた。
その際、料理の魅力にはまってしまったということだ。
ちなみに、今世では、記憶を取り戻す前から料理をしていた。
何でだったか忘れたけど…。
「ちーさ。その玉子焼き頂戴?」
縁がコテンと首を傾げながら訊いてきた。
この動作に周りにいた女子達は、ボッと顔を赤らめた。
イケメンめ…。
「えっと…。良いけど。甘いよ?」
私の玉子焼きは、砂糖たっぷりだ。
玉子焼きは塩派と砂糖派に分かれるからそこが心配。
「いいよ。僕甘いの好き。千紗も好き…。なんてね」
………ん?
今、変な言葉が聞こえたんですが。
縁、試すような目をしないでくれ。
「おい、やめろ縁。千紗子が勘違いしたらどうする」
凪がギロリと縁を睨む。
そうだよね。うん、からかってるだけだよ。
「縁?からかわないでよ」
苦笑しながら言う。
そうすれば、縁は頬を膨らませた。
「ちょっと、お話し中ごめんなさい。昼休みなくなりますわよ」
蓮野さんに言われて、気づいた。
昼休み終了十分前。
ヤバイっすね。
食べ始めが遅かったからな~。
「はい、縁。玉子焼きあげる」
「本当?ありがとう」
パァーッと縁の顔が明るくなる。
そんなに嬉しかったのかな。
私達は、急いで昼食を食べた。
ーーーーーーーーーー
放課後、藤宮君にクラス委員の仕事を確認しようと言われた。
確かに、分からないまま仕事に取りかかるよりもしっかり覚えた方が
いいと思ったから承諾した。
待ち合わせ場所の青蘭ルームに足を運ぶ。
ここは、青蘭学園創立時つくった場所で、
クラス委員長、生徒会が入ることを許されている場所だ。
「失礼します…」
そっと扉を押して入ると、誰もいなかった。
うーん。緊張するな。
心を落ち着かせるために好きなアニソンを口ずさむ。
今の時代は本当いいよね。
スマホで何でも出来ちゃうし。
「百合さん……?」
「ひあっ!?」
ゆっくり後ろを振り向く。
そこには、ニヤニヤ顔の藤宮君がいた。
「百合さん、こんにちは」
「…こんにちは」
正直、私は二人でいたくない。
これで女子の反感を買いたくないし、桔梗ちゃんに誤解されるかもしれないから。
あと、藤宮君のイケメンオーラにやられそうだから。
「本当に君は…」
「はい?」
「いや、何でもない」
「そうですか…?」
まぁ、しつこく訊いても失礼だし、やめとこう。
「藤宮君。神楽坂桔梗さんにお会いしませんでしたか?」
こういうのはド直球に訊いた方がいいよね。
…多分。
「神楽坂桔梗さん…?あぁ、華道の家元の…」
「はい、その方です」
「同じクラスだから普通に会ってるけど…」
…そうだった。
同じクラスだったら一日に一回は絶対会うし。
「じゃ、じゃあ。お話は!?」
「話はしてないな…」
「えぇー…」
しまった。
残念すぎて、心の声が…。
「…どうしてそこまで気になるのかな?」
クソッ。藤宮君ターンに入った。
詮索はここまでだ。
「いえ。あそこまで綺麗な方ってどこにもいませんでしょうし。
クラスの男子達はみんな神楽坂さんの虜になっていると…」
「ふぅん?」
嘘じゃないですよ?
だって、桔梗ちゃんを見ている男子って多いから。
まだ入学から一週間しか経ってないっていうのに。
「まぁ、いいや。早く確認をしようか」
「…ですね」
その後、藤宮君が分かりやすい解説を入れてくれながら、
仕事内容を確認した。