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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第54話 イレギュラーな敵性存在


「リシェル、ブラッド、どうした!」


「師匠、大物が近づいている!」


「ちと一人じゃきついぜありゃよ!あんたの出番だぜ」


 2人が走りながらハーネイトのもとに駆け寄ってきた。そう、2人が遭遇したのは超巨大なツノトカゲという魔獣であった。


 魂食獣とは違う。魔界の生物であり、何故ここにいるのかハーネイト達は疑問に思ったが、恐らく例の罠によりこの空間に引きずり込まれた魔獣なのだろうと考え、ハーネイトは全員にある指示を出した。


「2人とも下がって。あれは遠距離攻撃で角と尾を壊せばほぼ無力化できる。全員角を集中攻撃、そのあとは私が!」


「オーケーだ」


「行くわよ!」


「遠距離ならば俺の出番だな。行くぞミチザネ!」


 そうして、リシェルが狙撃で角の根元を、ブラッドは火炎弾を飛ばし角全体を燃やす。間城はしっぽの部分をアイアスに攻撃させ動きを止める。


 その後亜里沙の碧銀孔雀が暴風を放ち、時枝のミチザネが落雷を落とす。そして響と彩音が連携して攻撃を行い角が砕け散り、トカゲはショックで動けなくなっていた。そこにハーネイトが前に出て、ある技を繰り出した。


「今だな。……次元亀裂解放!MF・メテオマシンガンブロー!」


「いきなりあの化け物の周囲から腕が!」


 ハーネイトはここにきて、新たな戦闘スタイルを確立した。それは彼が所有する、ごく一部の創金術士にしか扱えない機械の巨人。


 その名をMFイタカと呼び、その巨大な機械の腕だけを次元の門から撃ちだし殴る攻撃を敢行する。あらゆる方向から無数の腕が襲い掛かり、トカゲの体をミンチの如く砕いていく。


「しかもあれは機械の腕よ!」


「俺は夢を、見ているのか?いや、現実だ。あれが人の成せる業なのか……!」


「ハーネイトさん、貴方は一体……!」


 田村と綾香はそれぞれ、彼の技に関してとても人間ではできない芸当だと思い身を震わせながら恐怖していた。


 しかし命の恩人である以上、あとで彼にはきちんと礼を言わないといけないということは確かであった。


「これは……もう原形をとどめていない。優しげな顔のわりに、やることが恐ろしいな」


「マスターハーネイトは、守るための戦い、最強。容赦しない男」


「夢を見ているみたいだな、全く」


 一方で音峰は、先ほど自分たちを治療していた時の、彼の優し気かつ母のような雰囲気を見せる表情、振る舞いとは一変した彼の苛烈な猛攻撃に恐れを抱いていた。


 ほぼ原形をとどめないほどに肉体を破壊された巨大トカゲを見ながら、あの男は人を超えた何かか、人ならざる者なのかと彼はボソっとそうつぶやいた。


「そうか……だがっ、これで」


 ハーネイトは絶命した魔獣に近寄り、その残骸から何かを回収していた。その間に伯爵とリリーで周辺の整理を行う。


「助かったのね……?私たち」


「そうだな、見てはいけない物を見てしまった感じはあるが」


「ともかく、彼らの指示に従おう。今はそれが大切だ」


 被害者3人はその後ユミロに抱きかかえられ、来た道を戻った後小型の異界化装置らしきものを発見しこれを破壊、全員亀裂から脱出したのであった。


 するとすぐに翼たちと合流し、速やかに学園内を出てから近くの公園まで移動する。


「みんな無事のようだな、お疲れさまだ」


「先生こそ、あれ反則では……」


「あれも私の能力を合わせて使っただけ。以前に比べ結構しんどいな…っ」


 これで一息つけると思ったハーネイトは少しよろめいて、そのまま床に座り込んでしまった。どうもエネルギーを消費しすぎた様子である。


「こっちは別にあれがあるか探してたんですが、何もなかったすね兄貴」


「幸いこの1時間ほどここを通った人はいなかったぜ。まあ大丈夫だろ」


「おい先公、何があったか教えてくれよ。てか、大丈夫か?」


 3人の報告を聞いたハーネイトと伯爵はほっとして、公園の地面に大の字になって寝そべる。


 リシェルとブラッドはそれを見て行儀が悪いぞと指摘するが、当の2人は完全にグロッキーな状態であった。


「てか兄貴大丈夫かよ。それに被害者も……全員救い出せたみたいだな。ありがとうな皆」


「翼が早く見つけて教えてくれたからだぜ」


「おうよ響。それにげっ、お前らは!あの時の騎士たちか」


 ハーネイトは内部で起きていたことを外に出ていた3人に説明し、無事に救出しそれと同時に行方が不明だった霊騎士たちも全員合流できたと報告した。


 翼は彼の体の具合を少し気にしながら、霊騎士たちと目が合い少しまごつく。だがモルガレッタは微笑みながら声をかける。


「あの時の……前より強くなっているわね。……安心しなさい。後のことは当面ハーネイトさんたちに任せようと思っているわ。今回のことを報告するために戻らないといけないし」

 

 モルガレッタは今回の一連の事件で多くの人間に迷惑をかけたといい、ヴァストロー以下全員謝罪してから、一旦霊界に戻り事態の深刻な状況に関して報告するためここを旅立つという。


「私たちはこれを以て一旦霊界に帰還する。ハーネイト、お前には色々助けられた。……感謝する」


 ヴァストローはハーネイトとその仲間たちに対し、部下を助けてもらったことに感謝してから準備ができ次第、自分らも異界空間内の調査に全面的に協力すると申し出た。


「近いうちに、また会おう。全てを守る偉大な戦士よ」


「向こうの方に、よろしくと伝えておいてください。死霊騎士の件につきましては、こちらでも並行して捜査します。思っていた以上に、複雑な問題が起きているかもしれません」


「頼もしいな、全く。では、これにて失礼する。皆さんご武運を」


 ヴァストローが代表して最後に挨拶をし、霊騎士6人は全員霊界に帰っていったのであった。


 これで霊界から訪れた霊騎士が起こす事件は解決し、一段落したが、肝心の問題についてはこれからであった。


「これで、全員生き残りを助けたな相棒。後は、死霊騎士と魔界復興同盟か。……エヴィラの報告も気になるぜ。もし血徒が絡んでいるとなると、きつい戦いになるからな」


「そうだね伯爵。さてと……3人の処置はどうしようか」


「ハーネイトさん、私はまだ約束を果たしていません。それに命を救っていただきました。できることがあれば……」


 綾香はハーネイトと出会った時から意識していた。そして今回の一件で彼らの仲間になりたい。そう思っていた。


 実は彼女も矢田神村に親族がおり、例の事件で姪と甥を亡くしている。だからこそ関係があるのではないかと考えた上での発言であった。


「まさかあの時のお姉さんが……」


「どうするのですか、先生。俺たちの様に能力者になるのですか?」


「分からないな……しかし見えているということは素質ありだ。そこの2人もだけど」


 響の質問にハーネイトはそう答えた。3人に幻霊の試練が待ち構えている、そう思うとハーネイトは複雑な表情を見せる。


「というかお前らは一体……」


「私はああいう化け物を倒すため、そして素質に選ばれてしまった人たちに対し身の守り方を教える先生であります。まあ、本業は今起きている危険な異変を取り除くため調査する探偵、何でも屋なんですけどね」


「おっさんたち、何か幻聴とか幻覚とか感じたことはなかったか?」


 ハーネイトは質問に対し、自身の仕事に関して説明をし、伯爵の質問に音峰は少しイラっとするも、あることを思い出して言葉を口にした。


「俺はまだ学生だぞ。ったく、中学の時の友達、か。原因不明の事故で死んだ友達の声が、わずかに聞こえてくる」


「……俺はな、昔別の学校にいたのだが、その時にある事件で3名の生徒を亡くしている。その犯人を捜しに各地を周っていたのだがな、ようやく点と点が繋がった感じがするぞ」

 

 田村もその話に便乗し話をした。それを聞いた伯爵は驚いていた。


「おいおい、どうなってんだよ。他のところでも被害出てんのに上の奴らは……」


「この国を管理する存在が秘匿しているか、あるいは情報統制、か」


「闇に、葬られていると言った方がいいわ先生」


「俺たちも、あの事件のことについては公に話せない」


「何だかよ、国というか政府が何かを隠している感じがするぜ。親父も言っているけどな」


 彩音は暗い表情でそう言い、自分たちもそうやって忘れ去られようとした被害者であることを伝える。


 移住などに必要な補償は十分に受けたが、代わりに事件について箝口令が敷かれたと彼らに打ち明けたのであった。


「そうなのか彩音……」


「皆、怖くて目を背けているのよ。それにまとまってあんなこと起きたのは故郷の一件だけで、他には……でも、同じような事件は他でも起きているわ。話を聞いたことがあるの」


「だから俺たちは、独自で事件の犯人を追っていた。その中で先生たちに出会って、ようやく分かったんだ。その正体がさ」


 響と彩音はそれぞれそう言い、先生たちのおかげでやっと犯人の正体が分かったと説明し感謝していると言う。


「初めての異世界旅行に期待していたが、これはまずい事態だよな師匠」


「その通りだな。しかし、私の仕事はいつもそう、ほとんどの人たちが気付かない中、それに気づき未然に倒す。そうして世界を維持する。付き合わせている人たちには本当に、感謝しているというか申し訳ないというか……」


「しかしだ、放っておいていいものじゃねえだろ。ハーネイト」


「その通りだブラッド。出来るだけ多くの支援が今後必要となってくるな」


 ハーネイトはリシェルのどこか能天気な発言に少し呆れながらも、自分たちの仕事がどういうものか再度説明したうえで謝罪していた。

 

「済みません、一応今回被害を受けた3人には私の事務所に来て頂けませんか?他に体や精神に異変がないか調べた上で、今回のことについて説明したことがあります」


「ああ、わかった。今日はもう練習も終わっている」


「いいけど、大丈夫よね……?」


「構わないが、夜に教員たちで会議があるのでな」


「可能な限り今日の夕方までには早く終わらせますので」


 そう言うとハーネイトは、全員をホテル・ザ・ハルバナまで連れていくことにした。すぐに大和が連絡を受けマイクロバスを手配し現地まで来てくれたため、それに乗りホテルに到着し、地下駐車場から事務所に全員入ったのであった。


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