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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第37話 新拠点移転開始!


「やっと、あのホテルに移れるのか。……ここにはしばらくお世話になったな」


 3月の初旬に入るこの頃、ようやく新拠点のホテルの工事が終わり、事務所を移すことにしたハーネイト。今日は土曜のため、午後から作業を手伝ってくれる響たちを待ちながら、事務所内にある荷物を片付けていた。もっとも彼の片づけははたから見れば唖然とするものであった。

 

 そう、彼は荷物に手を触れる度その荷物を消滅させていた。本当に消滅させたわけではなく、彼によると次元の狭間なるところに一時的に保管するという。

 

 事務所にあった荷物を全てを整理し、伯爵と協力して手早く部屋の中を掃除すると、ビルの3階に住むとある老人の元まで足を運んだ。


「すみません、ハーネイトです」


「来たか、若いの。いよいよじゃな、寂しいのう」


「重さん、短い間でしたが部屋を貸して頂き、本当にありがとうございました」


 この老人は波多重雄といい、彼らがここにきてすぐに出会った人である。そしてこの老人にとって目の前にいる2人の若い男は恩人でもある。


 重雄はハーネイトたちに初めて助けられた人であり、魂食獣の餌食になるところを救われたという。


 重雄はこのビルの管理者でもあり事情を話したハーネイト達に理解を示し部屋の一角を条件付きで貸与したのであった。最初彼は2人を不審がるも、その後の振る舞いや礼儀正しさなどに好感を持ち、性格の良い青年だと認識した重雄は何かと彼らの手助けをしていたという。


「いやいや、こちらこそ命を助けられた身じゃ。また、何かあったら来なさい、若人よ」


「はい、何かあれば顔を出しますよ」


「そうか、楽しみにしとるぞ。いつでもお主らの大好きなものを用意しておこうかね」

はは、ありがたいですね。……ありがとうございました、重雄さん!」


「おう、気を付けての。ハーネイト、伯爵殿よ」


 そうして2人はもう一度お礼をして、部屋を後にしてからビルの外に出た。しばらく道を歩き、周囲を探りつつ先に出ていたリリーと合流し、響たちが待っている学園前のカフェに足を運ぶ。


「ハーネイトさん、あれ、事務所の荷物は?」


「ああ、それならある方法で格納している。安心したまえ」


「そ、そうなのですか。……いよいよですね」


「そうだな。これで君たちにより実践的な技術を教えられる。一流の霊量士、現霊士にしてあげるからね」


 響と彩音、翼はそれぞれ手に道具を持ちながら彼らを待っていた。そして駅の方角に足を進めて高架下を抜け、春花駅まで向かう。


「駅前で大和さんが待っています。行きましょう」


「そうだな、急ごうか」


 駅前でハーネイトたちは大和と合流した。周りを行きかう人たちが時折ハーネイトと伯爵の顔を見ながら通り過ぎる。それを気にせずハーネイトは大和と話をする。


「移転の準備はできたかい?2人とも」


「ああ、問題ないぜ、へへっ」


「手早くやろう」


 春花駅の北西にある新たな拠点、ホテル・ザ・ハルバナに向かう。行きかう人混みの中を通り抜け、5分ほど歩いてホテルの前まで着いた。


「これが、ホテル・ザ・ハルバナか。改めて見ると、荘厳な感じだ」


「凄く大きいわね。よく駅の割と近くに土地を用意できたわと思うわ」


「一応元々別の会社がこのホテルを経営していたらしいからねー」


「わっ、間城来ていたの?」


「そうよ、話を聞いて駆けつけてきたわ」


 巨大なホテルの外観を見物している彼らに、後ろから声をかけてきた間城と時枝。彼らも響たちからの連絡を聞いて駆けつけたという。


「そうだ、この俺も来た」


「時枝もか」


「何だ、悪いのか?移転の話は聞いていたしな。しかし地下に事務所とか、それでいいのか」


 時枝は、何故敢えて地下に事務所を作るのか疑問に思い口に出した。


「それで構わない。探偵の仕事といっても、私たちは異界の住民絡みだったり霊的な物に関する事件が基本的なものだし、何より秘密基地みたいで私は好きだよ。一応表向きはよくある探偵事務所ということにしておくけどね。人探しや追跡調査は得意なのだよ」


 それについてハーネイトは、自身の仕事は探偵と言っても実質やっていることは何でも屋に近く、扱う事件も特殊であり、また地下だと隠れやすいといった個人的な理由も述べ説明した。


 一応、探偵業務として間に、一般人向けに人探しや何でも屋、トラブル解決なども表向きとして行っていくことをハーネイトは皆に説明した。


「まあ、わからなくはないな」


 時枝は彼の話を聞き、自分も確かに地下施設には興奮を覚える節があるためそれに理解を示した。


「場合によっては人探しや尾行などもやるけどな」


「そういや、ハーネイトさんは故郷でも同じような仕事をしていたのですか?」


「そうだ」


「その故郷でも、すごそうな仕事してそうね。てか、どこの出身なの?」


「え、いや、その……そうだな。確かに仕事は探偵というよりは、何でも屋に近かった」


「そうなのか、それで生まれがどこなのか、話す気はなさそうだが……」


  時枝の質問に困惑しつつも、何をしていたかを淡々と話すハーネイト。探偵とはもはや名ばかりに、要人の護衛から国家間の仲裁、挙句の果てに星をも脅かす存在と戦い世界を守る、そういった話を聞いた時枝たちはすべてを把握し理解することができなかった。また間城は話に加わり彼の出自について聞き出そうとしたがはぐらかされ、少々がっかりしていた。


「話しても、どうも信じてもらえないからな……故郷とか」


「それって、どういう意味なの?」


「それは……」


 仕方ないと言わんばかりに、ハーネイトはため息をついてから間城たちに自分らがどの出身かを明かしたのであった。もちろん響たちは知っている内容である。


「え、えええええええ!?」


「確かに、普通の人間は8,9割信じない話だ。俺はもうそういうところだろうなと思っていたが」


「そうでないと、そこの伯爵さんはともかくハーネイト先生が所々おかしい理由の説明がつかないわ」


「おーい、さり気に、ひどいこと言っていないか彩音」


「でも、事実ですよね?別の世界から来たってのは」


 今まで思っていたことを彩音は指摘しながら、くすっと笑いハーネイトの顔を見る。それを聞いた彼はやや不機嫌そうな顔をしながらそういうも、事実が故に反論がそれ以上できなかった。


「はあ、そうだよ。その通り、私は別世界から来たのだ。確かに故郷には地球から多くの人が流れ着いて、そこで文明、文化を彼らは育んできた。その影響で私たちも、君たちの話す言葉と同じものでやり取りできるわけだからな」


「んだけどな、無論法律とか、細けえルールとか、文化レベルとか違いが出てくるじゃんよ。だからまだ疎いところもあるし、馴染めていないんだよ相棒は」


 伯爵は自分のことを棚に上げ、異世界出身のハーネイトは所々何かが抜けていたり、詰めが甘いところがあるといいつつ、ハーネイトの脇腹を軽く小突く。


「仕方ないじゃないか、こんなに違うなんて思わなかったし。空気自体はさほど変わらないけれど、でも違和感もするし、まだどこか慣れないよ」


「そこは、俺たちでフォローするしかないだろう。ああ、あと換金の方は私に任せてくれ、ハーネイト」


「ええ、大和さん。あとで金塊を用意しておきますね」


「ああ、例の方法で作った奴だな。任せてくれ」


「金塊?」


 既に響たちはハーネイトが物質を霊量子で作り出せることを知っていたが、それを知らない時枝と間城は反応し、それがどういうことかを聞き出そうとする。それに響たちが説明をした。


「ハーネイトさんは、自在に金属を生み出せるんだ」


「な、それって相当すごいんじゃないのか?」


「てことはいつでもお金作れるの?すっごーい!」


 その話を聞いて、間城と時枝は予想通り、相当驚いていた。しかしあり得ないだろうという表情も見せていた。


「それはそうなんだが、あまり作りすぎると価値が落ちるからね。市場を見て適切にやろう。レアメタルとか売れると資金調達美味しいよねえ」


「そりゃそうだろうな。んで、まずはホテルの中に入ろう」


 大和はそのあまりにも異能な力にまだ驚いていた。けれどそれだけ彼が、力を持つ人たちの中でも特殊なのだろうと認識していた。それから彼はホテルの中に入るように彼らに促したのであった。


「何と豪勢な、私が出資したホテルといい勝負をしている」


「こいつはすげえな。こことか金ぴかだぜ」


「流石、刈谷一族だな。……日本を実質牛耳っている多企業複合体の11社の中で、かなりの影響力を持つだけのことはあるな」


 内装や置かれている設備や家具などを見渡し、その質の高さにハーネイトは驚いていた。自身も仕事の間に出資をしてあるホテル兼事務所となるウルシュトラというホテルを経営していたが、それに匹敵する良いつくりをしていたため感嘆していた。


 一方で大和は、ぼさっとつぶやきながら亜里沙の父、宗次郎の角界における影響力の強さに改めて圧巻されていた。


「お待ちしていました、ハーネイト様」


「亜里沙か、さっそく部屋の案内を頼む」


「ええ、あのエレベーターに乗りましょう、皆さんも来てください」



 そうしていると、奥の方から制服姿の亜里沙が歩いて向かってくると彼らに一礼し、大和と少し話をしたのち地下につながるエレベーターに彼らを案内した。

 

 地下2階に着きドアが開くと、そこには亜里沙の父こと刈谷宗次郎が待っていたのであった。


「やあ、待っていたよハーネイト君。先日はご苦労だったね、おかげで不審な出来事もぱたんとなくなったよ、ははは」


「仕事が速いのが私なので」


「頼もしいのう、ささ。これが事務所として提供できる8つの部屋だが、どうだ?」


 ハーネイトたちはそうして案内され、事務所として提供される部屋をそれぞれ見ることにした。


「確かに、これだけ広ければ問題はないか。解析&研究室に応接間と書庫、教室と融合門を置く部屋があればどうにか行けそうだ」


「融合門とは?」


「あとで説明します。さあ、荷物を出すから配置を手伝ってくれ」


 これだけ広く、また堅牢ならばまあ問題はないだろう。いざとなれば強化魔法で部屋を守ればいい。そう考えたハーネイトは、みんなに声をかけたのち次元の狭間から元事務所に置いてあった家具などを召喚し始めたのであった。


「って、何で何もないところからポンポン荷物が」


「マジシャンか何かですか?」


「だから、普通の人じゃないのよ」


「でないと、あんな化け物に対抗できねえって、なあ響」


「ああ、とりあえず今は先生たちの指示を聞きながら動こう」


 そうしててきぱき彼らは指示通りに動き、約1時間半作業を行いいつのまにか時間は既に昼を回っていた。


 仲間や研究に必要な資材を迎え入れるのに必要な融合門の調整はあとで行うとし、それ以外を完璧に設置したり調整したりした彼らは、少し疲れていた。


「ふう、おかげさまで早く完了したよ」


「もうすぐお昼ですね。皆さん、当ホテル2階のレストランに行きましょう。腕利きのシェフが力を振るったご馳走を用意しておりますので」


「そりゃいいな、お腹ぺこぺこだからな」


「なんだか、楽しい感じだわふふふ」


「やったぜ、楽しみだなぁ!」


 事務部屋を出て全員でエレベーターに乗り、2階のレストランに向かう。するとすでにバイキング形式で数々の豪勢な料理が長いテーブルの上に置かれており、響たちは目の色を変えて喜んでいた。


 それから彼らは、普段食べることのないような料理の数々を堪能しながら、ハーネイトたちと行動を共にしてよかったなと心から実感していた。


「どうですか、気に入っていただけましたか?」


「そうだな、確かにいいが一応ホテル内の施設を全て案内していただけるとありがたい。私も使わせてもらいたいからな」


「ええ、承りましたわ」


「そういえば、ハーネイトよ。使用人は必要であるか?」


 亜里沙の父はハーネイトの要求を聞き入れたうえで専属の使用人、あるいは執事が必要か尋ねた。


「うーん、私の直接の部下を呼んできますがいるにこしたことはないですね」


「うむ、手配しておこう。私たちの一族には霊感知に優れた部下が多いのでな。それと貴方にも部下が……」


「一応社長で代表で、探偵事務所の所長ですから、私」


「そうだったな。呼んできたときは紹介してくれよ」


 亜里沙の父とハーネイトの会話を聞いていた間城は改めて、この美男子が何者なのか疑問に思っていた。


「さあて……誰をここに呼ぼうか。あと証拠品の解析も……か」


 これでようやく強力な仲間を安全に呼ぶことができる。これからが本番だ、そうハーネイトと伯爵は思いながら、食事を楽しんでいたのであった。

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