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第13話 穴に入らばなんとやら

 舌切り雀に出てくる葛籠の中にはお宝とおばけが入っていた。私が貰った葛籠の中にはお宝は入っていなかったから やっぱりおばけだったのだろう、私はいったいどんな悪い事をしてしまったのか おばけに聞いたら教えてくれるのだろうか それとも雀のように舌を切られてしまうんだろうか。


「 やっぱり警察に通報した何者かがいます 少女を監禁して山中の私有地に入っていく怪しい2人組を見たと 警察が到着した時 ゲートは開かれていました 」

「 ひィー 監禁少女って私で拉致男(らちお)って海さんとサヤさんですよねェ あなた達 私に何しようとしていたんですか 」

「 ツクヨちゃんにして見たい事なんて考えただけで眠れなくなっちゃうよ 」

「 ツク 私は拉致男じゃないぞ 拉致女(らちじょ)いや違うな拉致ガールだ 」

「 そんな山ガールみたいに言わないで下さい で その人の目的ってなんだったんですか 」

「 そこだよ そんなもの間違いだと簡単に証明できるのだからな 」

「 それじゃあ あそこに坊さんのミイラがあるって最初から知ってたんスかねェ 」

「 その線は0ではないが私達が行ったタイミングで仕掛けなくてもトリオイの私有地に死体が保管してあると通報すればよくないか 」

「 そッか 」

「 私達が行く先に何かヤバイ物があるのは知ってるが それが何処でそれが何なのかまでは知らなかった だから尾行して警察を介入させて様子を伺った が 一番しっくりくるように思える 」

「 でも 全部警察に押収されちゃいましたよ 」

「 そちらの方が都合がいいんだろう その後どうにでもできる つまり警察より上の何らか という事になる 」

「 激ヤバじゃないッスか 」

「 製薬会社の敵なんてそんなものだろう 」

「 やっぱ葛籠が目的ッスか 」

「 だろうな だが何を何処まで知ってるかが問題だが 葛籠はどうなった 」

「 それが よく分かんないッス 現場付近は完全に封鎖されてて迂闊に近づけません あれ警察じゃないッスよ 」

「 やはりな 」

「 ミイラの方はどうなりました 」

「 そちらは大丈夫だ ニュースに流れた通り事件性はないと判断されて捜査は行われない 単なる100年ほど前の即身成仏的扱いだ 」

「で これからどうします 」

「 一旦私達はこの件からは離れよう 葛籠だけが目的なら 前にも言ったがこちらとしては厄介払いできて万々歳だ これ以上がなければいままで通りの日常にもどれるからな 」


 戻るべき日常なんてものが私には在るのだろうか。


「 ツク 島に渡るぞ 海乃はお留守番だ 」

「 えェェ なんスかそれ ズルくないッス 」

「 仕方ないだろう 警戒を怠る訳にはいかない 海乃はこちらで車田と動きを注意しておいてくれ 」

「 げェェ 了解ッス 」

「 島って何なんです 」

「 瀬戸内にある島だ じいさんの件で軍関連の調べ物をしていたら面白いのが出てきた 」

「 あッ やっぱズルい 」

「 この島で旧帝国陸軍がなにやらやっていたらしいのだ 」

「 勿体ぶらずに教えて下さいよ 」

「 この島にはな大地に底なしの大穴が穿たれているらしい 島民の伝承では地獄に繋がる大穴だそうだ 旧帝国陸軍はそこから何かを引き摺り出そうとしていた 」

「 キター 」

「 地獄から何を引き摺り出すんです 」

「 さあな 鬼が出るか蛇が出るか はたまた地獄の亡者なのか そこは我ら百目奇譚の出番だろう 」

「 やっぱズルい ツクヨちゃん俺の一眼貸すから写真とお土産も頼むッスよ あとプレゼントしたつなぎたまには着てよ 似合うと思うんだけどなァ 」

「 嫌ですよ あれ おトイレどうするんです サヤさんどうしてるんです 」

「 どうもこうも脱ぐに決まっているだろう 」

「 おトイレの度に上半身も脱がないといけないなんて嫌ですよ もし下に何も着てなかったら裸になっちゃうじゃないですか 」

「 イヤイヤ ツクヨちゃんなんか着ようよ Tシャツとかさぁ 想像しただけで鼻血でそうなんだけど 」

「 だって一回着てみたけどあれ結構蒸れません 」

「 確かにな 通気性が悪いのが玉に瑕だ 私も夏場は何も着ないことはあるぞ 」

「 ヤメて下さいよ 鼻血噴き出しますよ 」


 この編集部での密談の3日後に私と小夜は島に向け旅立った。旅といっても鉄道と船を乗り継ぐだけなのだけれども 移動が単なる時間を消費するだけの作業になった今と違って昔の人はどんな気持ちで何の目的で旅を続けていたんだろうか。


 列車の中で


「 サヤさんは後悔してる事とかあります 」

「 失敬な 私だって後悔くらい と言いたいとこだが正直 後悔というものが何なのかよくわからん あの時こうしていれば なんて言うが そうしなかったのは自分自身で出来なかったのも自分自身だ 今も昔も私は私だ 罪として背負うしかない 今の私なら違う選択が出来るだなんて自惚れてはおらんよ 人なんてそんなに都合よく成長出来ないさ 性根は変わらんよ 口ではどうとでも言えるがいざとなったら同じ事を繰り返す 業深き人間なのさ私は 」

「 罪と業ですか 」

「 すまんな もう少しまともな事が言えればよいのだが アドバイスを求めるなら相手を選べ 」

「 いえ サヤさんの言葉が聞きたかったです 」

「 ユウリ店長とは話せたのか 」

「 あの話に後日譚はいらないと怒られちゃいました 」

「 それでいいんだよ 」

「 私には何も出来なかった たとえ今だって何も出来ない なら罪として受け入れます 」

「 人は誰しも罪を重ねて生きていく ならば背負って前を向けばいいんだよ 」

「 はい 葛籠の中のものも社に居たものと同じようなものだったんでしょうか 」

「 いや 社に居たものは畏れでもあり信仰でもあったが葛籠の中のものは畏れそのものだ信仰なぞがつけいる隙も許されない圧倒的な畏れだ」

「 そんなものとどんな約束を取り交わしたんでしょうか 」

「 さあな 気味が悪い部分ではあるな 」



 島に上陸したのはその日の夕刻だった。島の名前は鼠仔猫島(そこねじま)である。


「 ネズミと子猫ですか なんか可愛い名前ですね 」

「 当て字だろうな 本当は地の底の根っこで底根島じゃないのかな 」

「 地の底の根っこ? 」

「 古事記や日本書紀に底根の国という表現があり冥界を意味するらしい ここは冥界の入り口がある島だからな 」


 定期便の船着場には迎えの人が来ていた。


「 私達 どこに案内されてるんです 」

「 この島の主の屋敷だろう 本当はそこらの民宿の方がいいんだが 事前に取材の連絡をしたら是非当家にと断り切れなかった 奈良時代からこの島を統べる一族らしいぞ 」

「 ひぇぇ 奈良時代からこんな島に引き篭ってるんですか 」

「 それがどうも陰陽の家系らしくて都でなんかやらかしてこの島に流刑になったっていう話だ 」

「 それじゃ何百年も流刑になりっぱなしって事ですか なにやらかしたんス 」

「 それだけじゃないんだろう 陰陽師と地獄への大穴 無関係なはずがない 」


「 これはこれは さすが東京の超有名なオカルト雑誌の編集者さんだ どうぞお手柔らかにお願いいたしますね 」


 なんか絵に描いたみたいな好青年がそこにいた。







今回はほぼ会話だけで乗り切ってしまいました。

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