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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第78話 転送装置完成と懸念事項について


「ホテルの屋上にこれを置いてっと。後は亜里沙を呼ばないとな。約束は守らなければ」


 研究室で装置を確認後、自身の能力で別空間に保管してから屋上までエレベーターで移動し、周りに人がいないのを確認してから目立たないところに、先ほどの装置を設置して最終確認をする。


 最後に装置と異界空間の情報を共有させ、セットが完了するとハーネイトは亜里沙を呼ぼうとしていた。


「私ならここにいますが」


「おお、ちょうどよかった亜里沙さん。例の転送装置が完成した」


「それはそれは、では早速私が試してみます」


「頼んだぞ」


 亜里沙は以前、ハーネイトの行っていた研究の話に興味を抱き、志願する約束を取り付けていたという。


 そこで今回は、亜里沙に屋上から異界空間内を利用し、地下にある研究室に置いてあるもう一台の同型機のある場所まで移動する実験を行うという説明をする。


「それで、まずは地下から屋上まで移動できるかということですね。それも異界亀裂内を移動して任意の場所に移動するなんて、驚きますわ」


「この程度の代物ならば異界通路などに影響を及ぼさないことは実証済みだ。亜里沙さん、つけているCデパイサーをそれにかざしてみてくれ」


 亜里沙は指示通りにCデパイサーを装置にかざす。すると行き先の表示が出てきたのを確認した。


「ええ、屋上の表示がありますね」


「あとはOKを押せばリンクがCデパイサー経由で繋がるぞ」


「では、移動してみますね」


 決定ボタンを押した亜里沙は次の瞬間、妙な電子空間上の中にいた。そして目の前に何か光るものを見つけ足を進めていく。


「本当にこれは、あの異界空間ね。で目の前にあるこの光の先に……」


 亜里沙は目先にあるその亀裂に向かい、足を踏み入れた。すると次の瞬間ホテルの地下にある研究部屋にいたのであった。


 すぐに屋上に戻ると、改めて今体験したことについて驚きと感動を彼女は味わっていたのであった。


「わぁ、これはすごいですね。このポータルがある場所に任意で行けるなんてすごいですわ」


「そうだろう?それと各自家に超小型の転送装置を置いておけば、家からここまですぐに来ることもできる。少し課題はあるがな」


「それについては、近いうちに第一回目の大会議でも開いてそこで渡すのが一番でしょうね」


「お、そうだよな。ありがとう亜里沙さん。ご協力感謝だ」


 ハーネイトは実験結果に満足し、亜里沙からのアドバイスに素直に感謝した彼は2人で事務所に戻り、宗次郎に結果を報告した。


「どうやら新技術の方は、うまくいったそうだな」


「はい、Cデパイサーと一定能力を持っていないとだめですがね」


「そうかそうか、よかったなあ!移動については結構大変なところがあるからのう。出来る限り協力するぞ。しかし、わしもCデパイサーと言うのを使いたいのじゃがな」


「はい!宗次郎さんがいろいろ支援してくださったからですよ。あー、時間があるときに、一度宗次郎さんの適性検査をしようかと。恐らくあるとは思います。娘さんがここまで才があるのならば、貴方も高い能力を有しているかとは思いますが」


 宗次郎は話を聞いて興味津々であり、利用したいと言うがポータルの利用にはある程度の霊量子運用能力が必要なため、まずはどのくらいのレベルがあるか調べないといけないとハーネイトはそう言うが、宗次郎はすぐにそれを受けてみたいと申し出た。


「今日は特に用事はない。今からでも構わんぞ」


「そ、そうですか。では……ほうほう。これは」


「どうじゃ、ハーネイトよ」


「そうですね、少しお待ちください」


 宗次郎の体に手をかざし、頭からつま先まで調べると、ハーネイトは少しだけ微笑んで一言述べてから席を離れ、棚に置いてあるCデパイサーを持ってきたのであった。


「っ!それは君もつけている、Cデパイサーという奴じゃな」


「つけて運用に問題はないと思いますが、貴方の場合は徐々に力を覚醒させた方がいいと思います。年も年なので、肉体的負担を軽減するためです。それでこれを差し上げます」


「おおお、ではそのポータルを使用できるのか」


「はい、亜里沙さんに使用法を聞いてから使って見てください。移動できる場所は順次増やしますので」


「ありがたい話じゃな。大事に使わせてもらうぞ」


 ハーネイトは宗次郎にも力を行使する資格はあると判断し、Cデパイサー1台を彼に贈呈したのであった。


 その頃、ホテル3階にあるバーでは2人の男が酒を片手に話をしていた。それはヴァンとリシェルであった。


 一旦帰還していたリシェルだが、再びこちら側に来て合流し静かに酒を飲んでいたのであった。異世界の酒の味に舌鼓を打ちながら、2人は最近の出来事について話をしていた。


「ふう、一応あれから亀裂内を色々探しているのだがたまに例の宝石が手に入るくらいだ」


「こっちは獣だらけっす。全部打ち抜けますので問題ないっすけど」


「ここにいたのか、2人とも」


 すると、2人の背後に白いタキシードを着た、モノクル眼鏡とハットが特徴的な長身の男性が声をかける。


 彼の名はシノブレード・ヴァンデンハイネン・ルクスタークといい、かつて戦争屋集団「DG」の幹部として活動していた霊量士であり、現霊使いでもある。


「シノブレード、来ていたのか」


「ああ。他にも数名来ている。話は聞いていたが……面倒だな」


「そうっすよ。まあ俺はいいですけどね。ああ、この人にも酒を一杯出してもらえます?」


 リシェルはそう言い、マスターはニコッと笑いながら静かに座るシノに対しお酒を出した。そうして3人はしばし話し合いをしながら、最近のハーネイトや響たちのことをついて話題を提供しあい一時を過ごしていたのであった。


 その中でリリーとミカエルはあの紫色の空間こと修練の部屋で四苦八苦していた。


「うへえ、まさかかと思ったけど大魔法一つ一つをデータ化してCデパイサーに納めるって……」


「父さんが聞いたらなんて……でもあの人新しいもの大好きだから意外と受け入れそうなのよね。魔法は、人のためにあれ世のためにあれ、か」


 それは、ハーネイトから依頼されていた霊量子で魔法術を発動し運用する技術に関する実験であった。


「でも無茶よね……まあある程度準備しておけばハーネイト本人がするっていうけど」


「でも意外といいかもね。とにかくこの環境ならば色々撃っても問題ないし、それを観測して登録する。それまでが私たちの仕事ね」


 そういいミカエルは炎系の大魔法を、リリーは無属性の大魔法をそれぞれ時間をかけ霊量子で実行し、観測カメラや計測機器にその情報を記録させていた。


 何でもそれをもとに調整すれば、自身たちの住む世界では前代未聞の、機械から魔法と言える超常現象が発生するというらしい。2人ともハーネイトの考えていることが微妙に分からないながらも、割と協力的に研究に参加していたのであった。


「んじゃ今度は私が撃つわ。しっかり観測してなさい!」


 先に魔法を撃ったミカエルと交代し、リリーが別の大魔法を霊量子を用いて放ち記録させていた。


 それから少し経ち、ハーネイトは全員に対し第1次大会議を行う旨を伝え、全員を地下に大会議室に集めていた。


「早速か、先生は何を」


「何でもすごいもの作ったらしいわ」


「ったく、妙なものなら俺は帰るぜ」


 響たちはがやがやと話をしていた。わざわざ集めるということはそれだけ重要なものかと思いいつ始まる構っていた。するとハーネイトが箱を抱えて会議室に入ってきたのであった。


「お忙しいところ、集まっていただいてすみません。この度なんと、任意の場所にすぐに移動できるアイテムを開発したのでその使い方と、超小型ポータルを皆さんに1個づつ配布するというのがあれです。それと、これからの活動方針についてもですが」


 しばしハーネイトの話を聞いた後響たちはCデパイサーの画面を見るように勧められ指示に従った。


「では皆さん、そのCデパイサーの画面を見てください。その装置にかざすと行き先がいくつか表示されそれを選択しOKを押すだけです。今はこのホテル・ザ・ハルバナの屋上にしか行けませんが」


 その説明を聞いた全員が驚いていた。それができるならいろんなところに行けると。特に翼や間城が食いついていた。


「まじか……これなら一気にホテルまで行ける。先生は探偵よりこっちだな」


「私たちが活動する時間の間、色々制約がかかっているのを気にしていたのね先生」


「本当に、すごいなこれは」


「先生マジイケメンだわ。これ学校に置いたら遅刻とかないわね」


 響は先生であるハーネイトにそう評価し、彩音は気遣って装置を作ってくれたことを察した。時枝と間城もそれぞれ感想を述べる。


「間城、朝弱いからってそれはあれだろ。しかし便利だな。確かに何かあった時公共交通機関での移動ってトラブルあるとあれだしな」


「極端な話先生のところに直接移動できれば大体どうにかなるわけだし」


「ったく、あの先公は妙なもんを作りやがる。探偵じゃなくて開発者の間違いだろ」


「そもそもハーネイトの兄貴はすごい存在ですし」


 最初そこまで興味のなかった五丈厳だったが、段々この男の底無さを理解したのか警戒するように彼を見ていた。


「ああ?って文香か。なんかキャラ変わってねえか」


「今までは猫かぶっていただけっす。これからはこんな感じでいかせてもらうっす」


「はぁ……まあどうでもいいか。ただ、あの先公は探偵じゃねえのは確かだ」


 文香の代わり様に五丈厳は今までの彼女と違うと思っていたが九龍の話を聞いて納得した。


「ということで後はこれを一人づつ配布します」


「何だこれは、置物ですか先生」


「これもさっきのと関連したものですか?」


 ハーネイトは小型のどこにでもおけそうな、置物と言うかランプのようなアイテムを全員に配布した。これも小さなポータルである。


 ただし小型化の影響でここから別のところに行くにしても5か所の登録が限界という欠点がある。それでも大幅に移動時間を短縮できるため全員はとても驚いていた。


「一応これからはCデパイサーを用いたテレビ会議とかもできるときは行おうと思います。ただしアイテム系の受け取りに関しては直接来ていただく必要があるのでその辺はご了承ください」


 あくまで転送装置はこれから各地に移動する場合に、負担を減らすためにあることを念頭に置いて使用してほしいと説明したハーネイトは、Cデパイサーでの会議についても言及しつつ、あまりにも大きなCデパイサーのアップデートや新アイテムの配給などはこの会議室まで来てもらうことを説明したのであった。 


「それから、先日病院内の亀裂で戦った際に血徒に感染している者が敵にいました」


 ハーネイトは大人たちと捜査会議をした際に決定したことについてその理由も含め響たちに話をすのであった。それを聞いた途端、高校生たちの顔が青ざめる。


「え、まさか……ザジバルナ?」


「その通りです。まだ周囲への感染能力はない状態でしたが、念のために注意喚起をここでしておきます。魔界復興同盟もしくは魂食獣以外の実体のある生物への直接攻撃は控えてください」


 一応霊量子を扱える存在は血徒に対して非常に耐性があることが今までのデータから判明してはいるが、念のために霊的存在以外の敵を相手に無闇な近接戦闘や接触などは可能な限り行わないようにと指示を出す。


 また、対気運及び血徒などに対する防御装置の研究開発を急いでいることも説明し、それができるまでの間と新たな指示についての期間を説明する。


「あー、少し待てや相棒。俺とお前は、相手が血徒に取り付かれているか見ることができるだろ?俺は相手が何系の何々かまで分かるがな。お前か俺が出ているときはその制限は外してもよくね?」


「あぁ、確かにそうだけど一応基本的にはという形で今回言っているのだけど」


「先生たちは分かるのですか?その、血徒という存在の感染の有無が……」


 その話に割り込む伯爵は、自身らの指揮下ではその制限を外しても構わないだろうと指摘するが、ハーネイトは基本的な立ち回りについての話であることと例外も今後出てくることを想定しつつ話をしていると言い、状況に応じた指示を出すこともあるという補足を説明したのであった。


「ああ、できる。それと君たちも霊量子の運用操量が上がっていけば判断できるようになるが、結構これが難しい。君たちへの感染などを防ぐための指示だと思ってほしい、いいですね?」


「分かりました、先生」


「しかし俺や九龍は近接メインだぜ」


「一応遠距離まで届く攻撃技は確か開発していただろう?また、皆さんが関心を寄せていた、例の魔法術についてそろそろロールアウトできるかもだから、使用可能になり次第それも合わせて使うといいでしょう」


 その中で近距離を担当する人たちからの質問が上がり、これについても遠距離用戦技化、今開発中の新技術で補うことができると説明する。


「つか、その敵であるあれまで病気になってるとか、あのうるせえルべオラとかいう血徒とかよ、他のまだ知らねえ血徒と関係があるのか先公」


 五丈厳はハーネイトたちの説明を聞いて別に手段があることを確認しその点についてはもうだ丈夫だと言うが、先ほどから響たちも気にしていた現在敵組織である魔界人たちの血徒感染について質問をする。


「それをこれから調べる必要がある。更に、京子さんや時枝、間城さんなどから提供して頂いた資料を読んでいる中である可能性について話をします」


 彼の質問に対しハーネイトは、この件について伯爵やエヴィラなどに捜査と行うように指示を出していると説明してから、もう一つ彼が懸念しているある事態についての調査をこれから行う予定があることを話すのであった。


「この世界に住んでいる人以外の生物も、もしかすると血徒に感染している個体がいるかもしれません」


「本当、ですか?」


「仮定の段階だが、異界化浸蝕現象により世界間、異界空間内との境界が薄れるとそこから異世界の生物などが侵入しやすくなる。それらの中で血徒に感染している個体があればそこから蔓延する可能性が大だ」


 実は、先ほどの攻撃制限に関する指示もそうだがこちらもかなり厄介な話であった。それもこの前の病院での一件から容易に想定されうる事態についての話であった。


 もしも目が赤くなったり、出血を起こしている、また共食いなどで血を吸っているような野生生物がいれば近づかず報告するようにと追加の指示を出したのであった。


「分かったよハーネイト、異変のある野生生物に関する情報を集めればいいのだな?」


「そうです大和さん。皆さんも、これはおかしいと思ったらすぐに連絡を」


 ハーネイトはそう言い全員を解散させそして再び研究室に入っていったのであった。彼にはもう一つ、ある戦闘補助プログラムを作らなければならないという仕事があった。



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