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第19話 激突

 目の前に現れた男が極端に低く身構えた、左手は空を掴むように横に差し出されている。


「 ユキ! 」


 男が何か叫ぶと全身のバネを使ってバッタが飛びかかってくるように左手を振り上げた。


 ヒュン カン


 トーマの銃を構えていた右腕が跳ね上がる。


「 なっ! 」


 男の振り上げられた左手の先から恐ろしく長い刃物がギラリと伸びている。瞬間 体制を立て直し銃を構え直す、が 軽い、握った銃のトリガーから先が無くなっている。


 ドン


 間髪入れずに男が膝から懐に入って来た。速い、瞬時にトーマは握っていた銃だった物を捨て背中からナイフを抜く 刃渡り28センチの軽量サバイバルナイフだ。相手は長物 この間合いなら振れない。ナイフを繰り出そうとした時


 ドコン


 男が左手に握っている刃物の柄でトーマの側頭部をブン殴ってきた。


「 ぐガッぁ 」


 思わずトーマが吹っ飛ぶ、だが逃がさない、男は振り抜いた左手を切り替えし切っ先を真横にヒュンと払う。体制を大きく崩しながらもトーマは間一髪で後ろに仰け反りこれを躱す、が次がない、完全に身体が開いてしまった。いや開かされてしまった。


 タン タン


 乾いた音が鳴り残響が尾を引く。


「 そこまでよ 」


 空に向け2発の銃弾を発砲してありさが言った。コンテナの陰から15人ほどの男達が姿を現した、みな銃を手にしている。


 ありさには状況が理解出来なかった。男の手に武器は携帯されてなかったはずだ、ところが男の傍らに突然セーラー服姿の女が現れて日本刀らしきものを手渡したのだ。それでもトーマは戦闘に関してはエキスパートだ状況で能力が左右されるほど柔ではない。それが圧倒された、ほとんど手も足も出せなかったと言っていいだろう。あと1秒あれば死んでいた。

 予め調達しておいたアジア系の兵士を配置しておいて良かった、備えあれば憂いなしとは大好きだった日本人のおばあちゃんが教えてくれた言葉だ、トーマと2人だけでは、この状況は切り抜けられない。もうこれ以上ミスは許されないのだから。


「 トーマ 大丈夫 立ちなさい そこの2人 あなた達の事は知らないわ 邪魔をするなら殺すわよ 武器を捨てなさい 」




 ありさの言葉をガン無視して 刀を肩に担いで店長がこちらにやって来た。


「 やあツクヨ君 と … サヤさんだっけ 聞きたい事がお互い沢山ありそうだから店で待っててもらえるかな 」

「 店長 いったい…

「 はい鍵 サヤさんは怪我してるみたいだけど走れる 」

「 問題ない 」


 カチャリとユキが抜刀した。


「 ツクさん これ持って行って貰えます 結構高いんで無くさないで下さいね 」


 ユキから2本の刀の鞘を渡された。


「 GOで振り返らずに走りだせ 」

「 わかった ツク大丈夫だな 」

「 わかりました 」


「 ナニ もしかしてヤルつもり 頭おかしいのアナタ達 」

「 上等じゃねェか ぶッツブしてやる 」


 トーマも立て直した様子で ジャージの上を脱ぎ捨て身体のホルダーに収まった複数の武器を剥き出しにしている。もの凄く怖い顔でこちらを というか店長を睨みつけている。


「 店長 斬ってもいいですか 」

「 ダメだ が 必要なら斬り捨てろ 」

「 わかりました 」


 2人の手には恐ろしく長い刃物がギラついている。


 それからしばらくの間 睨み合いが続いて…






    「 GOぉぉぉぉぉぉぉ!」


タンタンタンタン タンタン ウガァァ!ドン タンタンタン ドシャン ボン ノォォォォ!ガコン タンタン


 店長の声で 彼とユキは前方へ 私と小夜は後方へと飛び出した。背後から聞こえる銃声と叫び声と衝撃音がもの凄く気になるのだけれど、今は店長を信じて走るしかない、店までは歩いて20分くらいの距離だろうか、この線路沿いの貨物置き場さえ抜ければ人目がある さすがに銃は使えないだろう。


 キュルキュルキュル もう少しで住宅地というところで1台の黒のボックスワゴンが私達の前に滑り込んできて中から3人の銃を手にした男達が降りて来た。


「 クソっ 他にもいたか 」

「 サヤさん ユキちゃんから預かったこの棒で戦いますか なんか弱そうじゃないですか イケる気がします 」

「 お おう そ そうか じゃあやってみるか お前に言われるとそんな気がしてきた 」

「 もう見てられんのじゃ わしにまかせるのじゃ ”もう誰もメルトダウンなんかさせない” のじゃ 」

「 えッとォ 」

「 もう誰もメルトダウンなんかさせない” のじゃ 」

「 うゥんとォ 」

「 久しいの ツクヨ 」

「 ツクの知り合いか 」

「 たぶん 」


 いつの間にか目の前に1匹の … じゃなくって 1人の女の子がいた。小学一年生くらいだろうか、切り揃えられた前髪が似合っている可愛らしい女の子だ、しかしその子の格好は異様だった。黒い布地に足下から下草が茂るように緑が沸き立つ柄で菊の花や蝶々も施された綺麗な着物のようなものを腰のあたりで荒縄で縛り付けてある、足は裸足だ、小さな身体の前に両の手で抱えているのは 最新式の …水鉄砲だった。

 女の子が水鉄砲を男らに向けポンピングし始めると、彼らは両手を挙げて爆笑した。

 女の子は水鉄砲を構えて発射した。


 ズコン!


 男達の背後にあった黒のボックスワゴンがオモチャのように水しぶきを上げ10mほど跳ね上がった。続けて1人の男の耳が消し飛んだ。男らは慌てて銃を構えたところにボックスワゴンが降ってきた。


「 天罰じゃ 」


 直撃こそしなかったが衝撃で3人とも地面に倒れ動かない。


「 死んではおるまいよ それよりまだ来るぞ 女 わしを抱っこして走るのじゃ 」

「 よくわからんがまかせろ 」


 小夜が女の子を抱っこして私達は走りだす。ブゥーン 後ろから猛スピードで突進してくる車がある、女の子は小夜の肩ごしに水鉄砲を構えポンピングする、引金を引くと ボン!ブシュー! 狙ったのは車ではなく地面だった、マンホールの蓋が弾き飛び水柱が吹き上がる、直撃を食らった車が横転する。


「 なんか凄いぞ 」

「 当たり前じゃ ”もう誰もメルトダウンなんかさせない” のじゃ 」


 ちなみに女の子がさっきから繰り返しているのは、テレビ西東京でやってる深夜アニメ( 原子力少女のどかメルトダウン 臨界突破の物語 )で主人公の原子力少女のどかが言う決め台詞なのだ。




 私達はどうにかこうにかセブンスマートに辿り着いたのだった。

 追っ手は振り切ったはずだ、店長達が心配だ。銃を持ったヤツらと渡り合うなぞ狂気の沙汰を通り越している。あの人はいったいなんなのだろう、そしてユキちゃんも … あれは何だった、時間が凍りついて砕け散った。そして、今 目の前にいる女の子、もういないはずじゃあなかったのか、私はなんにも知らない、知らないことだらけだ。いや知ろうとしなかったのだから当たり前だ、知ってしまうのが恐かった。だから逃げていた。もうヤメだ。全部知ってしまおう、全部聞いてしまおう、そして全部呑み込んでしまえばいい、蟒蛇のように。




「 上に行くぞ 2階はユウリの豚小屋じゃから変な病原菌がおるやもしれん 3階に行くぞ 」


 セブンスマートは3階建てのビルにある。店長の持ちビルらしい ビルと言ってもコンビニ1店舗分ほどの大きさの3階建てのコンクリートの建物だ、昭和の中頃に建ったと聞いた気がする。2階は店長の居住スペースになっており3階はまったく使ってないと言っていたのだが。

 小夜に抱っこされたままの女の子に言われるまま階段を登って行く、3階に着いて店長に預かった鍵で鉄の扉を開けると そこはコンクリート剥き出しのがらんどうな広い空間だった。ただその空間の中央に黒い鳥居がありその奥に黒い小さな社があったのだ、社の上のビルの天井にはなにやら陣のようなものが描かれている、社には雨倭頭巳神社と記されてある。


「 御神体をここに移していたのか 」

「 ツクヨ 貴様の事は見ておったぞ 」

「 ヒメちゃん 私の事を … 」

「 お前は勤務態度がなっておらん いつもユウリとおしゃべりに夢中じゃ 手を動かせ 手を 」

「 えッとォ 」

「 まあ入れ 」


 社の扉が開かれた、中は意外に広く6畳くらいあるだろうか、そこには……大型液晶テレビにパソコンにヌイグルミに食べかけのお菓子の袋 充電中のスマートフォンに除湿機と 一般的現代生活がぎゅっと詰まっていた。そして部屋の隅には店内を映し出す監視モニターが置かれてある。


「 えッとォ 私のこと見てたって 神通力で見守ってくれてたとかじゃなくって 店内監視モニターで見てたってことかなぁ 」

「 なんでわしがお前を見守らねばならぬ 見守ってほしくば供物をよこさんか わしは今セブンスマートの在宅警備員じゃぞ この前なぞ万引きしたやつを祟ってやったわ ハハハハハハ 」





 そこには現代社会に順応したかつての地主神がいたのだった。








 

アクションシーンはやはり難しいのであります。上手く書けたかな。でも楽しかったッス。また挑戦したいと思います。ではでは

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