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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第45話 除染浄化解放作戦術式・A(アペリエンス)ミッション準備

 

「皆が寝ている間に、私は対策アイテムを作ろうか」


 その夜、ハーネイトは伯爵が先日見つけた亀裂に入り、何やら地面や大気から気運に関するサンプルを採取していた。


 それを事務所まで持って帰り、創金術を用いて小さなお守りのようなものを大量に製作していたのであった。


 必要数を全部作り終わると、一段落してふうっと息を吐いたハーネイトは、近くの小さなテーブルに置いていた、リリーが淹れてくれたとてつもなく甘いコーヒーを飲んでいた。


「よし、これであの気運に対抗できる。問題は、あの複数存在する石碑と結界の関係性だな。面倒だと横着かましてまとめて焼き払ったら強制排除されたことから、一つずつ壊していかないとまずいかもな。妨害する仕掛けについても同時に調査し記録しなければ。あーマジ面倒!!!」


 霊騎士ですら精神汚染を受けやすくなるほどの恐ろしい神柱級の気運。それを防ぐには打ち消しあう波動の力を持つアイテムがあればいい。それが先ほど製作したお守りのようなアイテムである。


 その後ハーネイトはぼんやりと考えながら、亀裂内での行動について振り返りながら幾つも存在する石碑や、異界化を引き起こす装置などに関して、何か細工がないか考察して思わず独り言を言っていたが、あくびをしながら伯爵がそれを聞いていた。


「ふああ、面倒だな。あの時よりも……エヴィラから連絡が来ていたのを読んだか?」


「伯爵、起きてたんだね。ああ、驚いたよ。彼女の報告は」


「最初見たときはうっそだろと思ったが、思い返すと昔血徒の呪血領域消し飛ばした時も、あんな感じだったなあ」


「まさかと思いたいんだけど、もしこの死霊騎士失踪事件や異界化浸蝕現象に血徒が関与しているとしたら……?」


 2人とも、別の調査メンバーであるエヴィラから情報は受け取っていた。だがそれを全て本当であると言うころに彼等は今一思うことができなかった。


 理由は汚染の広がり方ややり口などは確かに以前血徒と戦った際のと今回見つけたのは類似している点が多いが疑問な点がいくつかある。


 気運の汚染に関して、血徒が関わった痕跡を今のところ見つけていないことや、彼らが主導なら呪血で地を染め侵略浸蝕し、領域を広げるのが彼らにとって一番であるが故、直接は関わっていないが浸蝕術に関してノウハウだけ提供している関係ではないかと2人は一先ず考えたのであった。


 その上で、仮定の話だがとハーネイトは言いながら、血徒が複数の事件に裏で関与し、あるいは首謀者として動いているかについてどう思うかを伯爵に尋ねつつ机に置いてあったお菓子を食べる。


「後者はあり得るかもしれねえ。まだ現場を押さえていないからあれだが……俺は2つの事件は別々の犯人がいると思うんだがな」


「伯爵の見立てはそう来たか」


「だってよ、俺かエヴィラでない限りどうやっても幽霊を醸して操るのはマジ無理ゲーなんですけどぉ?食べられる、もとい醸せる部分がないんじゃなあ。前者の死霊騎士操り人形事件は、魔界復興何たらってのが関与してんじゃねえの?」


 伯爵曰く、殆どの微生界人は実体、肉体のある存在にしか干渉できないという。修行次第で変わることはあるかもしれないし、自分とエヴィラは神霊化しているから話は別だが、彼は血徒も含めた微生界人が霊的な存在を直接操るのは基本無理だと言い切る。


 その上で異界化については過去の捜査資料などから関連はあると言うものの、奇妙な装置を置いてまでやったという決定的な証拠はまだないのが現状であり断定はできないと言うに留まった。


「じゃよ、相棒はどう見ているんだ?」


「まず死霊騎士の件だが、魔界絡みって感じなのがあれだ。魔界復興同盟、あの死霊騎士の言ったことは確かなのだろう。それに関する調査で迫ることができる。問題は、あの気運と異界化だ」


「神柱級の気運による汚染とその神柱の復活、死霊騎士たちが魔界に眠りし神柱のことを口に出していた。霊騎士たちは魔界のことを基本知らないのにそう話すのは、意識を支配されているから。その大元が同盟、という流れは分かるな伯爵」


「だがあの気運の汚染地帯の中に、隠すように異界化装置がある、それが気になっていたんだ。異界化してまで目的を果たすわけではない。むしろあいつらは装置を利用して、引きずり込まれた奴らを狙っているに過ぎねえなあ」


「だから、2つの事件は大きく関わっているのではないかと私は推測する」


 こうして話をしながら、事件の流れや要素を再確認するハーネイトと伯爵は、現状今揃っている証拠や要素、キーワードから死霊騎士、気運の汚染、異界化浸蝕現象はどれも深く関わっており、死霊騎士ザイハムが言っていた魔界の住民が関係する復興同盟が表立って活動していること、それを隠れ蓑にして異界化装置を開発している裏の犯人も存在するのではという説を立てたのであった。


「んでいつ始めるんだ?解呪というか除染浄化任務アペリエンスミッションってのはよ」


「あと2日以内にはやるさ。問題は役割分担だな。クラス分けは大切なのです」


 伯爵からの報告を受けてここ数日、ハーネイトはある作戦を考えていた。彼の故郷であるアクシミデロで生き物が住めなくなった汚染された土地を取り戻し解放する作戦が過去にあり、そこから得られら情報や経験などから、1つの戦闘術式こと戦術が誕生した。


 それがAミッション、正式名称は除染浄化解放作戦術式である。


 Aミッションは、一種の戦闘術式である。担当をクラスごとで分け、各個の負担を減らしつつ汚染を取り除き、敵を倒し目的を完遂する。それにより効率よく、確実に敵勢力の侵略を阻止することができるという。


「それだけじゃない、あれの調整をして早くリシェルたちを呼ばないと」


「んだな、しかし今回のには間に合わねえだろ。3日はいるぜ、調整によぉ」


「今回は私たちも前線に出ながら確認作業だ。今までになかった仕掛け、ギミックが立ちはだかってくるのだ。用心してかかる必要がある」


 ここでまた問題が1つ出てきた。除染浄化解放作戦術式ことAミッションは1チーム7名で作戦に当たることになるのだが、まず今動かせる人員が少し足りないことと、クラス面で偏りがあるということである。


 Aミッションはナビゲーター1人は基本的に不可欠で、残りの6人が実際に前線に出て作業を行う。 

 

 汚染除去とボス戦で活躍するアタッカー、味方の盾となり敵を引き付けるシールダー、遠距離から攻撃し罠も安全に破壊するシューター、汚染域の影響を受けず奥地まで侵入し偵察や妨害をするアサシン、罠や鍵、アイテムの探索とセキュリティ解除を行うサーチャー、そして味方全体の支援や回復などを行うサポーター、それを管理し適宜支援行動を取りつつ特別支援攻撃でアシストするナビゲーターの7クラスをどう運用するかで結果が大きく変わってくるという。


 それとまだ肝心の切り札である次元融合装置の設置と設定が終わっていないため、響たちの先生となる先輩の霊量士や戦闘能力の高い戦士などを呼べない状態であった。


 もし彼がそれを呼べるならば、CデパイサーのGIS部分において構築に大きく関わったボルナレロという友人を呼んで代理指揮させられたのだが、どうやっても着任が間に合わないため今回はハーネイトがナビゲーターとして活動すると決めたのであった。


 夜遅くまで伯爵とこうして話をし、記録にまとめたあとソファーで眠ったハーネイトはそのまま深く眠り続け昼まで彼は寝ていた。


 しばらくして彼はようやくソファーから起き上がると、少し寝ぼけた顔でCデパイサーを用いて全員にあるメールを一斉送信したのであった。


「あ、ハーネイト先生からメールだ。……対抗するアイテムを配布するので学校が終わってから事務所ですか。返信しておこう」


「早速メールが来ている。何、そんなことが起きているのか。とりあえず先生方の指示を仰ぐしかないな」


 響も時枝も、そのメールを見て自分たちに何かできることはないか考えながら、ネットで今までにあった不審かつ解決していない事件について調査していた。


 そうして日が暮れる前、響たちはホテルの地下2階事務所に集合していた。


「よく集まってくれた。例の件だが……」


 ハーネイトは机に置いていたあるアイテムを彼らに一個づつ手渡した。それをじっくり見ながら、何かのお守りかと思い彩音が質問した。


「お守りみたいですね」


「へぇ、兄貴はこういうのも作れるのか」


「これを身に着ければ、あの伯爵が見た気運ってやつの影響を防げるのか?」


 響はすぐにこれが、先日伯爵たちと共に入った亀裂の奥から感じた気配に似たものが内包されていることに気づいたのであった。


「一応そうだがな響。しかし今回の任務は場合によってはそれをつけていても進軍させられない可能性がある。それについては私がエリアの探索や支援指示、つまりナビゲーターとして今回君たちの補助につくからそれに従ってくれ」


「ナビゲーター?」


 ハーネイトの話について聞き慣れない言葉があったため全員はそれぞれ気になったことを質問した。


「君たちの戦いをアシストする役割だね。私が前線に出ても悪くないが、命令、実行できる内容に差異があって」


 ハーネイトは響たちにCデパイサーの中にあるヘルプを読むように指示し、しばらく内容を把握するため各自読んでもらうことにしたのであった。


「今回は自分は裏方に回り、影響領域に関して何か法則性が無いか、そして妙なものがないか分析に全力で取り組みたいのだ。うまくいけば同様の任務が起きた際にもこちらが終始優位に動ける」


「まあいいけどよ、んでそれを見たやつは誰だ」


「それは伯爵ニキと俺たち3人だ」


「フン、そうかい、そんでそんなに中はやべえのか?」


 伯爵が見つけた亀裂に関して、五丈厳は単純に突撃してはダメなのかと少し喧嘩気味で質問した。当然間城や時枝、九龍と勝也はまだ汚染された場所について直接見ていないためそういう対応になるのも仕方のない話であった。


「迂闊に入れば気運で汚染され、敵の操り人形になりかねん。死霊騎士も、元々霊騎士が気運の領域に足を踏み込んだのが原因で精神力が下がり、敵の洗脳とやらに抗えなくなったようでね」


「少しでも気運を取り払って、何が原因なのかを探らないといけないわ。実態がある程度分かるまでの辛抱ね」


 ハーネイトとリリーはそれぞれ今回の作戦の位置づけ及び、今起きている異常事態について原因究明が大切なことだと全員に説明していた。


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