6.この世界の事情。
「ちょっと、千紗子?貴女どういうつもりでして?
藤様とクラス委員長になるなんて…。羨ましいわ」
蓮野さんがシュンとしている。
みんなからしたら羨ましいとか思うんだろうけど…、私は最悪。
それに、折角ヒロインがいるって言うのに攻略対象はヒロインの桔梗ちゃんと
話しているところ見たことないし。
まだ一日目だからかな…。
「ごめんなさい蓮野さん。私は出来ない…と言ったんですが…」
「そんなことないわ。千紗子はちゃんとクラス委員長出来るわよ」
蓮野さん?
そう言ってくれるのは嬉しいけど、なりたかったんだよね?
ツンデレ…。
「えっと…。ありがとうございます。でも、蓮野さんしたかったんですよね」
私が言えば、蓮野さんはふるふると首を振った。
「私、今、気になる方がいるの」
「……えっ?」
あの、藤宮君のストーカー(仮)の蓮野さんが…?
誰だその幸せ者は。
「誰か、というのは…」
「それを訊くのはタブーよ。時期が来たらお教えするわ」
悪戯をする子供の様に蓮野さんは笑った。
美人の屈託のない笑顔は可愛かった。
「弥生がそんな風に思う人って誰なんだろうね」
いつからいたのか藤宮君が言った。
忍者…?
「あら、藤様。お知りになりたい?」
蓮野さんがそう言うと、藤宮君は苦笑した。
「弥生、学園ではその呼び方やめてくれよ。普通に大和で良いだろ」
…ん?
二人は学園の外でも会ってるってこと?
そうか、そうだよね。
二人とも、名家の子供だし。
「あ、千紗子は知らなかったのかしら」
「え…?」
「私と、藤様。従兄弟なのよ」
従兄弟…。
「そうなんですね。じゃあ、何で藤宮君を気にする素振りなどを…」
「あぁ。私、昔は本当に藤様――大和の事が好きだったのよ?
でも、何か違うと感じて…。今ではただの従兄弟ね。
だけど、しつこく言い寄ってくる男性の方とかがいるから、
それを避ける為に大和を使ってるって訳」
うわぁ…。やっぱりこの世界は凄いな。
男性避けの為に従兄弟を使ったり…。
「まぁ、そのお陰で俺も助かってるんだけどね」
私は、藤宮君の言った言葉の意味が理解できなかった。
どういうことなんだろう。
「それは、どういう…?」
「ふふっ。ほら、弥生が俺を好きって勘違いしている人がほとんどでしょ?」
「そうですね。現に私もそうでした」
私はうんうんと頷きながら話を聞く。
「そのお陰で俺も厄介な女性関係から逃れられてるんだ」
キラキラスマイルからは想像できない黒い言葉が出た気が…。
私は気のせいだと自分に言い聞かせて、それをスルーした。
藤宮大和の性格を変えました。