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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第260話 血徒スフティスの手紙


「えぇ……思っていた以上に俗っぽいといいますか、人間的といいますか。ソラの権能を持ちながら、それでいて誰かのために尽くし救う者。自身の気持ちをぐっと抑えて誰かのために戦う者。……貴方が今あの女神を倒して、優しく強き王として君臨し続ける覚悟があるなら血徒を今すぐ脱退します」


「どういうことだ、スフティス」


「貴方こそヴィダールの一族の王にふさわしい心を持っていると。伯爵とエヴィラ、ルべオラ様がU=ONEになったのも、貴方が力を正しく使い、苦しむ者のために全力で向き合ったからです。それだけ、彼女の力は強大なのです」


 かねてから、活動を妨害している存在がいることに気付いて独自に調査をしていたスフティスだったが、その張本人がこのような少し気の抜けた、怪物らしさがみじんも感じられない存在であることに驚きながらも、その体の中にある凄まじいエネルギー量と神気から、女神ソラに縁のある者であることは間違いないと判断した。


 また、その女神の力を持ちながらも決して傲慢ではなく、むしろ少し自信がないように振舞い、けれど誰かのために懸命に向き合い解決して助けていくと言う姿勢に凄く共感を覚えたスフティスは、彼こそが真に大切な存在であり立場の問題がなければ彼の元に仕えたいと言う姿勢を見せたのであった。


 それと、U=ONEの力を持てる者が増えたのも、ハーネイトの本来の性格が起こした奇跡だと称賛したのであった。


「敵である血徒にそう言われてもな。それに、親である女神ソラを今度こそ倒すためには……」


 ハーネイトは恨み節を言うようにスフティスに言葉を返すが、その一言を聞いた途端、スフティスの表情が真剣なものになる。それは、自分たちが掲げる最終的な目標が、この人ならざる神の子と同じ神殺しであったためである。

 

「相棒、早くこいつらぶっ倒そうぜ」


「そう言われるとは心外だな。そもそも貴様の一族があれを解放していれば今頃他の生物に依存せず生きていられたんだがなあ」


「というか、お前がU=ONE……確かに、さっきのは凄まじかったがな」


「Pの力がなくてもなれるのか?」


「上の連中はいざ知らず、俺らはU=ONEってのになれればそれでいい」


 2人のやり取りを見ていた伯爵は、いつになく不満そうにハーネイトに詰め寄り、早く倒そうと訴えかけてきた。だが、ハーネイトは今このスフティスらを倒せば敵の更なる情報を得ることが難しいと判断していた。


 ならば今は泳がせておき、まとめて一網打尽にしてやると考えていた。また、スフティスが数名の微生界人が既にU=ONEの域に足を踏み入れていることに他の仲間たちがかなり動揺する。


 また、イクテロへモウスは伯爵の言葉に憤慨し、王族としての責務を放棄した伯爵に恨み節をぶつける。実は微生界人の中でもレプトスピラ族は血徒の侵攻により捕らえられ、能力の特性上生かされたうえで仲間に加わるように脅されていた経緯があり、あるアイテムさえあれば血徒に後れを取ることなく返り討ちにできていたという。


 だがそのアイテムの使用許可及び封印解除をサルモネラ家が行わなかったため血徒の軍門に下り、あまり良い待遇ではない状態を強いられている。


「何のことだ?あれ、ってよぉ」


「しらばっくれるつもりか、ええ?」


「やめてよ、それよりも別に方法があるなら!」


「おほん、皆さん。上から物音がしませんかね」


「何?これは、人間?」


 伯爵は何故こうも恨まれるのか理解できずに水掛け論のごとく言い合う。その時、地上部から侵入した現霊士たちとヴラディミールが地下大部屋にたどり着いたのであった。


「先生!ご無事でしたか!」


「ちょ、あれって」


「血徒か、お前ら覚悟できてんだろうなあ?あああ?」


「これ以上何かするなら、容赦できないネ!」


 全員がUAを構え、攻撃態勢に入る。だがハーネイトは迂闊に近づくなと制止する。


「おやおや、客人がこんなに」


「むぅ、あれほどの妨害をどうやって……っ!」


「まずいわね、ここはもう放棄した方がいいわ」


「仕方ないですねえ、もう少しお話をしたかったのですが」


 血徒ら全員が、施設内にある幾つもの妨害を乗り越えたどり着いた人間たちに驚く。こうなってはここにいる意味はない。まだ切り札はいくつもある、だから今は引いて形勢を立て直そう、そういう考えを瞬時に彼らは共有し、スフティスは手に握っていたスイッチを押す。すると部屋の中央に突然異界亀裂が発生したのであった。


「戦略的撤退、と言いましょうか。貴方たちの勝ちですよ、今回は」


「まて、スフティスとやら。貴様らの目的だけは聞かせてもらうぞ!あれだけではないだろう?」


「んんん、今はそれをすべて明かすことはできないのです。しかし、計画が果たされればあらゆる世界は理不尽に、気付かず消え去ることは今後ない。とだけ言っておきます。また近いうちに会うでしょう。それまで、力を更につけるのです。女神の息子さん、いえ、ヴィダールの王よ」


「私らに喧嘩を売った後悔、死ぬほど味合わせてあげます」


「まあまあ、落ち着くのです。後で会議でもしましょうか。それと、あの血壁は今消しました。色々ご迷惑をおかけいたしましたが貴方のようなお方がいるならば、悲願成就も早いでしょう」


 スフティスは至って自分のペースを崩さず、余裕ありげに意味深な言葉を投げかける。言いたそうだが、言わない。そういう風に受け止めたハーネイトは表情をさらに険しくする。それに対し殺意むき出しの血徒らは、今度こそ確実に倒すと意気込むもスフティスになだめられ、ハーネイト及び伯爵に対し期待のまなざしを向ける。


「何?どういうことだ、血徒スフティス!」


「んんんん、どう考察しても構いませんが……そうですねえ。貴方とそこにいるヴィダールの力を得た人間たちの働き次第でこの事件の結末が、変わると思いますぞ?では、これを受け取ってください」


 ハーネイトはいつも以上に語気を強めてスフティスに迫るが、彼は飄々とした感じで受けごたえながら、手にした封筒をハーネイトに投擲し渡したのであった。


「これは、手紙か?」


「これから皆さんがやるべきことと、大切な情報を添付してあります。もっとも、私は下位の第一級血徒なのですべてを知っているわけではないのがもどかしいですがね。では期待していますよ。勇気ある者たちよ」


 そう言い放ち、彼らは異界亀裂に吸い込まれるかのように、あっという間に姿を消してしまったのであった。


「……一体、何なのだあれは。血徒の中にも奇妙なものがいるのだな」


「まるで、私たちを裏から操るみたいな感じ。気分良くないわね」


「血徒、か。謎の多い存在だが倒し甲斐はありそうだな、フフフフフ」 


「全く、これだからバトルジャンキーは。だが、こちらに肩入れしようといわんばかりの振る舞いは見逃せないぞ全く」


 一体、敵である血徒は何をもくろんでいるのか。そしてやり取りの中でハーネイトと伯爵、そして自身らも注目されていることと何故か期待されていること。その事実をこの場にいたほとんどの人は受け止めきれずにいた。その間にハーネイトは手紙の封を開け、中に入っていた物を確認する。するとその場で固まってしまったのであった。


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