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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第256話 血徒スフティスVS地上攻略班


 それはあっという間に、一つの武装鎧、彼らが言うには血衣魔装と呼ぶものになった。右腕には盾に7つの切れ込みのある箱がスライド変形し、巨大な砲銃に、左腕には様々な武装が組み込まれたような巨大な盾、背中にはブースターを4基、アンカーとして利用されるとげのついた尾部。更に違う形態を見た現霊士たちは一歩引きさがりながら敵の出方をうかがう。


「こ、これはあの時の」


「だが形態がまるで違う。ツヴェルクロナとかいうやつのとは全く違うぞ」


「全員警戒を厳としろ!」


 異様なまがまがしさを秘めた敵の新技術は、戦闘慣れしているスカーファでさえ息をのむような代物である。だが、変身の隙を突いて文香と九龍は死角となる後方にすばやく移動し、急襲する。


「その隙,突かせてもらうわ!」


「今度はそうはいかねえよぉ!ぶっ潰すぜマスラオウ!」


 一瞬対応が遅れた、今ならいけると踏んだ二人だったが、スフティスは瞬時に強力な血のバリアを自身の周囲に展開する。



「単純な突撃でやすやすと倒せると思うな!血反盾ブラッドリーカウンター!」


「ぎゃっ!畜生ぅ!」


「キャアアア!」


 バリアに攻撃を防がれ、その反動で吹き飛ばされる2人を剛人と文次郎は素早く受け止める。


「ふう、間一髪か」


「た、助かったぜ剛人さんよ」


「無策な突撃はやめろ、娘よ。敵の動きを知れ」


「く、悔しいっ!あの左腕の盾、気を付けてパピー」


 カウンターを受けた二人は、すぐにその発生源がスフティスの左腕に装備した盾にあることを見抜き教える。その間にも響や韋車、スカーファらが同時に攻撃を仕掛けるが、スフティスはひたすら防御に回り、その影響でほとんどダメージを負ってはいなかった。


「どうしました?全員でかかってきてもよいのですよ?」


「へっ、防御ばかりじゃ俺を止められねえ!」


「覚悟してもらうわ、アイアス、行くわよ!」


 スフティスの挑発に、防御担当の2人まで攻勢に回ろうとするが、それは明確に罠であった。


「フッ、挑発に迂闊に乗るな!!!血闘術・放血砲!!!」


 全員で突撃を仕掛けようとしたその時、スフティスは右腕に装着した巨大な大砲を向け、強力な赤い光閃による一撃を前面に放つ。


「っ!全員左右によけろ!」


「ガアアアアッ!」


「がはっ、なんて、威力なんだ。先生の破天奔流とあまり変わらないほどだ」


 大和のとっさな指示で左右にそれぞれ回避したものの、五丈厳や翼、瞬麗と渡野にジェニファーが衝撃波で吹き飛ばされ、地面に体を打ち付ける。幸いPAの防護機能が働いているためすぐに起き上がれるほどにはダメージを負っていないものの、少しよろめきながら再度武器を構える。


「こうなったら、CPFで拘束、その隙に全員総攻撃を仕掛けるしかないぞ」


「やはりそれしかないですか、宗像さん」


「だが、試す価値はあるさ。CPF・鎖天牢座!!!」


「ぬ!これは鎖、いや、ただの鎖ではない」


 宗像は田村に対しそう指示を出し、自身は素早くCデパイサーにCPFを装填し発動する。


「後衛はCPF、前衛で一斉攻撃だ!」


「分かったぜ親父!」


「僕らが援護します。CPF・三詠装填!CASクォルツ・アヴァンセソルセルリード無明尺鉄壁陣むみょうしゃくてつへきじん


「アヴァンセソルセルリードか、これならやれるか?」


 時枝は最近見つけたCAS(クォルツ・アヴァンセソルセルリード)の1つ、無明尺鉄壁陣を発動させ、鉄の布と魔法陣にてスフティスを強力に拘束する。


「微生物の化け物が、とっととくたばれ!」


「覚悟するんだな、クーフーリン!あれでいくぞ!」


「さっきはよくもやってくれたネ、もう許さない!」


「一気にぶっ潰す、行くぜオラぁ!」


 完全にスフティスは意表を突かれ、体の自由を奪われる。そこにアタッカー勢の総攻撃がさく裂し、大きく吹き飛ばされた彼は変身を解除し地面に膝をつける。


「ぐっ、少しはやるようですが……そんな調子では先が心配ですね」


「にしては大分ボロボロじゃねえかあんた」


「なんで敵からそう言われなければならない。何が目的だ吸血鬼!」


「何か勘違いをしていませんかね。吸血鬼、ではないですよ」


 亜蘭はスフティスら血徒のことを吸血鬼だと認識しているうえで話を進めようとする。それは他のメンバーも同じであった。やっていることは血を使って勢力を広げることであり、どう鑑みても吸血鬼以外のイメージがわかない状態であった。


「やっていることは、正に吸血鬼のそれではないかね君は」


「フフフ、まあ貴方方人間の見方で言えばそうかもしれませんが、それよりも私たちは遥か高位に属するもの。ヴィダールという世界を生み出した存在により生み出された手先なのです」


 スフティスは高らかにそう言い自身らの存在についてどういう者かを彼らに教えるが、すでにヴィダールという言葉と微生物人間こと微生界人の成り立ちはハーネイト、伯爵から聞いていたのでさほど驚くことではなかった。


「その素振り、やはり只者ではないですね。失われし伝承、ヴィダールを知る人間など殆どいないのですからね」


「ケッ、手前ら人間を化け物に変えて、何をする気だぁ?」


「何をする気か、ですか。全ては教えられませんがね、あくまで私らはとある存在の抹殺を計画し、それを行うための準備をしているまでです」


「はあ?ぶっ飛んだ話だぜ、正気か貴様」


 五丈厳は恐れることなく、スフティスの喉元に武器を突き出しながら彼に答えを引き出させようとする。だが不敵なスフティスの笑顔は変わることなく、淡々と目的に関して明かすのであった。だが、それがどう人間と関係があるのか分からずさらに五丈厳はいらだちを募らせる。


「ええ、そうですよ。正直目障りといいますか、このままあれに怯えながら生きていくのは耐えられないものでしてね」


 スフティス自身、自身らが作られた存在であり、しかも不完全な生命として生み出したことや、世界に対しまだ可能性を見いだせたからこそあらゆる生き物は生かされているにすぎず、創造主の機嫌、気分次第でどうなるかわからない状態であることを知っている。また、その対象が直接それにより生み出されたもの以外にも及んでいることもしっている。それが彼には許せなかった。


 彼の話を聞いていくうちに、前に彼と遭遇した者たちはあながちうそをついているようには思えず、むしろこちらに手を貸す組織の中でも異端な存在なのではないかという考えを持つ者もいた。


「話もこれくらいにしましょうか」


「今の話は、本当か?スフティス、貴様謀反を起こす気か?」


 そんな中、スフティスの背後から声がする。その声の主は、血徒の一人であった。彼の話を聞いたその血徒は、彼が謀反を起こそうとしていると判断し武器を構える。


「おやおや、盗み聞きはいい趣味ではないですよ」


「貴様ぁ!あのお方が許すと思っているのか?」


「えー、何だか向こうで言い合いしてるんだけど」


「もしかして、本当にあのスフティスというのは……」


「どうだかな亜里沙さんよぉ」


 スフティスと仲間と思われる血徒のやり取りを見ていた現霊士たちは、当然困惑していた。今さっき交戦したこの血徒はまるで何を考えているかわからない。中には亜里沙のようにスフティスの言葉を完全に信用しようと思う者もおり、韋車はどないなってんだといわんばかりに突っ込みを入れる。


「五月蠅いですねえ、では」


「き、貴様っああああ!ぐほぉ、ぐ、ガアアアアアア!!!覚悟しておけよ、スフティス!」


「マジ、かよ。仲間を一撃で」


 突っかかってきた血徒を、スフティスは目にもとまらぬ速さで血剣を突き刺し深手を負わせ撤退させる。それを見てさらに動揺が広がる。


「失礼いたしました。私は、あのお方のやり方に異議を持っています。あらゆる生命体すべてを分解し糧にしても、あれには到底及ばないのです。そんな中、あの女神の力を持った存在を偶然知ったのです」


 スフティスは、自分らの長に関する話を匂わせつつ、そのやり方で事態が解決するわけがないという自身の考えを明らかにする。確かに、今までは血徒4天王のいうことが一番正しいと思っていたが、ある存在を知り考えを改めたことも告げる。犠牲が少ないなら、それに越した方はいい。そう彼は思っていた。


「あのお方?どういうことだ?何を言っている」


「寝ぼけたこと言ってんなら俺がぶっ飛ばすぜ優男」


「貴方方は、あのハーネイトという男に修行をつけてもらったのでしょう?彼ならば、あれを倒してくれるのでしょうねえ」


「何だ、結局他人任せか?」


「フッ、どうとでも言ってくれて構わない。もしもやる気がおありなのでしたら、あるアイテムを渡します」


 何故血徒であるこのスフティスという者が組織としての方針から逸脱した行為を行っているのか、それは彼が非常に勘の鋭い一面があるという理由である。


 明らかに、自分より上の血徒は何者かに軽度から中程度の精神汚染を受けて、誰かに操られているように見える。そう判断したからこそ、いっそのこと代わりに成し遂げてくれる存在を探して丸投げしようということで、リスクの高い提案を響たちに持ち掛けてきたのであった。


「また、会うこともあるでしょう。その時までに返答のほど、聞かせていただきますよ」


 そう言うとスフティスは忽然と姿を消したのであった。なぜ彼がハーネイトの名を知っているかということに響たちは困惑しつつ、スフティスという血徒が何を企んでいるのか皆目見当がつかずしばらくその場に立ち尽くしていた。


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