11.藤宮君と縁。
綾ちゃんを保健室に連れていったあと、縁と並んで中庭を歩く。
綾ちゃん、大丈夫かな。
「百合さん…!!」
息を乱しながら、藤宮君がこちらへ走ってきた。
…ツン対応、しなくちゃ。
「えっ、あ、えっと…。ふじ、藤宮君。どうしたの…?」
こらぁ~!!
ツン対応出来てないよ私。
「いや…。俺の『婚約者』を探していたんだ」
「あ?」
縁…、そこまで怒らなくていいと思うけど。
藤宮君はからかってるだけなんだから。
「私と藤宮君、婚約者…なんですよね…」
ボソッと藤宮君に問う。すると、藤宮君はクスッと笑った。
本当に、こういうイケメンズルい。
「当たり前じゃん。俺のお姫様」
うわっ…。
気障な言葉。ファンサしなくていいよ…。
兎に角、ツン対応、ツン対応。
「…そうですか」
そうすれば、縁が鼻で笑った。
おいおい。
「百合さん、ちょっと来てくれない?」
「え――」
「駄目だよ。千紗は、これから用事があるんだ」
『いいですけど』と言おうとしたら、縁が被せて言った。
私、用事なんて無いけど。
こういう場合って…どうしたらいいの?
「俺、桑井君に訊いてるんじゃなくて、百合さんに訊いてるんだけど」
藤宮君が目を細めて言う。
「いいんです。千紗のことは僕が一番知っているから」
刺々しく、縁が反論する。
どうしたんだろう。いつもの縁じゃない。
「縁?」
縁の制服の裾を掴み、こちらを向かせる。
こうしないと、止まりそうにないから。
縁は、気付いた後、直ぐに笑顔に戻った。
さっきの黒い笑顔はどこにいったのか。
…演技力高い。
「どうしたの?」
「あの…。私、藤宮君と話してくる。だから、先に行ってて」
「……そっ、か。いってらっしゃい」
無理に笑ったんだろう。変な笑顔だ。
私は、縁のこういうところが嫌だ。気に入らないことがあったら言ってくれればいいのに。
怒ってもいいのに。なんだか、距離を置かれている気がする。
凪みたいに、ツンデレだったら話は違ってくるけど。
「うん、藤宮君」
「…決まった、のかな?」
「はい」
覚悟を決めるんだ!!
ツン対応しないと。
「じゃあ、青蘭ルームに行こう」
―――――――――――――――
青蘭ルームに入り、紅茶を淹れる。
ここは、色んな設備が整っていて快適だ。
「紅茶で良かったですか?」
「うん。ありがとう」
本当に眩しいスマイルですね。浄化されそう。
「――それで?話というのは」
早速、本題に入る。
他にも、同学年の別のクラス委員長がいるのだけれど、
こちらをジッと見ていて落ち着かない。
早く終わらせなければ。
「そうだったね。百合さん。君はこの婚約どう思ってる?」
いや、シナリオ通りだなと思いました。なんて口が裂けても言えない。
バレたら研究されたりするかも…。
「私は、大人達の勝手な都合だなと思いました」
「…だよね。……ねぇ、俺達さ『婚約破棄』しない?」
「――はっ!?」




