第十八話 “三人の姫君”
『三人の姫君』
昔々、まだ魔女が蔓延していた頃。
三人の美しいお姫さまがいました。
長女が、砂糖。
次女が、シロップ。
末女が、蜂蜜。
彼女たちには神聖な力がありました。
賢い王さまは三人を愛していました。蝶よ花よと育て、ただ甘くあることを求めます。それ以外は必要ありません。なによりも純度が大切なのです。
でも満足でした。
愛していたから、愛されていたから。
幸せでした。
ですが、栄華を極めた王国に一条の影が差します。
仲間を駆除されたことに怒り狂い。
悪い悪い魔女が、流行り病を作り出したのです。
それは墓穴からやってきました。
風に乗り、人から人へと伝染し、幾万がバタバタと倒れました。
バタバタ、バタバタ。
それでも墓穴は埋まりません。深淵は満腹を知らないのでしょうか。
長女は嘆きました。
罪なき民の犠牲を。
だから墓穴へ飛び降りました。
いつしか深い悲しみは涙となり、砂糖の体をグズグズに溶かしました。そうして生まれた砂糖水が墓穴を清め、“天国の門”が生まれました。
次女は狂いました。
罪なき姉の犠牲に。
だから魔女を壊しました。
いつしか深い怒りは笑みとなり、赤いシロップが国中をビチャビチャに染め上げました。多くの魔女から力を得て、次女は神様になりました。
神様は慈悲深く、分け隔てのない加護を与えます。
民には無限の生を、魔女には一瞬の死を。
天使よ来たれ、現世に五つの世界を創造せよ。
そして。
――――人は死を殺されました。