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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第253話 血界破壊作戦の準備


「その血闘術ってのが、血衣というのと関係があるの?」


「そうよ間城。対処するには、向こうよりも強力な力をぶつけて破壊しないといけないわね。パワー勝負が必要よ」


 間城はジュースを飲みながら、エヴィラに伯爵の話したことについて質問する。彼女の話を聞いた間城は、少し悩んでいた。


 それは自分と自分の具現霊はアタッカーを担うほどのパワーはないためである。それに対しエヴィラは、それぞれの役割を理解し果たすことが勝利につながると彼女にアドバイスする。


「ということだ。つーかエヴィラ、もっと情報提供しとけYA!」


「なによ、私だって離れてから長いのよ?新しい技術に関しての情報はとても手に入れづらいわ」


 伯爵の言葉にエヴィラは少しムキになり、ウイルス系の微生界人共通の悩みである探索力の低さについて嘆いていた。


 総じて細菌系の微生界人は他の地域にいる仲間というか眷属を使用したネットワークを使い情報収集が可能であるが、ウイルス系は構造上の問題でこれがうまくできず、長年の悩みであったという。


 これが血徒という組織ができた理由の一つでもあり、強固な結束を結ぶきっかけになったという。


「はいはい、その辺にしておこうね。それで宇田方さん、施設への侵入口は幾つかあるように見えるのですが」


「実は地下道と繋がっている場所が1か所ある。地下街から通じるルートだ。地上部は2か所だが、上の方は抵抗が強いだろう」


 ハーネイトは部屋の中がかなりざわついたため一旦全員に声をかけ、これからの行動について話を切り出した。すると宇田方は伯爵の見つけた施設には地上だけでなく地下街からの侵入が可能であることを伝える。その話を聞いた彩音は作戦の提案をする。

 

「陽動部隊と実働部隊に分けるのがいいのかもしれないわね」


「地下は回避がしづらいのと罠が気になる。ここは私たちでいく方が得策だ。んで地上は響たちに暴れてもらって注目を引きながら戦い、そこにいる新人さんたちに戦い方を改めてみてもらう方がいいかと思う」


 ハーネイトはモニターに映し出されている各地の情報を見ながら、確実に敵を倒すための算段を考え、役割分担をしっかり行い作戦に臨む必要があることを述べた。また、新たな能力者たちに技術を見て盗んでもらうのも悪くないと彼は考えていた。


「また変わった作戦を提示してきたな。だが、先生の言い分にも意味がある」


「そうだよ、私たちは兄貴たちの援護に今回は回った方がいいと思うの」


「文香までそういうか、ちっ……まあ仕方ねえよな。兄貴、しっかりあいつら締め上げてくれよ」


 時枝はハーネイトの意図をいち早くくみ取り、文香も兄貴なりの考えがあると意見に賛同する。


「分かっているさ九龍。私の作戦案に異論もしくは意見を述べたい人はいますか?」


「ハーネイト先生とやら、結局どういうメンバーの振り分けをするのですか?」


「能力によって得意不得意な場面はありますよ?」


 そんな中、一旦別の用事があるといい外に出ていたアイドル組の亜蘭と初音が戻ってきた。話をある程度聞いていた様子で、ハーネイトにどういう流れで作戦を行うのか、それに必要なメンバーを訪ねる。


「いつの間に帰ってきていたんだ、まあいい。そうだな、私と伯爵、エヴィラ。ミロクにサイン、オフィーリア、シャムロック、ミレイシアが地下から潜入、それ以外で地上から侵入してくれ」


「なんか極端な戦力の割り振りだな大将さんよぉ」


「伯爵、まさか外より中にいる敵の方が……あれとか?」


「あ、ああ……まあな。それと敵を逃すわけにはいかねえ。挟み撃ちで混乱させたのに乗じてやる。そういうことだ」


 韋車と大和はハーネイトの案に対し思っていたことを口に出す。それは響たちも同感であった。これに対しハーネイトは、2方面から攻め立てることで敵の不意を付き確実に倒すためにと説明した。だが、話を聞いて納得しない者もいる。


「おい先公、どういうことだぁ?攻撃なら俺の出番だろうがよ」


「あのなあ五丈厳、地下道でど派手に破壊すると色々問題だろうが」


「あと敵が保管している魔薬を押収し、解析しないといけないのでどうしても私たちが地下ルートじゃないといけないわけだ」


 特に攻撃役の主力である五丈厳やスカーファ、翼などが不満そうな感じであったが理由を聞くと全員引き下がる。地下部分の探索は7割程度が伯爵が終わらせている。もう一つの任務をこなすには地上、地下部の連携が不可欠である。


「ケッ、指図は受けねえよ。まあ、全部叩きのめすまでだがな」


「あはは……やるしかないようですね。でも無茶しないでくださいよハーネイト君」


「まあ、俺も教師だ。まだ完全に使いこなせていないところもあるが、戦いの基本ぐらいは見せられる」


「そうだな田村さんよ。俺もだぜ、へへへ。お前ら、俺たちについて来いよ!」


「私は、フフフ。よくわかっているなハーネイト」


「周りの施設への被害は最小限にお願いしますよスカーファさん」


「わしも準備はできておる。そろそろ行くべきではないかの?」


「これ以上、あの連中を野放しにはさせないぞ」


「俺も、いけるぞ」


 すでに皆の士気は高く、いつでもいけるという状態であった。ハーネイトは春花から遠く離れたこの地でも共に戦ってくれる仲間たちに感謝し、一礼する。


「何だ?あのハーネイトという男は何をしようと」


「どうも、あの危険な奴らのアジトを見つけてどうにかするらしい」


「あー、いいかねそこの人たちよ」


 再び賑やかというか騒がしくなる室内、エアハルトら新参者に声をかけるものがいた。それはミロクであり、一礼し自己紹介してから彼らにある事実を教えるのであった。


「おう、何か用なのか?」


「貴方方もまた、運命に導かれ神葬者としての力を手に入れたようですが、今のままでは自滅の道に至るかもしれませぬ」


 その言葉は、ナブハップとコニカはオフィーリアから聞いていたのでそこまで驚かなかったが、それ以外の人には戸惑いの表情を隠せない話であった。


 だからこそミロクは、その対処法を彼らに伝授する。それと合わせ、このような事態に巻き込み、力を得させてしまったことについて深く謝罪をする。


「パートナーと心をさらに通わせ、体を鍛錬すれば恐れることはない。その方法を、見て盗め。それが最短の近道なのだ。巻き込んだ手前、最後まで主ともども面倒は見る覚悟じゃ」


「言ってくれるなダンディー、余裕があれば俺たちも戦っていいんだよな?」


「そうじゃのう、その時はな。しかし、誠にこの世界に住む者どももいい心構えをしておるのう」


 ナブハップは血気盛んに両手の拳を胸元で突合せ自信満々な表情でそういい、ミロクは援護はするから自由にやってみるがいいという感じで彼らに親しげに接していた。


「ということで、すみません宇田方さん。例の宗教法人の施設まで車で送っていただきたいのですが」


「そうか、手配しよう。まだ不慣れな土地だろう、任せてくれ」


「ありがとうございます。迂闊に飛行しようものならあれに見つかる可能性がありますので。それと周囲3キロ程度まで避難指示を出していただけると安全かと」


 ハーネイトは現場まで防警軍が連れて行ってくれることに感謝しつつ、念のため宇田方にある指示を出す。


「どういうことだ?」


「藪蛇といいますか、何か巨大な生物が出現し周囲を破壊する恐れがあるかもと思いまして。それと私たちの戦いをあまり見られてもあれですし」


「桃京駅のあれか、確かにそうじゃな。オペレーターよ、至急出動中の隊員に伝えてくれ」

「了解しました司令官!」


 これで今考えられる不安要素はできるだけ排除した、そうハーネイトは確信し、血界を破壊するための作戦を発令する。防警軍の第2大隊のメンバーが、装甲バスを数台用意し、それに乗車し現地まで向かうようにと言われ各自急いで地下駐車場に向かう。


「しかし、学校とか明日いけるかなあ」


「それどころの話じゃないと思うぜ彩音。なあ親父、日本各地で非常事態って感じだろ?」


「そりゃそうだな。ニュースを見ているが……日本以外でも事件がいくつも同時に起きている」


 装甲バスに搭乗し座席に座りながら大和は、他の国でも事件がいくつも起きていることについてニュースをスマホを使い響たちにみせた。特にアフリカや北アメリカ、中国などで血徒の犠牲者が数多く出てしまっており、現状距離的な問題からどうにもできないことに歯がゆさを感じていた。


 現在他の地域に容易に移動できるかどうかハーネイトとその仲間で異界空間内を探索しているというが、これといった進展はほとんどないのが現状だという。


「えっ……それは本当ですか大和さん」


「ああ、これを見てくれ響くん」


「……どうやらフランスは、大丈夫なようだな」


「もしかして、妹さんのことですか?」


「ああそうだ亜里沙さん。何もなければいいんだけどな……」


「ええ、早く解決して元の生活を取り戻さないといけません」


 亜里沙は少し前に響から彼の妹について話を聞いていたので、先ほど口に出したことはそれに関係する話かと推測した。そのうえで、元の学生としての生活を過ごすためにも今を乗り越えないといけないという。


「そうよねえ、このままだと大学の方も……うーん」


「試合どころではないのは分かっているが、どうするか」


「長引くと色々問題あるね。お金は、もらっているからいいけど……」


「私立九条学園に在籍する者はお父様の特例でその辺りは保証されているのでご安心を」


 その話に乗る形で、バスの天井を見上げながら大学の話に関してぼやく渡野と音峰、瞬麗に対し既に亜里沙は、父の宗次郎が特別に計らっていることを彼らに伝える。だが彼らの不安を完全には払拭できていなかった。


「妻と部下どもを置いてきてしまったが、どうしたものか」


「事件の手がかりを追いに日本に来たら、いつのまにか……でも、後悔はしてないよ」


「わしも正直驚いているが、これも巡り合わせなのだろうな」


「もうすぐ現場に到着します、Cデパイサーのセッティングをもう一度確認してください皆さん」


 文次郎は春花に住む家族と部下が気がかりであった。一応事情を理解してくれているのか彼の妻は特に口出ししていないものの、娘の文香もこうして一緒に戦っていることについてはやはり心配しているようである。


 また、アメリカやドイツから来た人たちもこうして協力している。彼ら自身戸惑いはあるものの、それでもこうして同じ辛さを共有できる仲間を見つけることができたことに感謝していた。それから少ししてハーネイトは運転手に話しかけもうすぐ到着するため準備を再度各自に行わせた。


 全員の乗る装甲バスが全て現場近くの駐車場に到着し、急いで車の外に出る響たちは、少し遠くにある敵の拠点から異様な雰囲気が発せられているのをびりびりと肌で感じ取る。


「何だか気味が悪いわ」


「あれ、ね。あの時感じたのと同じ……」


「とっととぶっ潰しに行こうぜ」


 その後徒歩で施設の近くまで向かい、周辺の様子を各自でうかがう。既に血の気の多い者はUAを展開し臨戦態勢に入っていた。


 今のところ敷地内に怪しい反応は確認されていないが、皆用心していた。また京子や亜里沙は正面玄関付近の結界が気になっていた。


「はえ~おっきな建物だなぁ。こりゃ手分けしてやった方がいいのもうなづける」


「確かに、正面玄関付近には結界らしきものがあります」


「では、私たちは地下から攻める。何かあればすぐにCデパイサーで連絡をお願いしますよ」


「では、例の地下道に案内いたしますぞ」


「了解しました」


「では行くぞ」


「おうよ」


 こうして、ハーネイトチームと現霊士チームは一旦別行動をとることになったのであった。


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