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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第33話 新拠点付近の不審な影


 そうして、新たな仲間を加え入れたハーネイトは時枝と間城にも、響たちに渡したのと同じ通信端末ことCデパイサーを授けたのであった。


「これは、腕に装着するものか」


「そうだ。霊量子の出力調整を補助する上に、通信や記録が容易に行える能力者限定の装備、Cデパイサーという。まあ、普通の人でも通信機器としては使えるようにしているけど」


「中々デザインがいいな。しかもつけていないように見せることもできるのか」


「滅茶苦茶頑丈なガントレット、って感じかなこれは?」


 机に置かれた腕に着けるPCのような装備。それをそれぞれ手に取りじっくりと観察する。


 そして太陽のような紋章がついた部分を触るとパカッと開き、2つの画面が現れた。それからハーネイトに指示されるまま2人はボタンを押すと電源が入り、いくつかの項目が現れた。


 それは彼らの持つスマートフォンと何ら変わらないほどのものであったが、中身はそれ以上の代物であった。


「これ、貴方が作ったのですか?」


「あ、ああ。正確には友達や研究者、他の能力者と合わせて作り出した技術の結晶だ」


「そうなんですね。……正直びっくりです」


「そうかい、それと説明はそのボタンを押せば大体確認できる」


 このようなものを目の前にいる若い男が作ったことに驚きを隠せずにいた。そして装置について10分ほど説明を受ける。異世界の技術がこれほど高いとは思わず、時枝と間城はいつも以上に真剣に内容を聞いた。


「これは、ホログラム?この結晶の部分から映像が出るのね」


「ただの通信端末ではないな。……高そうだなこれ」


「ふふ、無くすなよ2人とも。私が直接製造しているが故、あまり数がないのでね」


「本当に何者なんですかハーネイトさん?探偵なのか開発研究者なのか、うーん」


 本当にこの人は一体何なのだろう、活動自体は調査や証拠集めなど、探偵とか警察がやることをしているのにそれ以外でも秀でているところがある、そう思った間城はCデパイサーを触りながら機能を確かめていた。


「元々何でも屋を営んでいてね。探偵業務もしているだけのことだ。……とにかく、2人は基礎的な修業が必要だ。しばらくはそれをつけながら、さっき感じた霊量子の流れを感じ続ける訓練をしていてくれ。そうすれば長時間君たち自身の具現霊を呼び出しても負荷が減る」


「了解した、ハーネイトさん」


「分かったわ、先生」


 そうして、今日の分の説明を終え、自宅で瞑想しながらイメージをし続けるようにアドバイスをした。


 これは自身も内なる力と向き合う際に行った修行の一つであり、これを繰り返すことで迅速にイメージを形にし呼び出すことができるようになる。つまり無意識に設計図から何かを作る練習をしろというものであった。


「今日はもう帰りなさい。それと学業を優先してくれよ君たち。私たちの調査の補助が当分の仕事になるだろうし、新拠点ができるまでは指導が難しいからな。都合が悪い時は連絡を入れてくれればそれでいい。じゃあ、また会おう」


「あ、ありがとうございました」


「言われたとおりに、やってみますよ。……それと響たちのことも頼みます」


「ああ」


 彼らを帰した後、伯爵とリリーは外食に行くと言い事務所を出る。その間に宗次郎や亜里沙、大和などから連絡があり応対にあたり、連絡を取り合っていた。


 それらを一通り終えてから彼はあることを考えていた。その矢先2人が帰ってきて、手土産を彼に渡しながら話をする。


「……なんか、彼らには申し訳ない気持ちでいっぱいだ」


「気持ちはわかるがよ、だけどあの連中、霊的能力が高い存在を中心に狙っているじゃねえか」


「だから、身を守るためのあの技術でしょう?ちゃんと教えないとねハーネイト」


「それはわかっている、いるのだがな」


 ハーネイトは今の状況についてあまりよくないと考えていた。響たち高校生たちは今のところ、魂食獣に襲われ傷を負った影響で目覚めた霊量子運用能力を、ハーネイトがそれを制御し、徐々に慣れさせているという状態であり、本来ならば素質のない人がそれを受ければ魂が抜けてしまう可能性もあった。


 それについては今回の事件の傾向がセンスのある人を中心に狙われているためある意味指導面などでは安心はしていたものの、できれば誰も被害にあってほしくない。それが彼の心情であった。そうして話していると、突然Cデパイサーに通信が入ってきた。


「はい、ハーネイト探偵事務所です」


「ハーネイトか、先ほどとは別に頼みたいことがある。実はある依頼を受けて欲しいのだが」


「何があったのですか?」


 電話の主は亜里沙の父、宗次郎であった。声の状態やしゃべり方からどうやら緊急事態のようであることをすぐに察し、何があったのか話をし始めた。


「ホテルの敷地に妙な鹿の霊がいると?」


「ああ、それがどうも妙でな。しかも作業員も見ているという」


「そうですか、今日の夜調査に向かいます」


「済まないね。亜里沙もあの事件の後まだ調子がおかしいというか、死んだ兄の声が聞こえると言ってな」


「そちらの件も見てみましょうか」


 どうもホテルの敷地及びその周辺で光る鹿のような生物を見つけたと工事作業員や彼本人が見つけたという。もしも魂食獣だとしたら作業員などが危ないため、今日の夜に向かうと彼に告げ、更に付け加え、亜里沙が霊の事件後から様子が少しおかしいと彼に話す。


「何?それは誘拐事件の前からですか?はあ、それは気になりますね」


「娘いわく、昔から何かが聞こえていたがあの事件の後からはっきりと聞こえるようになったと」


「そうですか、ホテルの件が片付き次第すぐ彼女の相談に乗りましょう」


「よろしく頼むぞハーネイト君」


 そう宗次郎と約束し、電話を切ると予定について2人に伝える。


「伯爵、そういうわけで今回は私がホテルの敷地をうろつく怪しい霊を調べる。伯爵とリリーは市内の偵察を。可能な限り異世界浸蝕現象について他に罠があるところがあるか調べてきてほしいのと、装置をもし見つけたら写真など証拠を確保して」


「わかったよ。ったく、人使いが荒いぜ」


「響君たちはどうするの?」


「彼らには新たな任務を言い渡す。……また魂食獣による被害者が出ている。それに対処するため討伐任務に参加してもらおうかと」


「けれどまだ鍛錬が足りないわ。あのグリガーという奴にもてこずっていたじゃない」


 そうして命令を出すも、リリーはグリガーと戦って苦戦していた響たちを任務に出して大丈夫なのかと尋ね、それについて伯爵が援護に入ればよいと伝える。

 

「だから伯爵が補佐に入れば問題ないだろう。血徒が絡んでいるかもならば尚のことだ。敵を見つけ次第、遠慮なくやれ」


「了解了解、しっかしこんな時、相棒のメイドと執事がいればあれなのにな」


「呼びたいんだけどね、彼らは彼らで目立ちすぎるし」


 手加減はいらないと言われ、やってやろうかと意気込む伯爵。そしてぼやきながら机の上にあるお茶を手に取り口に運ぶ。彼の言うハーネイトの部下とは、1人で1国、いや今は星すらもをたやすく滅ぼすほどの実力を持つ4人、シャムロック、ミロク、ミレイシア、サインという人物である。


 その4人に、伯爵とエヴィラ、エレクトリールと女性を足した計7名を通称「7星皇」と世に、全員が結構問題のある人というか、落ち着いた性格のミロクを除いて好戦的な人が多く、別にいる仲間と合わせて頭痛の種でもあった。


 しかし直属の部下こと特務1課に属する者全員が特殊な能力持ちのため、誰一人として欠けることの許されない、特別な存在でもあった。


「まあ、それも拠点が正式にできるまで辛抱だよな。ミレイシアがいれば俺の代わりになるんだがよ」


「伯爵にしかできないことがたくさんあるだろ?血徒やそれ以外の微生界人の探知は私もそこまで得意ではないし」


 特に伯爵は、ミレイシアという女性メイドさえ来てくれれば、情報収集を代わりにやってくれるだろうにと期待していた。


 彼女は魔導人形師であり、数千人単位で自立型の機械人形を指揮し、情報収集から大軍での戦闘までそつなくこなす恐ろしい魔女であるが、実はヴィダールと縁のある存在でもありハーネイトの目標に掲げる、優しくて強きモナークという言葉に惹かれ行動を共にするようになった経緯を持つ部下である。


「へっ、ちげえねえ」


「本当に、微生界人というのも怖いわね。対処できる存在がろくにいないわけだし、伯爵に限っては特殊中の特殊だもんね」


「正直どう伯爵のことを説明したらいいか分からん時はある」


「まあ適当にやってくれよ。んじゃそろそろやるかね」


 しかしリリーは伯爵の方が誰よりも強力だといい、彼を笑わせる。その後各自作戦を行うため、ハーネイトはホテルに向かい、伯爵とリリーは響たちに指令を出してから事務所を後にしたのであった。


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