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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第262話 血徒たちの思惑


 そのころ、場面は切り替わり逃走した血徒らは別の拠点にて集まり話をしていた。彼らが今いる拠点は、大昔闘技場として使われていた建造物であり、周辺にはすでに廃墟となった、森林化が大分進んだ、古い街の名残がある。その街の地下に広大な石造りのステージがあり、その中央に集まったレプトスピラ系微世界人及びツヴェルクロナ、ビオゲネス、ファゴサイン。更に少し遅れて、スフティスが到着する。すると早速ビオゲネスは駆け寄り、彼にあることについて問うのであった。


「しかし、どういうつもりだスフティス。何を考えている」


「そうですねえ、あの女神の息子に力を注げば、あの放浪している神々はそちらに意識を向け近づいてくる。後はお分かりですな?」


「ああ、そういうことか。確かに、あの男は女神ソラの権能を放つものだ。だからこそ、いら立ちを隠せなかった」


「あの原初にして究極の兵器、そのカギに必要なものか。確かに、割がいいかもしれんな」


 スフティスの返答を聞いた、その場にいた血徒たち全員は、他の血徒衆よりも早く目的を達成できる方法を見つけたことに歓喜し、そのための布石を打たなければならないという共通の認識を持った。長年、ある存在を解放するために鍵を探してきたが残り1つがどうしても見つからず、困り果てていたという。そこで血徒は各分野に精通する者らでチームを作り出し、それぞれの視点からのアプローチで別に封印を解く方法を探していたという。


 このスフティス率いる血装技術衆は、独自に情報網を持ちいち早くハーネイトとその仲間に関する情報を掴んでいた。


 その中で、サルモネラ伯爵という細菌系微生界人が最後のカギを持っていることを知ることができた。その隣にいる男もまた、人ならざる存在であり、ヴィダール最高神の縁者でことも改めて確認した上で、どう転んでも利があるような作戦を考えたのであった。


「馬鹿正直に果てしないほど時間のかかる源力集めよりも、あのヴィダールの者に丸投げして、漁夫の利を得るなどというやり方もありますがねえ」


「……正直複雑だけど、あのPの力さえあれば、ね」


「一番は、伯爵というサルモネラ家の末裔が、鍵を手にしPの力で全てのヴィディアル、ヴィダールを倒しつくすというのが楽で成功率の高い筋書きですがねえ」


「だけど、あの裏切り者。どこかおかしいわ。知らないっていうのが、嘘には感じられない。鍵の存在は一族だけが知っているし、聞かされているはず」


「何か理由があるとしか思えねえな。だが、この事実は俺らしか知らねえ。優位に立てるぞ」


「原初にして終焉をもたらす究極兵器、Pの力。我らが手に入れ野望を果たすまでだ」


 スフティスは、仲間のやり取りを見て少しづつ何らかの精神汚染が広まっているような状態を危惧していた。そうじゃない。確かにあれに勝つには第1世代神造兵器の力が要る。だがそれを適切に運用できるのはごく限られた存在なのだと考察していた彼は、ある日を境に豹変してしまった仲間たちをどうやって元に戻せばいいのか苦悩していた。


 その後、一度解散しそれぞれの持ち部屋に移動した血徒らは、他の仲間と組み手をしたり、休息をとったりと好きにしていた。その中でスフティスは一人思念にふける。それは、代々細菌界にて封印師の一族を担うサルモネラ家に関することであった。


「……サルモネラ伯爵、ですか。貴方は確かにあれを解放するカギを持っている。一度貴方が動けば、全員が力を得て女神ソラを倒せる。だがそれを知らないということは、彼に何か秘密がある、のかもしれないですねえ」


 彼と直接会って、分かったことがある。それは自身の想定を超えたものであり計画の見直しを余儀なくされるほどであった。


 彼は、あれに関して本来の正式な後継者ではない。それは伯爵を構成する微生物のベースがサルモネラ系ではなく、ガセリ系だからである。しかし鍵を管理し、あれを体に収め完全制御できる証を所持しているのは明確である。


 ならばなぜ、彼は自身の家のことに関して知らないことが多すぎるのだろうか。それについて知り、彼を真の後継者に導くことこそが、第2世代神造兵器の未来、いや、それ以外の兵器、生物らにとっての今後を安定させるものになると彼は考えた。


 まだ不確定要素も多いところもあるが、スフティスは新たな希望に胸を躍らせ、作戦を構築していたのであった。


 しかし、彼は彼で仲間に隠していることがある。それはあのルべオラがどうやってハーネイトに近づきU=ONEになったかを誰にも話していないことである。


 正直そんな方法でなれるとは思ってなかったのだが、よく考えればハーネイトはソラの権能を多く宿しているだけに、彼の想いとその力が自分たち微生界人の情報すら書き換えて、誰もが求めていた完全なる生命、存在に至れる可能性はとても高い、そう思ったスフティスは何としてでも彼に近づきたいと考えていた。


 それと彼自身の性格や振る舞い、思想などに好感を抱き、それが血徒の活動により何処か曲がってしまったことを悔やんでいたと言う。



「いよいよ奴らも動き出したのう」


「どう動きますかね、ルべオラ様」


 そんな中、桃京のある高層ビルの屋上では、町を見下ろしながら観察しているルべオラたちがいた。再び起きた大事件、血徒はあの赤き災星のこの地球へ最接近する時を窺い、用意周到に準備してきた。その事実を知った彼女らは、少しでも被害を減らそうと考えていた。


「そりゃもう、奴等の動きを完全に掴むまでよアントラックス」


「そうっすか、あの事件の再来を起こしているってことは」


「あの災星を迎え入れる準備を今あいつらはしているわけと」

 

 自分たちにも、東の空に見える巨大な赤い星は見える。それは、明らかに人類はおろかこの世界の生物全てに対する災いを与える試練を与えにやって来た者。血徒は恐らく、それすらも利用して、Pという存在の封印を解除するのではないかとルべオラたちは考えていた。


「あんたたちも手伝いなさいよ。協力するんでしょ?」


「勿論だとも」


「Pの解放なしに、伝承の存在に至れることを教えていかなければな」


 そんな彼女たちの背後にいた、少し距離を取るエヴィラ侯爵は、3人に対し声をかける。落とし前はつけなければならない。


 自分たちが蒔いた種ならば、どうにかして血徒の恐るべき計画を止めなければならない。ここからが大事だとアントラックスは言い、巨大化した血徒の組織の全容を暴いていかなければならないと4人は決意したのであった。



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