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第41話 エピローグ

 私達は関西地方の山間の寂れた宿泊施設にいた。

 あの後、洞穴を出て小夜達に合流して鼠仔猫島(そこねじま)からボートで脱出したのだ。島は混乱しており脱出は容易であった。


「 しかし本当に終わったでいいんだよな 」

 三刀小夜(みとうさや)が自信なさげに問う。

「 はい 私たちに出来る事はもうなにもありません 」

「 結局 私はツクの為に何も出来なかった ユウリ店長やありさ達に頼りっぱなしだ 不甲斐ないよ 」

「 そんなことないですサヤさん サヤさんがいなければ私なんてそれこそ何にも出来ません どうにか出来てしまうあの人達が異常なんですから 」

「 俺なんて車運転しただけっスよ 空気感ハンパないっスよ 」

「 海乃はだいたいいつもそんな感じだろう 」

「 班長 ひどいっスよ 」

 小夜の言葉に海乃大洋(うみのたいよう)が少しむくれて見せる。

「 でも俺もツクヨちゃんの大活躍見てみたかったっスよ 」

「 肩に(いたち)の子を乗っけたツクさんのナウシカっぷりは半端無かったわよ ハヤオにも見せてあげたかったわ 」

「 ユキちゃん なんか私 褒められてる気がしないんだけど 」

 八島(やしま)ユキの人格がイマイチ把握しきれなくて困ってしまう。

「 クニガミは本当に死んだのか 」

「 わかりません ただ穴に堕ちていったのは事実です 結晶体が沈んだ今 生きていたとしても何かしてくるようには思えません 」

「 日本民族の未来と言うものだけに囚われるなら ある意味 クニガミのやろうとしていた事は正解だったのかもしれんな 」

「 正解なのか間違いなのかは未来の人たちが決めればいいんじゃないですか もしかしたら私は未来では国の神様を殺した大罪人として昔話に登場してるかもしれませんよ 神殺しの月夜として 」

「 ツクさんそれいいわね その時はぜひ 右のヤシマと左のサハラを従えてちょうだい 今から3人で神様を殺しまくりましょう 」

「 いやいや ユキちゃん 殺しまくっちゃダメでしょう 」

「 ところでユウリさんまだ戻らないっスねェ 」

「 トーマさんを病院に連れてってから 四月(しづく)㮈虎(なとら)を祠まで送ってくれてるからまだだと思いますよ 」

「 あと お姉さまの心臓吐き出しちゃったから 店長の唯一の取り柄の長生きが出来なくなって老後が心配で年金課に相談に行ってるかもしれないわね 」

「 でも これで店長も普通に歳がとれるんですね 」

「 あらツクさんはいつまでも若い店長を独り占め出来た方が良かったんじゃないの 」

「 なっ 何を言ってるのやらユキちゃんは 」

「 あら そんな事言ってると私かヒメ神様に取られちゃうわよ 」

「 いやいや そりゃユキちゃんは要注意人物だけどヒメちゃんは子供じゃないですか 」

「 甘いわねツクさんは 私が洞穴に落ちた時あの2人何かしてたわよ 暗くてよく見えなかったけど ヒメ神様は15〜6歳の少女の姿で慌てて着物の縄を縛りなおしてるっぽかったわ 私には声もかけずに居なくなっちゃったし 」

「 なっ なっ なっ 何ですとぉ 」


 それから私達は4人でたわいもない話をして平和な時を過ごした、こんな無意味な時間を過ごせるのは何時ぶりだろうか、まるで何万光年も旅をして、やっと母星への帰路に着いた宇宙飛行士にでもなった気分だ。ただ 石黒(いしぐろ)ありさの話をする者はなかった、私達の中から唯一欠けてしまった大切なもの、宝石のように愛らしくも危険な女スパイさん、彼女の事をこの場で話すのはタブーだという空気が私達4人を包み込んでいた。


 しばらくするとユウリが大量のお菓子やら食料やらを抱えて帰ってきた。トーマはユキが飲ませた万能薬が効いたらしく、今後には問題はないらしい、が、やはり少しばかりの入院は必要だそうだ。

 その夜、私はいつの間にか眠ったらしく、翌朝小夜に起こされるまでの記憶が全くなかった。結局、ユウリとは2人っきりになることはなかったが、顔を見ると少しばかり恥ずかしいのでその方がいいような気がする、焦ることは無い、時間はいくらでもあるのだから。


 そして、私達は東京への帰路についた。







 

 某年某月某日


「 総理 今回の責任はどのようにして取るのです 」

「 国連と対話の準備は出来ているんですか 」

「 国民の不安と不満はもう限界ですよ 」

「 総理 納得のいく説明をしてください 」

「 現在政府は機能しているんですか 」

「 これは軍部によるクーデタなのですか 」

「 なんとか言ってください 」

「 新大日本帝国などと言う馬鹿げた着想はどこからきたのですか 」


 国会前で報道陣に揉みくちゃにされながら現在のこの国の代表者がおしくらまんじゅう状態になっている、護衛の者もこれでは流石にどうにも出来ない。

 今、この国は混乱の極みにあった、新政府樹立から戒厳令の施行まではなんとか統制は取れていたのだが、テロリストによる四国原発テロに始まり各地デモ行動の激化、流通ラインの半停止状態、沖縄の日本離脱宣言、最高位の安否不明、日本周辺海域の他国との緊張状態、国連軍の動向、と、もうほとんどお手上げで、()()()()()()()と言いたくなるのは当然である。


 1人の黒のキャップの男性が報道陣をかき分け代表者に近づいて行きマイクを向ける。

「 やはり責任を取るべき人物が責任を取らないと事態は収まらないのではないのですか 」

「 …… 」

「 だァかァらァ テメェがとれよ 」

 代表者の喉から血が噴き出して首が真後ろに折れ曲がる、鮮血が報道陣に降り注いだ。

「 ワン ワン 」


 時を同じくして電波ジャックが行なわれた。


 『 国民に告ぐ 我々は今ここに勝利を宣言する 戦後90余年にわたり欺き続けられた偽りの自由に終止符を打ち真の自由を手にしたのだ 今まで貴様らが何かを自ら決めた事があったか いやない 今まで貴様らが何かを成した事があったか いやない 誰かが決めて誰かが成した事に従ってきただけだ それのどこに自由がある そんなの犬だって出来る 犬並の自由で満足してる貴様らは犬以下だ 軍を持ちたければ軍を持てばいい 戦争したければすればいい 侵略したければすればいい それが真の自由だ 誰に遠慮する必要があるの やりたいようにすればいいのよ ただし自由には責任を伴う 当たり前の話よ 軍を持てば近隣国と摩擦が生じるし戦争すれば戦死者もでるし負ければ侵略される 自ら決めた事ならば自ら責任を取ればいいじゃない 誰に文句を言われる筋合いもないわ それが嫌ならいつまでも誰かに従ってワンワン吠えてなさい 自ら決めて自ら成す そしてその責任は自ら取る それが真の自由よ あなたたち日本人にそれが出来るの さあ見せてちょうだい 自由を行使しなさいよ そしてこの国を創り変えて見せなさい


 私は瑞浪空(みずなみそら)

 かつての同士が残した()()()()()()の旗を掲げ彼らの意志を継ぐ者である


 私達はあなた達を見ているわ 忘れないでちょうだい そしてまた帰ってくる (あらが)う為に 覚悟しておきなさい 』








あと1話だけ続きますであります。

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