01
いよいよフロア魔法学園に入学するオーブとモネ。二人にこれからどんなことが待っているのか?!
「みんな、おはよう。少しだけ僕から新入生のみんなにお話をするよ。この学校はフロア王国魔法騎士直属の魔法学園だ。当然、みんなは魔法騎士になるために入学試験を受け入学してきたのだと思う。やる気と勇気に満ちた君たちならば、きっとその夢を現実のものにできるはずだ。しかし、魔法騎士は危険と隣り合わせになる仕事だ。やる気や勇気だけではどうしようもないことだってある。だから、この学園で最も大切なことは実績だ。いいかい。ここにいるみんなは仲間でもありライバルでもある。毎日進歩を求めて学園での生活を過ごすんだ。いいね。」
そう第27代魔法帝ヘルネ=リューネスキーが発言すると、それまで和やかな雰囲気だった会場は一瞬にしてシビアな空気を漂わせたのであった。
しかし、実績という言葉に動揺を隠し切れない魔法生の声も聞こえた。
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その夜、王都を挙げての新学祭が開催された。
「実績か~、ここからは戦いってことなんだな。俺は絶対魔法騎士になって見せるんだからな!」
「農民風情が魔法騎士になる?いいか下民。魔法騎士のような神聖な役目は我々のような気高く気品のある貴族がなるものなのだよ。わかったならこの場から消え去るのだな!」
「な、なんだよ!俺だって魔法騎士になってみせるさ!!」
「黙れ下民!!...」
「これはこれはアレイ殿。下人などに感情的になられるとは感心いたしませんな。貴族である我々が相手にするような者ではありませんよ。」
「おぉ、これは失礼したナジル殿。我々の魔法は剣魔法に闇魔法。このような下民が我々にかなうはずもないのに、つい感情的になってしまったよ。」
「ちょっと!私たちのことをそんな風に言うことないでしょ!!いくら貴族様でもこのような発言許されるものではないわ!!!」
いつも物静かなモネが感情的に貴族のアレイとナジルに声をあげた。
それにナジルが声を荒げた。
「我々に何たる無礼!死をもって償うべきだ!!」
「【 闇魔法 黒槍の激攻 】」
ナジルが魔法を唱えるとモネの胸をめがけて黒色の槍が猛進しようとしていた。
「【 白金魔法 遮光する白盾 】」
遠くから聞こえたその声でモネの目の前には美しく輝く白い盾が一瞬にして出来上がり、黒色の槍をへし折った。
「モ、モネーーー!!!!...って...」
「ナジル、何をしているんだ。歴史あるオズハック家に君は泥を塗るつもりなのか?」
「あ、あなたは...レオナルド=メテルニッヒ殿。貴方はこの下民の味方をなさるのですか?!」
「我々王族や貴族は農民や商人を下民とさげすむのではなく、むしろ彼らのおかげで毎日生活を安心して送られている事に感謝を込めて敬意を表すべきなのだよ。」
「レオナルド殿、正気ですか?!」
アレイやナジルとは全く異なる意見を発したレオナルドにアレイが驚くように声を発した。
それに対して、レオナルドは当然と言わんばかりにアレイとナジルの話を振り払うと、機嫌を悪くしたように二人は都の暗闇にワイングラスを片手に消えていった。
「大丈夫だったかい?すまないね。バジトルト家とオズハック家は君たちのような者たちを酷くさげすむものでね。本当に申し訳ない。おっと、申し遅れた。僕の名前はレオナルド=メテルニッヒ。白金魔法を僕は使うんだ。二人は?」
「俺はオーブ=ロプストラ。不死鳥魔法を使うぜ!で、こいつはモネ=エバーニュ。雲魔法の使い手。レオナルド、よろしく!」
「ちょ、ちょっと!レオナルドさんは王族よ!もっと丁寧な話し方しないと失礼だよ!!」
「ははは、同級生なんだからそんな気を使わなくても大丈夫だよ。これから仲良くしようね。でー...そんなことよりさ!君たちの魔法ってどんな魔法なの?不死鳥魔法に雲魔法って何?!二つとも初めて聞く魔法だよ!!」
「それが俺の不死鳥魔法に関しては謎が多くてよー。でも攻撃魔法も守護魔法も回復魔法も使えるんだ!」
「そうなんだね~。例えばどんな魔法が使えるの?一つやって見せてよ」
「おう!いいぜ!!」
「【 不死鳥魔法 飛炎羽 】」
オーブが魔法を唱えると鋭くとがった何十もの炎に包まれた羽根が一本の木に刺さり、一瞬にしてその木は灰と化した。
灰と化した木を見てレオナルドがその威力に驚く中、オーブは再生魔法を唱えるとその木は忽ち元の形へと戻った。
「へー、本当にすごいね!これからの学校生活でいいライバルにもなりそうだね」
「おう!負けないからな!」
・・・・・・・・・「どうしてあのような下民がレオナルド殿に...」
新学祭が開かれた夜から三日が経ち、学内に存在するメテルニッヒ大聖堂では軍分けが行われていた。
軍分けは東軍、西軍、南軍、北軍の4つに分けられ、フロア学園卒業時成績優秀者がその軍に所属する団に入団することができるのだ。
「ではこれより軍の発表をするよ。これから発表された軍で自分の力を限界まであげて、上位8位までに成績を収めるんだ。そうすれば、君たちが目指す魔法騎士になることができるかもしれないよ。それではレオナルド=メテルニッヒは西軍、オーブ=ロプストラは東軍、モネ=エバーニュは北軍・・・・・・・・・」
その後も発表は続き、600人の新入生は四軍に振り分けられた。
「オーブは東軍なんだね。直接競うことはないかもしれないけども、お互いに魔法騎士になれるように頑張ろうね。君の不死鳥魔法には絶対に負けないぞ!」
「おう!お前の白金魔法もすげーからな!次に会うときは今よりももっと強くなってるんだろうな!!でも俺は絶対に負けない!!」
「相変わらず熱い男だね。でも、ライバルとしては最高の存在だ。負けないよ。」
再び会うときは今よりも強くなることを誓った二人はそれぞれの道へと進んでいくのであった。
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「これより上級魔法魔力操作術の授業を始める。私は月光の双竜団長ライト=ムーンセルクだ。私の魔法は月光魔法。今年で47歳になる。君たちより31歳年上だ。基本ステータスは以上だ。では、上級魔法魔力操作術についてだが、簡単な魔法とは異なり上級魔法は魔力の操作が困難になる。だから、この術は必要なのだ。一度実践してみるから見て感じるのだ。」
「【 月光魔法 月華のほうこう 】」
ライトが呪文を唱えると辺りからエネルギーが集中して小さな光の玉になった。次の瞬間その光の玉は一気に膨張し光線となって魔法で作られた的を突き破った。
威力は本来なら町一つを破壊できるくらいの力があるのだろう。なぜならば、魔法の的を300枚も破壊したからだった。
それに的はすべてど真ん中が撃ち抜かれていたのだった。
「す、すげー!団長すげー!!」
「ははは、ありがとうオーブ君。どうだい?つかめたかい??」
「やってみるぜ!」
オーブはふうと息を整えると、上級魔法を唱えた。
「【 不死鳥魔法 妖光の青炎 】」
オーブが呪文を唱えると、青い炎が無数に宙を漂いそのうちの10個ほどが的めがけて飛んで行った。
結局三回挑戦して当たった炎は24個、最高得点は8/10点だった。
それでも東軍の生徒はその威力に圧倒されていたのだった。
「次は私がやりますわ。」
そう言って名乗り出たのは、東軍の軍聖であり、王族でもあるオリガード=ブルプワイズの娘、ロニア=ブルプワイズだった。
彼女は東軍成績トップ入学でだれよりも期待されている魔法騎士候補であった。
「それでは是非お願いします。」
「はい、させていただきますわ」
「【 雪魔法 豪雪の氷弓 】」
ロニアが放った魔法は何メートルも離れたところにある魔法の的を一瞬にして何十枚と貫いた。
貫通した魔法の的を見ると、見事にすべてど真ん中を貫いていた。
オーブよりもさらに正確に的を貫いたロニアにはもはや皆驚きを超え絶句してしまっていたのだった。先生と一人の学生を除いてではあるが・・・・・
「スゲーな!!やっぱ王族はレオナルドと一緒で魔法すげーよな!!!」
「オーブさんはレオナルドさんとお知り合いなんですね!私はロニア=ブルプワイズです。どうぞよろしくお願いいたします!」
「おう、よろしくロニア!」
この日、この二人を圧倒するような学生はこの先現れなかった。
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授業が終わり東軍の談話室に戻ると、オーブに同じ農民出身のリーブルが話しかけてきた。
「オーブ君!さっき後ろで見てたよ!!」
「リーブルじゃないか!何を見てたんだ?」
「さっきの授業でオーブが使った魔法だよ!!お前どんな威力の魔法持ってんだよ~」…
「本当にすごかったですわね。とても威力の高い魔法で、レオナルドさんが友達になった理由も何となくわかりましたわ」
「お、おい!な、なんだよ!お前ロニア様と知り合いなのかよ!!」
「おう!知り合いっていうか友達だ!!」
「ずいぶんと王族の方々と仲良くなったのですな~...下民よ!お前のような下民がこの学校にいる時点で空気が汚れてしまうというのに、そんなお前がどうしてレオナルド殿だけでなくロニア殿にも好かれているのだ!!それが私はどうしても気に食わない...オーブ=ロプストラ!私と決闘しろ!!」
突然東軍の談話室にアレイとナジルが押しかけてきた。
「またお前らかよ~、お前らは南軍じゃなかったっけ?まぁいいぜ。外でな!!」
「下民風情が我々貴族にそのような話し方など無礼にもほどがあるのだ!!」
「ちょ、ちょっと、アレイ達にかまう必要なんて…」
オーブとアレイ達は外に窓から飛び出していったのであった。
読んでいただきありがとうございました!!