13.頭でも打ったのか。
藤宮君と萩野君、そして私の婚約破棄計画を始めて数日。
まぁまぁいい方向に進んでいると思う。
計画はこうだ。
私はいつも、皆の前で藤宮君にデレデレした態度をとる。
その後、藤宮君にそれを咎められて口論になる。
私はダッシュでその場を去る。
藤宮君がその私を追いかける。
今日もそれを実行しよう。
「藤宮君、今日もいい天気ですね」
「そうだね。どうしたの?」
「理由がなかったら、話しかけては駄目なんですか?」
必殺技の上目遣いで言う。
でも、身長が平均より低い私は自然とそうなってしまうのだけれど。
というか、私にされても気持ち悪いかもしれない。
「いっ、いや!!嬉しいよ」
目を思いっ切り泳がせて言ったら駄目ですよ藤宮君!
桔梗ちゃんが気になって、チラッと桔梗ちゃんを見る。
桔梗ちゃんはこちらを気にしているようだけど、何も言わない。
うぅ、ジレジレするなぁ。
絶対、藤宮君の初恋は、桔梗ちゃんなんだって!!
「もう。藤宮君は、いつものように、私を咎めないんですね?」
もともと、私は少々キツイ物言いをすることがあったから、それは有利な事だろう。
しかし、藤宮君が優男過ぎて、それをあまり発揮できない。
「百合―いや、千紗子。俺は、君の事が大好きだよ?」
「はっ、ふ、えぇ?」
いくら婚約者(仮)でもこんなこと言わなくて良いんじゃ…?
それに、いきなり名前呼びなんてっ。
彼氏いない歴=前世+今世の年齢の私にとっては、キツイ。
男の人ってこんなものなの?
思ってなくても言えるの?
生温い目をしないでクラスの皆さん!
「思ってもないことを…」
「はは」
俯いて言えば、藤宮君は笑った。
「笑わないで下さい!」
私が抗議すればヒソヒソと話し声が聞こえた。
『百合姫が、可愛い…』
『駄目よ。百合姫は藤宮様のだわ』
百合姫って何!?
あと、可愛いと藤宮君のものは全力で否定させてもらいます!!
「なぎぃ…、えん…」
いつも私の近くにいるこの二人が今日だけどこか行っている。
「千紗子?何故、ここにはいない二人を呼ぶの?」
「藤宮君が変だからです!」
「嫉妬しちゃうな…」
藤宮君、消費期限が過ぎたものでも食べたの?
それとも頭打ったの?
「私!えっと…。ごめんなさいぃいいい!!」
居たたまれなくなって、ダッシュで教室から出た。
あんな薄っぺらい言葉に騙されては駄目よ千紗子!
男は、薄っぺらい言葉がスルスル出てくるって凪に教わったんだもの。
「いっ!?」
誰かにぶつかってしまった。
割りと、体格のいい男の子。
立とうとしたら、足に力が入らない。
尻餅を何度もついてしまう。
「わ、悪かった…。って、あれ?百合さん?」
「はぎのくん…」
「立てねぇの?」
コクリと頷く。
萩野君は目をソッと逸らして、はぁとため息を吐いた。
「シスコンとアイツには、ばれねぇようにな」
「へっ!?」
いきなりの浮遊感。目線が高くなっている。
これって、これって……!!
お姫様抱っこではありませんかぁ!?
「首に捕まっていいから」
萩野君に言われて、萩野君の首に捕まる。心なしか安定した気がする。
そういえば、シスコンとアイツって誰だろう?
「萩野く―」
それを訊こうとしたら、保健室の扉がガラッと開いた。
クソッ。タイミング悪いなぁ。
「何か言ったか?」
あの、運営さん。
萩野君って本当に俺様キャラなんですか?
「…いえ、何も」
萩野君のとびきりスマイルで訊く勇気を害されてしまった。
「どうしたんですか…?」
保険医の真矢先生が、お姫様抱っこされている私としている萩野君を見て驚いている。
ウェーブのかかっている真矢先生の髪はとても綺麗だ。
美女で、スラッとしていて。相談に乗ってくれて。
憧れの先生。ちなみに、真矢先生は、オタクらしい。
「百合さんが足を怪我した」
「そうなんですか?こちらへ来てみてください」
ベッドへ誘導され、そこに腰かける。
ズキズキと足が痛む。
「あら?包帯が足りませんね…」
真矢先生が救急箱を見て首を傾げている。
「ちょっと待っててもらえませんか?」
眉を下げる真矢先生。
女の私でも庇護欲がそそられる。
「全然大丈夫です。寧ろお願いします」
「ふふ。百合さんは面白い方ですね」
「俺も同意見だ」
萩野君がウンウンと頷く。
クスクスと笑いながら真矢先生は、保健室を出ていった。
「萩野君、ありがとうございます」
「…いや」
プイッと萩野君が顔を逸らす。
えぇ…?ツンデレも兼用しているんですか?
「あ、そういえば。藤宮君今日変だったんですよ?」
萩野君に出会う前の出来事を萩野君に報告した。
「それは…、俺の作戦だ」
「えっ」
萩野君の作戦…?
どういうこと?
「その…な?百合さんがデレデレしても、クラスの皆がそれを温かく見守っていると大和から報告があってな…。こっちも反撃してやろうと思って…」
反撃の仕方が間違ってます!!とは言えなかった。




