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微睡みの中に溶ける、朝と夜。

作者: ねぎまる

声劇台本として書きました。

初めて書いたので至らないところが多々あると思います。

高校生くらいの年齢でイメージしてましたがはっきりとは指定しないです。

自由に演じてみてください。

ふたりはどんな関係だったのか、どんな時間を過ごしたのか、どんな性格なのか。

役者しだいで色んな顔が見れると思います。

コメントとかレビューしてくれるととっても嬉しいです。

上演する時は題名書いて頂けたらありがたいです。

女の子:

男の子:



男:で?結局何がしたいの?


女:散々泣いてお腹空いたから肉まん食べる


男:……余計なお世話かもしんないけど、普通女の子ってこう、もっと可愛いやつを食べるのだと思ってたよ


女:いや肉まんだって可愛いでしょうに。あの食欲をそそらせる湯気、生地の柔らかい食感とは対照的にジューシーで噛み心地のある肉!噛んだら口の中にジュワーって広がる肉汁!!!肉を影から支える椎茸!!そして、なんで入ってるかはわかんないタケノコ。


男:最後のはタケノコに失礼だろ。いやさあ、タケノコだって必死に生きたと思うよ?椎茸と一緒に肉を支えてたって絶対。それなのにさ?最期に人に美味しく食べられなかったら彼の存在意義ってどうなるの。


女:どうって、普通死んだら存在意義なんて無くなるんじゃない?


男:おー??おん


女:みーんな同じじゃん?死んだら無になって、残った方はその人が生きてた時の本物の記憶を勝手に捏造しちゃうんだよきっと。いい事を少しでもしてれば過大評価されて、その人に都合の悪いことをしてれば、たとえそれがいい事でも悪いことでもあいつはクズだったなって罵られる。本人が何も言えないことをいいことにね。だから私も少しくらい自分に正直に生きることにした


男:それで辿り着いた答えが、地道にタケノコを肉まんから取り除く事なの?


女:そゆこと、こんな事でもしてないと気も晴れないしね~あ、食べる?


男:いや、遠慮しておくよ、僕は肉まんは嫌いなんだ。ごゆっくりどうぞ


女:え~美味しいのに~………んー、やっぱやめた、たけのこさんいただきます。


男:急にどしたの


女:いやさ?死んじゃえば存在意義も無くなっちゃうって思えたら私の大っ嫌いな人達みたいに自分にわがままになれて、好きなこと好きなだけやって、他人のことを考えずに、迷惑かけてやろうと思ってたのよ。勝手に私の事を恨んで死ね!って、お前達の思い通りにはいかないぞって。でもそれをしても結局その大っ嫌いな人達と同じなだけじゃん?だから私は、タケノコを食べます


男:よくわかんないけど、それで?


女:んー、私もよくわかんなくなってきたけどさあ、たけのこさんを食べることがたけのこさんにとっていいことだと仮定するじゃん。

そんで、捨てられるより食べられる方がたけのこさんも私に食べられて良かったなって思ってもらえるじゃん?

つまりそうやって、どちらかがいなくなってもさ

あぁ、あいつが生きてる間に一緒に居られて良かったな。ってその人の記憶にちゃんと残る生き方をしたい訳よ。私は。アンダスタン?


男:だから、君が告白した人に彼女がいて振られたとしても彼に罪はないし、その彼女にももちろん罪はないから

君は1人で枕を濡らして、大人しくタケノコを食べてるってこと?


女:そんなはっきり言わなくていいじゃん感じ悪いよ


男:ごめん、あんまり分からないんだ、そういうこと


女:あーあー、こんなことになるならもっとはやく告白しとけば良かったなあ~そしたら付き合えたかもしんないし


男:好きだったけど今は彼女がいるって言ってたもんね


女:もうさあ~、好きってなんだよ〜~ばかやろ~~(涙が出てくる)うっ……うぅ〜…うっうっ、泣いてんだぞこっちは。慰めろよ~


男:めんどくさいなあ。じゃあ何をすれば満足なの?


女:……慰めて、抱きしめて「もう大丈夫だよ、僕がついてるから、怖くないよ。」って言って!!


男:はあ?!なんなのそれ。え、なに酔ってんの?


女:めんどくさいのは分かってるよお~でもしてくれよお~

昔さあ、私いじめられててさあ、その時好きだった子が助けてくれてさあ?それ言って肉まんくれたんだよ~、その子はもうこの世にはいないし、今ではどんな子だったのか忘れちゃったけどさあ~、それだけは覚えてるんだよお~(机に突っ伏して寝る)


男:.……..。はいはい、えっと……(照れくさそうに)モウダイジョウブダヨ、ボクガツイテルカラコワクナ...寝てるぅ〜~~!!!!!!!


女:ねえごめんって、ほんとにごめん。


男:もう二度と言わない。この話はおしまい。で、今日は何するの?


女:ケチ!まったく……遠出出来る日はもう今日しかないから、ずっと避けてたけどお母さんのとこいく。


男:へえ、そっか。ついに決心したんだね


女:うん、これを曖昧にしたまま終わらせたく無いからね。

お父さんと離婚して、遠目でもいいからいまどうしてるのかだけ知りたい。君には申し訳ないけどついてきて


男:うん。僕はその為にいるから。


男N:僕達は準備をして電車へ乗り込んだ。片道3時間をかけて目的地へと向かった。


女:……だめだ、今更ながらに怖くなってきた。勇気が欲しい……


男:そんな目で見られてももう僕はアレは言わないよ


女そんなあ〜、寝てただけなのに!!じゃ、じゃあ手握ってくれない?それで頑張れそうだから。


男N:一瞬躊躇ったが、少女の肩が小さく震えていることに気づいたので、僕は彼女の手を握る


女:ありがとう...なんか安心した気がする、よし、見てくるだけだもん、行ってきます。


男N:向かうのに費やした時間に反比例するかのように、彼女の予定はすぐに済んだ。僕達以外には誰も乗ってないかのような(すた)れた田舎の電車で、無言で隣り合って座っていた。


女:.......なにがあったか聞かないの


男:生憎、傷心の女の子を慰められる程のボキャブラリーは持ってなくてさ。


女:なんだよ、甲斐性なしだなあ.....幸せそうだったんだ〜、新しい夫の人?も優しそうでさあ~、お父さんとは大違いだよ。子供たちも元気に話しながらご飯食べててさ.......とっても暖かそうでさあ......私まで幸せになれるかと思ったんだけどさあ.............やっぱ、駄目だった.......あー、ダメだなあ私。いい人でいるって昨日決めたばっかなのに。


男:うん。


女:お母さんさあ、優しいからさあ、私が甘えたら受け入れてくれると思うんだよ。そんでね、私いまお母さんの新しい子供たちにとっての嫌な人になりたがってるの、自分の為だけに行動したい衝動を必死に抑えてるの。


男:.......うん。


女:だから、だからね.......私....うっ.......ひっく.......うっ(大泣き)ごめん、ごめんね。泣きたくないのにね、涙、止まんないんだ。お母さんに堂々と会いたいよ、あってたくさんお話して、テレビ見て笑いながらご飯食べて、抱きしめてもらって、頭撫でられながら眠って.......成人式にはさ、小夜ちゃん、綺麗になったねって言ってくれたりさ.... ..そんなこと、もうないんだよね。絶対に、ないんだよね

最期くらい、少しくらい許してよぉ.......


男N:彼女の気持ちが、潤んだ瞳から水晶のように透き通った水になって、流れた。なんて純粋で美しい涙なんだろう。僕は彼女の、子供のように純粋な気持ちや言葉に対して何も言えずにいた。

彼女の言ってることなんて大げさで、いつでも会いに行けると思う人も多いだろう。結論から言うと無理だ。

なぜかと言うと、彼女「宵月(よいづき) 小夜(さよ)」の命の期限はもう48時間を切っているから。

僕は命の期限を宣告するために1週間前から彼女についている死神なんだ。

家についてしばらくすると、彼女がこの世に存在していられる期間は24時間を切った。そして、最後の24時間の間、僕は彼女の前に姿を現してはいけない決まりになっている。

泣き疲れて眠ってしまった彼女を抱きしめる代わりに頭を撫でながらぼくはそっと呟く。


小夜:.う...うーん......?!やっば.......あと何時間?!って.......お兄さん?.......いない.......。


小夜(N):私の人生は、あと24時間もしないうちに終わるらしい。何かが私の頭の中に引っかかっている。私はそのなにかを見つけ出そうとすべく取り憑かれたようにある場所を目指している。そこがどこだとかは今はまだはっきりと思い出せない。しかしきっとそこに私の忘れてきた物とか忘れちゃいけない物がまだ残ってる気がした。歩きながら私は、この一週間は、ほとんどお兄さんとしか話してないなあとぼんやり思いだしていた


小夜:ねえ、お兄さんって死神?なんでしょ?なんで死神になったの?面接とかあるの?


男:面接とかはないよ、ただ死神になる条件としては

誰かを死ぬまで愛しながら死んだ人、かな。もうひとつは決まりで言えないけど。


小夜:へぇ。じゃあおにいさんは、誰かを愛しながら死んだんだね。


男:まあ、そういうことになるね。それにしても、誰かを愛しながら死んだのに今度は死を告げる側に回るんだから、こんな皮肉な事ってないよね


小夜:誰かを愛しながら死んだ....かあ、死神さんが愛した人は幸せそうだね。......それに、もう一個の条件かあ.....

実は、死を告げるのはその愛してた人にしか告げられない、とか??.....さすがにそんな皮肉はないかー。それにそれだったら私を愛してたことになるもんね〜〜


小夜(N):彼との会話を思い出しながら、記憶の中で絡まっていた勘違いの紐が解けていく。そして、まどろみの中で微かに聞こえた彼の最後の言葉を思い出したら、冷えきっていた私の心臓に火が灯り出した。


小夜:..っ!!!(走り出す)はぁーっ.......はぁ、はぁ、はぁ.......っ


小夜(N):その瞬間、走り出していた。

心臓が全身に血を巡らそうと振動している

中学3年間を費やした陸上部の記憶を体はまだ覚えていた。

高速で過ぎ去る街の景色を楽しむ余裕は今はもうない、私の命の期限はとっくに1時間を切っているのだ、何もなく、穏やかに終えるより、最後くらいやり残したことをやり切って命を燃やし尽くしたい。

私は今、人生で一番命を、魂を燃やし輝いている。

以前住んでいた街まで戻ってきた。

商店街を、昔通いつめた駄菓子屋を、長い坂を、この街のものに目もくれずに駆け抜けた。そうしてやっとついた

坂の上の、街全体が見える公園。

街は夕焼けのおかげで、全体が真っ赤に燃え上がっているように美しく色づいている。

私が初めて誰かと口付けを交わした場所。

そこに私と同い年くらいの死神はいた。

家を出た時は咲いていなかったのに、帰ってくると咲いていた夕顔のように、当然のようにそこに立っていた。



男:......やあ、どうしたのこんなところで息切らして


小夜:はぁ...はぁ...別に。肉まんが食べたかったからセブン探してただけ。


男:じゃあちょうど良かった。ほら、食べかけだけど。


小夜:.......肉まん、嫌いなんじゃなかったの。


男:.......もうそろそろ、君の最期の時が来るからね。最後くらい感傷に浸ろうと思ってさ。


小夜:.......日野朝人くん。


男:.............いつから気づいてたの?


小夜:確信を得たのはたった今。本当は確証はなかったけど、ここにいるって自信はあった


男:よくわかったね、あの時とは背丈も顔つきもかわってるのに


小夜: なんで?なんでずっと黙ってたの?


男:なにが?


小夜:とぼけないでよ。私は.......ずっとずっと会いたかったんだよ、君がいなくなってからそれこそ世界から朝が消えるくらい暗くなっちゃって、いじめられても、両親が離婚しても、上手くいかないことが沢山あっても、それでも頑張って生きてきたのに


男:.............


小夜:せめて君が冷たく私にあたってくれたら私は今この瞬間も死を受け入れられたのに、どうして冷たくしてくれないの。なんで昔みたいに笑うの。ねえ、朝人くん。


男:......無理だよ。死神は、生涯愛した人の前にしか現れることができないから。


小夜:....っ..うぅ...駄目だよ。

私、いま死にたくなくなっちゃってるもん、ずっと、ずっとずっとずっと会いたかった人が今目の前にいるんだもん、あいたがっだんだよ.......うう....ほんとに、ほんとにあいたかっだんだよお.......

私、頑張ったんだよ。お母さん達が離婚して、私はお父さんから殴られたの、お母さんのこと大好きだから新しい幸せを掴んで欲しかったから私がお父さんを止めないとって一緒にいたの、でも昨日お母さんの新しい幸せ見てさ.......ほんとに辛かった.......苦しかったんだよ...私ね、ずっと死にたかったの。ずっとずっとこの苦しみが続くのに、私を支えるものなんてこの肉まんしかなくて。こんなちっぽけな物しかなくて。


朝人:.......うん。僕も、ずっと会いたかったよ、小夜。僕がついてるって、守るって言ったのに、先に死んじゃってごめんね.......だからぼく、日野朝人は死んだにもかかわらず未練がましく君の隣にいる。そして、死神は愛した人が死ぬ時に一緒に消えるんだ。だから消える時は、一緒だよ。本当は僕に関する記憶は断片的なものしか君にのこっていないのに、僕を見つけ出してくれて、ありがとう。



小夜:(朝人を抱きしめながら子供のように泣きじゃくる)朝人くん、朝人くん朝人くん朝人くん!!会いたかった!こうやって抱きしめたかった!抱きしめて欲しかった!デートしたかった!帰り道を一緒に歩きたかった!買い物一緒にしたかった!わがまま言いたかった!手を繋いで歩きたかった!もう一度、キスして欲しかった.......ずっと一緒に、いたかった!!なんで、こんなにも理不尽なのよぉ......。


朝人:うん.......うん。でも今僕は幸せなんだ。もう会えないと思っていた小夜とずっと一緒に居られて本当に幸せだった。好きな人の隣にいられることは......こんなにも世界が美しく見えるんだ、って思った。全部、小夜のおかげだよ。ほんとにありがとう。.......もう残りの時間も少ない。小夜。


朝人(N):

僕達は初めて口付けを交わした場所でまた、最後の口付けを交わしている。小夜の期限が近づくにつれて段々と眠くなってきた。

僕は最期の瞬間を小夜と過ごせて本当に幸せだと思っている。でも小夜はまだまだ子供だから、ちゃんと安心させてあげないといけない、だから僕は最期にふさわしい言葉をしっかりと伝えてあげないといけない。


小夜(N):切なくも幸せな眠気の中、このまま永遠に時が止まってしまえばいいのにと願う。

でももうお別れだ、寂しさはある、悲しさももちろんある、でも大好きな人が私の隣で肩を合わせて眠ってくれるんだもん。これ以上求めるのは欲張りだよ。お互いの記憶の中で

"あぁ、あいつが生きている間に一緒に居られて良かったな"って思いあえるのが私の一番の幸福だ。

それに、朝人くんと一緒なら死すらも怖くない。だってほら


朝人:もう大丈夫だよ、僕がついてるから、怖くないよ。


小夜、朝人(N):そう、僕(私)達は"微睡みの中に溶ける、朝と夜。"


お粗末さまでした。


最後の合わせナレーションは、合わせてもいいし、どちらか片方だけが喋るでもどちらでもよいです。


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