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第 2話 鳥追いの唄

第 2話 ということで ようやく物語が始動し始めました。ここから面白くなってゆくはずなんですが・・・ 頑張りたいと思います。

 ” セブンスマート” 東京の西のはずれにあるパッとしなさすぎるコンビニエンスストア そこが私鳥迫月夜(とりさこつくよ)のアルバイト先である。コンビニといっても24時間営業ではない 基本6〜0時( 店長の気分と体調次第で短くなったり休みになったりと適当すぎるにも程がある ) 以前は24時間だったこともあるらしいが深夜はお客さんも少ないし、なによりアルバイトが見つからないらしい。募集してもカタコトの日本語の電話しかかかってこないと店長がぼやいていた。従業員は店長と私を含めて計3人 ( 少な ) 店長がフルスロットルで働いて夕方のピークをバイトで乗り切るというのが基本である。


「 お疲れ様です 」


 今、私と店長の目の前に突如としてあらわれて他愛のない挨拶をするセーラー服にお店の黄色いエプロンを着けたショートボブの似合う美少女こそ私の唯一のバイト仲間、同僚の八島(やしま)ユキちゃんだ。てかコイツ何処から()いて出て来た?


「 お疲れ っていうかユキちゃんいつ来たの 」

「 2人が楽しそうに仕事そっちのけでお喋りに夢中になってる最中にだけど 」

「 …… 」


 いろいろと訂正せずにはいられないところは山積みだが、それより そんなはずはない。ここ30分ばかりお客さんは1人も来てないはずだ。いくら話に夢中になっていたとしても( なってないのだけれど )2人とも気付かないなんて、ドアが開いたのは そうあの時だけだ。2人で挨拶しかけて咄嗟に押し黙った、いや違う 閉まりかけたドアを見ただけなのだ。


「 ほら あの時だよツクヨ君 チャイムが鳴った あの時 僕らの視界に入らないくらい素早く移動して…

「 イタチかよ 」

「 それより 外 あれツクさんのお迎えじゃないです 」


 ユキに言われて店の外を見ると黒の高級外車が目に入った。


「 げッ! 」


 時計に目をやるとすでに定時を5分過ぎている。さっきまで15分前がどうしたこうしたのやりとりだったはずなのに 時間なんて大嫌いだ。

「 お疲れ様でした 」

「 せっかくセブンスマートオールスターズが集結したのに残業してかないの 」

「 しません てか3人しかいないのにオールスターズってサザンだって桑田さん以外極々小粒だけど5人だか6人だかいますよ それに週に何回集結すれば気が済むんですか 仮面ライダーだってもうちょっと節操を持って集結してますよ 」

「 ツクさん 早く行かないと怒られちゃいますよ 」


 ユキの一言でようやくカウンターを離れ足早に帰り支度を整えて店を後にする。帰り際 目を遣るとユキはカウンター周りの清掃を始めており店長は商品を前陳していた。あの2人なんか怪しい、私のソウルがそう囁いている。そのうち尻尾を掴んでやるから待っていろ。


「 お待たせしました 」

「 行きましょうか 」


 運転席の渋いおっさん車田さんが高級外車を発進させる。向かうのは祖父の入院する都内の大病院だ。


「 おじいちゃんの容態はあまり良くないんですか 」

「 まあ 良くも悪くもと言ったところだと思います なにぶんお年がお年ですし 」


 祖父は数年前に100歳超えを果たしたご長寿さんだ。 昨今ではそれ程珍しいことではないのだろうけど 生まれたときからずっとおじいちゃんだった私から見ればやはり化けものじみている。そんな祖父も去年の年明けから体調を崩し病床についている。日に日に弱ってゆく姿を観てると もうそう長くはないだろうと思ってしまう。


「 お屋敷には帰られないのですか 」

「 …… 」


 車田の事務的な問いかけに私は返す言葉を持ってない。祖父鳥迫秀一(とりさこひでいち)はトリオイ製薬の創業者にして現会長である。もともと薬の行商人の家に生まれたらしく、それとともに薬学部で学んだ知識もあわせ、高度成長期の日本で裸一貫財を成してきた傑物だ。私の両親は早くに亡くなった … らしい。交通事故だったそうだ。幼かった私はいつも1人だった。屋敷に世話をしてくれる人たちはいたが所詮他人だ。祖父は忙しい人だったのでほとんど共に時間を過ごした記憶はない。それでもこの世にただ一人の血の繋がった家族 おじいちゃんが居なくなったら私は…


 私は2年前 高校卒業と同時に家を出た。別に特別なにかあったわけではない、ただなんとなくなだけだった。祖父には大学に行くように勧めなれたが、ただ逆らってみたくなっただけなのかもしれない。周りから見れば、鳥迫家のただ一人の跡取り娘の我が儘。実際、私の中途半端な現状を見ればそうなんだろう。別に異を唱えるつもりもない。


 ホテルの一室のような豪華な病室にたどりつくと ベッドの上にはひどく小さく見える祖父がいた。


「 ただいままいりました 月夜です おじいちゃん 」


 ベッド脇にある椅子に腰を下ろした。祖父の体にはマスクやチューブや機械らしきものは何一つ繋がっていなかった。先週来たときとは随分様子が違う。回復に向かっているのだろうか、それとも、もう…


「 来たか 」

 目だけでこちらを見遣り、しわがれた声で祖父は言った。

「 はい 」

「 どうだ 」

「 どうだと言われましても あいも変わらずです 私ですから 」

「 そうか それならよかった 」

 よかったと言われても返答に困ってしまう。叱咤された方が少しは気は楽だ。

「 月夜には申し訳なかったと思っている 仕事ばかりの人生だった ただ一人の孫の手を取ることもせず 仕事に逃げていたのかもしれない 」

「 そんなことないですよ おじいちゃんは立派な人です それは私のただ一つの誇りなのですから 」

「 そうか 月夜がそう言ってくれるなら 私の人生も存外無駄ではなかったかもしれんな 」

「 なんだか元気そうでなによりです 車田さんが突然迎えに来るからビックリしちゃったじゃないですか 」

「 今日は話しておかねばならぬことがあってな 迷ったのだ 迷ったのだが さすがに あの世まで一人で抱えて逝くには荷が重すぎてな 聞いてはくれまいか 私の罪を 」


 私は戸惑いながらも小さく頷く。


 祖父はベッド脇にあるテーブルの上の黒くて奇妙な細工が施された木箱の蓋を開け1枚の写真を取り出して私に渡した。古い写真だった。白黒写真というよりは黄色い写真だ 中には人が写っていた。戦時中の写真なのだろうか、軍服を着た20人くらいの男性達の集合写真だ。旗らしき物を担いでる人もいれば銃剣を手にしている人もいる。その中に1人だけ場違いな人物がやたら目を惹く、和装の人物 神社の神主のような出で立ちだ。何処で撮った写真だろうか、山だろうか、背後には幾重にも連なった鳥居のようなものが見える。


「 右端上の腕章を付けているのが私 酉狩清次(とりかりきよじ)だ 大日本帝国陸軍特務部隊所属 酉狩清次少将 特級戦犯だ 」


 私が今までなんの疑いもなく胡座をかいていた確固たる世界が覆い隠していたものが、ささくれ立って綻びて捲れあがった薄膜のしたからにゅるりと顔を持ち上げる。

 耳元で誰かがひっそりと囁いた。


     ''おばけが出てくるよ”




う〜ん ツクヨのキャラがこんなじゃなかったんだが、まあ気にせず前のめりに突撃であります。

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