第254話 血徒拠点攻略戦開始・地下道ルート
ハーネイト一行は防警軍第二大隊に所属する浅村大尉に案内され、地下街に通ずる階段を駆け下り、築条寺と呼ばれる今回の施設への侵入に使用する地下道まで急いで向かう。
「先に、伯爵と私で突撃する。ただ、事前偵察では内部に生体反応はないらしい」
「ということは、既に教団のメンバーは」
「奴らの依り代、あるいは血鬼人と化しているだろうなあ」
「ならば、そいつらが出てこないように俺たちはここを死守するしかないようだ。今の私たちでは彼らにほとんど対抗できない状態です。ひどくもどかしいですが、それでもあれの不死性を無効にできる貴方たちがいることが、今は何よりも希望ですよ」
「あの、防警軍の皆さんはどちらかというと民間人が入ってこられないようにするのが」
「それはそうだが、いざという場合はこちらも応戦しなければならない」
「そうならないように善処します」
先導しながら地下街に逃げ遅れた人がいないかを確認しながら浅村は自身の心境を明かしながらもできることをするまでだといい、ハーネイトは絶対に作戦は成功させると言い彼を安心させる。この間に伯爵は菌探知を再度使い、作戦に悪影響を与える何かがないかを探索していた。
「ここからが例の施設が所有する地下エリアです。ご武運を、皆さん」
「任せとけや。きっちり片付けたるでぇ」
「では、きっちり片付けてきますので、帰りの手配と一般人の保護はお願いします。シノブレードら特務2課、3課の人たちは防警軍本部で待機させてありますので、いざというときは彼らの力も借りてください」
「分かりました、では」
浅村はそうして一礼すると元来た道を戻り別の指令を宇田方から受けていたため一旦それに従うため離脱したのであった。
「っと、久々にこういう感じで行くな」
「内部の状況は……こりゃあかんなあ」
「っ!いきなり手厚い歓迎か!」
地下だからか肌寒く、一応照明はついているものの、薄暗い地下の通路。高さは3mもない、幅も3から4mほどで、何か来れば回避は非常に困難な状態である。
明らかに嫌な気配しかしないのだが、すぐにそれは現れた。前方と後方から血屍人による挟撃だが、全員涼しい顔で速やかに対応に当たる。
「この程度で足止めできる?馬鹿にしているのか?」
「相手がわーるわるだぜぇ!」
「我が刀は、今宵も影を求めておる」
「邪魔者は、こうですよ!」
ハーネイトは前方の敵に対し素早く空中で創金剣を形成し射出、一撃で血屍人5体を撃破し、ミロクとサインが彼の前に飛び出し残りの敵に素早い斬撃と蹴撃を浴びせ瞬時に無力化させる。
後方の敵はシャムロックが囮になり、その背後にいたミレイシア、オフィーリアが迫りくる10体以上の血鬼人をボコボコにして撃破する。その後周囲を確認し、再度道なりに進んでいく。
「だが、この異様な気配は」
「用心しないといけませんわ」
「進んだ先に、絶対いるぜ。まとめてぎったんぎったんにしてやる」
「相手は血徒、どこから来るかわかりません」
「ぐっ、私は地上にいた方がよかったのでは、主殿」
「あー、そうだよな……だが、貴方ほどの火力持ちが地下から襲ってくれば敵は混乱するかと」
「しかたないですなあ、破壊してでも行きますぞ!」
一般的な体格の人間ならば今通っている地下道も頭上がぶつかるだの体幅にひっかかるだのということはそんなにないはずだが、ハーネイト直属の特務一課の中でもシャムロックは2m30cm越えの巨体なため、正直移動しづらいと率直な感想を述べるが、当の主は連れてきた理由を述べたので、仕方なく前進していたのであった。
「しかし、こういう展開だとボルナレロとかロイ首領のほうがいいのだろうか」
「サーチャークラスは確かに便利ですがな」
「無駄口叩くくらいなら敵を倒しなさいよ。ヴァルキュリア隊!前方を遮る奴を打ち抜きなさい!」
「了解です、マイマスター」
ハーネイトは探索に長けたメンバーを連れて行けばよかったなとぼやきながら、的確に血屍人の群れを一閃し、更に創金剣を放ち退ける。
ミレイシアは主であるハーネイトにあきれながらも、眼前に迫る別の血鬼人数体に対し人形兵による攻撃を加えこれを撃破、天井から出現する敵はサインとミロクが仕留め、一番後ろにいるシャムロックが追っ手を気光拳で消滅させる。
そんな中、倉庫らしき部屋を見つけた一行はシャムロックにドアを壊してもらい中に入る。すると目の前には大量の薬か何かが入った袋と、袋詰めを行うための機器があり、思わず全員が驚く。
ここまで大規模な汚染拡大計画を行おうとしていたのかと思うと、場合によっては非常に多くの血徒感染者が発生する可能性があったためハーネイトはひとまずホッとする。
「これが、全部あの魔薬だというのか?しかし、名前だけだな。これは、違法薬物と血徒の眷属を混ぜた感染薬だ。魔法戦争で使われていたのとは違う」
「だろう?これを、奴らはいろんな生物に投与していた、あるいは飲ませたりだまして摂取させたんだろうなあ」
すると部屋の奥の扉が開き、血徒の一人が出てくる。騒がしいと思い確認のために出たのだが、それが運の尽きであった。
「き、貴様ら!何者ごはっ!」
「遅せえ、フッ。ほら、次行くぜ!」
彼は伯爵の指先から放たれた菌を凝縮した弾丸に撃ち抜かれ、その場で倒れたのであった。そうして先に進んで敵をたたくのが先決だと促し一行はすぐに部屋を出ると奥に進んでいく。
そうしている間にも2,3回血屍人などの歓迎を受けるがもちろん瞬殺、そうこうしているうちに、大きく開けた場所にたどり着く。奥行きは広く、部屋の中央には巨大な設置物が鎮座していた。
「ほう、地下にこんなものが。何かの台座みてえだ」
「これは、異界亀裂か?にしては大きすぎるぞ」
「ここまでだ、狼藉者。この地に足を踏み入れるということは、すなわち死あるのみ!」
部屋の奥から、威厳のある老齢の男性の声がする。全員は武器を構えると、その声の主は姿をすっと現したのであった。




