第42話 力に目覚めた2人の学生
「お前は……須佐野、隼人!?何故、こんなところにいるんだ!」
「勝也……俺の力を使って、仇を取ってくれっ!」
「ああ?仇だとぉ?」
勝也は、目の前に現れた亡き友がいきなり何を言い出すかと思えば、自身の仇を取れだという言葉に理解が追い付かず困惑する。
しかしふざけてはいないと瞬時に把握すると、友人の影を見つめ話を聞くことにした。少なくとも大事なことを冗談めいていう奴ではない、そう勝也は友のことを信じていたからであった。
「俺がなぜあの時死んだか、俺は見たんだ、あの化け物を。力を吸われ動けなくなったところに車が突っ込んできたんだ」
「……!そ、そうだったのかよ隼人!」
あれはもう5年前のことか、共に野球チームに入り練習していた親友の須佐野隼人は、目の前で若くして交通事故で先に行ってしまったのであった。
冷たくなっていく友の体を肌で感じ取りどうしようもできなかった勝也は、ある生き物が彼の体に取り付いているのを見てしまった。
そう、それも魂食獣であり、勝也は逃げるそれを追いかけたが逃してしまった。いまだに彼にとって、友の死はショックであり忘れられなかった。それだけ彼との思い出が深かったからのもあり、彼は徐々におかしくなっていったのであった。
「頼む勝也、あんな化け物がいる限り誰もが好きなこともできねえ、みんな死んでしまう。俺の力を、俺の形見と思って受け取ってくれ。あんな思い、誰にもさせたくねえ、勝也!」
そう言うと目の前の影は姿形を変え、学ランを肩に羽織ったような、肌が鋼のような厳つい不良となり勝也の前に現れたのであった。
2人は互いに目を合わせ、勝也は覚悟を決めた。そうだ、共に高みを目指そうとした矢先隼人は帰らぬ人となった。その彼の無念と後悔、そして己自身の不甲斐なさを受け入れ、それをも踏み台にして前に進んでやるという男意義が彼に戦う力を与えたのであった。
「……ああ、分かったぜ。俺に力を貸してくれ」
勝也も具現霊を認識し、無意識のうちに脳内によぎる言葉をおもむろに口に出したのであった。それは鮮那美も同じであり、具現霊とのパスを繋ぐ契約の言葉が紡ぎだされる。
「縁を結び、現世に現霊映し出す者よ。我が名はマスラオ。剛力と拳にて汝を護る者なり!」
「縁を結び、現世に現霊映し出す者よ。我が名はスサノオ。熱情と七刃にて汝を護る者なり!」
こうして九龍と五丈厳もまた、霊量士、現霊士としての能力に目覚めた人となった。
彼らが背後に召喚した具現霊はとてもパワフルであり、九龍と共鳴したマスラオが猛烈なショルダータックルをぶちかまし騎士をガードごと吹き飛ばした。
それに合わせ上空から五丈厳と共にスサノオが手にした厳ついバットで叩き殴る。それをまともに食らった騎士は衝撃に抗えず地面に這いつくばった。
「がはっ、まだよ、生意気な奴ら……っていつの間に!」
「死ねえぃ、小娘がぁ!」
再び立ち上がろうとした霊騎士の背後に迫る影、それは別の死霊騎士であった。
いや、正確には今鮮那美たちが戦っていた相手はゼノンの仲間であるモルガレッタという仮面騎士であった。彼女は死霊騎士のふりをして行動し、敵を引きずり出すため自らを囮にして動いていた。
彼女の目的は叶ったものの、死霊騎士の方が実力が上であった。一撃をかわせないと彼女が思ったその時、彼方からきらりと何かが飛んできた。
「剣雨、涙となりて降り注げ。創金剣術・剣雨」
「がはっ、いつの間に剣が飛んできやがったぁ!」
それはハーネイトの放った創金剣であり、モルガレッタを襲う死霊騎士に対し豪雨のように激しく刺さると吹き飛ばし彼女への攻撃を妨害した。
そう、連絡を受けたハーネイト達が到着したのであった。途中で響たちも合流しており既に具現霊を背後に展開し臨戦態勢である。
「貴様ぁ!何者だ」
「しがない、探偵だよ」
「どこがだ、こんなところにいる奴なんざ普通じゃねえぞ!このザイハム様が、纏めて貴様らを倒す!」
「だろうな、胃腸薬上乗せだ。まあそれはそれとて、弧月流・刃月!」
ハーネイトはすかさず藍染叢雲を抜き、得意の刃月で死霊騎士を遠方から攻撃する。
「吹き飛べ、霊風斬!」
「んの野郎!」
「なんて風圧だ、足がっ!」
その一方で鮮那美と勝也は、死霊騎士の放つ一撃に巻き込まれてしまい大きく吹き飛ばされハーネイトの方に向かっていた。
「翻ろ、紅蓮葬送・紅蓮障壁!」
「ぐっ、何だこの赤い壁は」
「きゃっ、何、これは布?」
「2人とも、よくやってくれた。後はこの私が」
ハーネイトは2人にそう言うと素早く死霊騎士の間合いに入り切り上げる。打ち上げられたそれを響と翼が追撃する。
「剣の五月雨、降り注げ!雨刃斬だ!」
「黒き月の波動、こいつを食らえ、ブラックムーン!!!」
二人の息の合った連携による攻撃が襲い掛かり、直撃を受けた死霊騎士は大分体力を消耗し、大きくよろけていた。
「やるな、しかし向こうは何か奥の手を隠しているようだ。2人とも後退しろ、何か来る!」
「了解しました!」
すると死霊騎士は地面に剣を突き立てた。そうすると続々と彼の周囲に小型から中型の魂食獣が召喚され、一斉に襲い掛かろうとしていた。
「敵が大量に召喚してきた。私があれをやる。みんなは雑魚を蹴散らせ!」
「仕方ないですね、だが練習台にさせてもらおう。来てくれ、ミチザネ」
時枝はミチザネの力を確かめるべく間合いを取ってから彼に指示を出す。
するとミチザネは手にした勺を天に掲げる。とその上空に雷の円輪が発生し、そこから幾つも落雷を放ち魂食獣数匹を射抜く。
「行くわよアイアス!」
「っせーな、言われなくてもやるってよ。さっさと失せな、攻暴七盾!」
間城は口の悪いアイアスに命令を出し、前方に突撃を仕掛ける響たちを援護するため防御障壁をいくつも展開し戦線を支える。
「このくらい!弁天、私に力を」
「了解しました。壊音撃……!」
その間に彩音は精神統一し、弁天と意思を合わせ同じモーションを取り、音叉薙刀から強烈な音の衝撃波を発射し確実に魂食獣を消し飛ばしていく。
「言乃葉、迫るあれを迎撃するんだ!」
「有無、行くぞ!」
彩音の放つ技で敵の防衛網が崩れた瞬間、響は飛び込みながら言乃葉と共に手にしたバトンブレイドを巧みに操り回転斬りを繰り出しまとめて獣たちの体を切り裂いた。
「俺様は漫画の続き読みてえんだよ、ああ、ブッ醸すぜ、菌・霧・舞!!!」
別に俺一人でこの程度片付くのになと思いながら伯爵は、ハーネイトから極力禁止されている菌技、菌霧舞を披露し獣たちの霊量子結合を引きはがし消滅させる。
彼曰く、食べられないものにさほど興味ないのでいまいちやる気ないように見える。それでも圧倒的であった。
「なっ、ほとんどの化け物が一瞬で消えやがった!」
「あれが……あの男の力。やはり兄貴たち、只者じゃねえ!」
五丈厳と九龍は、伯爵が起こした戦技に驚愕していた。あれは明らか人間ができる代物ではない。
もしかして自分たちはいてはいけない、見てはいけないものを見てしまったかと思い動きが止まってしまった。
「動きを止めるな2人とも、囲まれるぞ!」
「なんでお前らはあれを見て平気なんだよ!」
九龍も五丈厳も、ハーネイトたちの戦いぶりに気を呑まれ体が思うように動かない。金縛りかよと五丈厳は気合で立ち上がるも、足の震えを隠せずにいた。
「大丈夫、あの人たちは私の先生だから!」
「わかったわ、じゃあ俺もやるまで!」
「けっ、まあ火の粉は振り払わねえとな、スサノオ、行くぜ!」
響と彩音は伯爵が味方だから安心してと二人に言い、どうにか自身に納得させた五丈厳と九龍は、呼吸を整えて再度わずかに残った獣たちに襲い掛かる。
マスラオが獣を掴み強烈にぶん投げ、それをスサノオが手にしたバットでぶん殴る。この2人の連携は流石だと翼は思い、逃走する獣たちに焔の弾丸シュートをぶちかまし消し飛ばした。
「初めてにしちゃすげえな。俺よりパワフルだぜありゃ」
「ふう、片づけたけどハーネイト先生は!」
「あそこにいるわよ彩音!」
「大丈夫か相棒?」
あの程度のレベルならば一瞬で切り裂けるのに何遊んでいるんだと伯爵は指摘するが、ハーネイトは反論し無駄のない動きで騎士を剣突で吹き飛ばした。
その間、仮面騎士モルガレッタは、少し遠くから彼を見て驚愕していた。
「あの男は本当に何者なのだ。いや、それ以外の奴らもだ。っ、囮になるのもしんどい話だ」
「あの騎士の嬢ちゃんも無茶してやがる。あんな自身を囮にして敵をおびき寄せるのはなあ。相棒、早く止めさせや!」
「軽く相手のデータを取っていただけ。でももういいよ。戦形変化・黒翼斬魔!」
ハーネイトはすかさず戦形変化を使用し、姿を変え変身し、漆黒の悪魔になると6枚の黒き外套翼
(がいとうよく)をはためかせ死霊騎士に突撃するとまるで黒き嵐のように翼を振るいまくり一瞬で敵の体力を大幅に削る。
「これで終わりだ!MF・コメットブローストライク!」
もはや形状維持も困難なほどに傷ついた死霊騎士ザイハムに対し、ハーネイトは無情な最期の一撃を加えた。
そう、突如紫色の円状の門が騎士の真上に現れ、そこから突然巨大な機械の腕が超高速で射出され、騎士の体を圧倒的な質量による一撃で潰したのであった。




