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第16話 災

「 ツク あのクニガミという男どう思う 」

「 なんか麻呂みたいな人でしたね 関西弁だけどちょっと上品な柔らかい感じがしました あと葛籠の事を知っていました 関係者以外知らないはずです ネット上にもまだ漏れてません 関係者なら私達が関与したのも当然知っていたはずです めちゃんこ怪しさマックスであります 」

「 上出来だ あと屋敷の外にいた奴らはおそらくクニガミの護衛だ 訓練を受けた人間は歩き方ですぐわかる 護衛が付くなんぞそれなりのポジションの人物なのだろう 」

「 アキラさんにこっそり聞ければよかったんスけどね そんな雰囲気じゃなかったし 現れたタイミングが最悪でした 」

「 それよりクツワのこと下の名で呼んでるがいつの間にそんなに親しくなった 」

「 ひみつです サヤさんはクニガミに何処で会っているんです 」

「 それが思い出せんのだ この仕事に就いて人の顔だけは間違えないように心掛けている 絶対に何処かで見た顔なのだが 」

「 島には何をしに来たと思います 」

「 わからん が 私らとは無関係だろうな たまたまいたからちょっかいを出してみた といったところだろう となるとやはり穴か 」

「 国として 大洞穴あるいは天然ガスを利用した島の再開発計画に乗り出したとかですか 」

「 ありえん話ではないが もっと秘密裏に進められる事項なのかもしれん とにかくクニガミにはあまり関わらない方がよさそうだ ところでツク ずっと気になっていたんだが お前の首から下がってる物はなんだ 」

「 ア アハハ なんです た ただの御守りですよ 」

「 臭いな 誰から貰った 」

「 いやぁ さすがに御守りだから粗末に扱う訳にもいかないじゃないですか て て て店長です 」

「 ほぉぉぉぅ ちょっと見せてみろ 」


 それは5センチほどの黒い布製で金糸で蛇の意匠が施されていて 雨倭頭巳神社(うわずみじんじゃ)と 今はもう存在しない名が記されてあった。何故ならその社は2年前にすでに焼け落ちているのを小夜はその目で確認したのだから。






「 えっと ツクヨ君 このお姉さんは? 」

「 ミトウサヤだ 」

「 俺はウミノタイヨウっす 」

「 いや それさっき聞いたから でツクヨ君? 」

「 へ 編集部の副編集長と先輩です お土産渡しに行くって言ったらなんかついて来ちゃて 」


 他にお客さんのいない店内のレジカウンター越しに小夜が仁王立ちに腕を組んで店長を瞬きもしない目で見据えている。海乃も小夜の背後で同じポーズをとる。私はその横でオロオロしているのであった。なんだこれは。

 東京駅で海乃と合流してから私はお店にお土産を届けて行くと言ったら何故か二人がついてきたのだ。ちなみにお土産は、あんまり可愛くないネズミと子猫が追っ掛けこしてる どっかで見たことのあるような構図のパッケージの鼠仔猫饅頭である。アキラの島起こしの道は前途多難だなと思ってしまう。


「 私はツクが生まれた時からの付き合いだ 母親替わりとまでは言わんが 気持ち的には保護者であり後見人であり良き友でありたいと自負している 知っての通りコイツはトリオイ製薬会長であったトリサコの唯一の跡取りだ 近づく良からぬ輩は総て排除せねばならん 故にツクの初めての男がどのような男なのか見定める必要がある 」

「 なっ なっ サヤさんサヤさんサヤさんサヤさん なっ なっ ホワッツ 何を言ってるのかなぁ あれは その違うんですよ 行きずりじゃなくて行き違いでもなくて行き当たりばったり的な的な その場限りというかその場の過ちじゃなくてその場のノリでもなくて なくて お盆の水をこぼしちゃった感じのやつですよ よくあるじゃないですか 残念ですがもう手遅れなのですみたいな 無礼講ですよ 酔った勢いというか酔いに任せてというか酔ったふりをしてたりしてなかったりするんですよ 人は時として己れの過ちに…

「 ツク 少し落ち着け 」

「 … ぐすッ 」

「 海乃 そしてユウリ店長 すまん ちょっとカマをかけて突っついてみたんだがとんでもない物が出て来てしまった なかったことにしてくれ 」

「 なっ なっ なっ なっ なんですとぉぉ 」


 鳥追月夜20歳 自爆テロ決行の日であった。






 気まずい、気まず過ぎる。放心状態で店を後にして帰りの車中である。空気が痛々しい 小夜と海乃は何事もなかったように島での取材の話をしているのだが普通に突っ込んでくれた方がよほど気が楽だ、店長はどんな顔をしていたんだろうか、また困った顔をさせてしまったのだろうか。あの夜みたいに。


 半年ほど前 高校の同窓会で少しばかりお酒を飲まされた夜だった。酔ってはいなかったと思う、酔ったふりをしたつもりもないのだけれど。

 その日のことはなかったことにした。ひどい女だと思う 自分から仕掛けておきながら自分でなかったことにしたのだ。私はなんて身勝手な女なのだろう。






 鼠仔猫島から帰ってから3日間は編集作業にあたった、百目奇譚の誌面作りは技術担当の竹さんにすべてが掛かっているので4人で話し合いながら取材内容を記事に纏めていった、写真は我ながら会心の出来である。小夜が撮った私と玖津和あきらのツーショットに海乃がやたらと突っかかるがつなぎ姿の私の写真をみて一緒に行かなかった事をひどく後悔しているようだった。変な想像をしていそうだったから下にちゃんとTシャツは着たと念を押しておいた。そして、そして、そして、そしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそしてそして…












 鳥迫月夜の日常は幕を下ろした。










「 ゔあああああああああああああああああああああああああああああっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ 」

「 どうしたツク 」

「 ツクヨちゃん 」

「 どうした どうした おい ツク ツク 竹さん救急車を救急車を なんだこれ なんなんだよ ツク しっかりしろ 」


 ピーポーピーポーピーポーピーポーピーポーハハハハハはははははははハハなんてまぬけな音なんだこれは九官鳥がまねしてるのかなぁ







 それから約6時間後 北米大陸西岸部一帯に巨大津波が到達する 死傷者数不明 行方不明者数不明 人類史上最大の自然災害が牙を剥いた










章分けをするのならここまでが第 1章です。

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