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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第252話 これからの方針と血徒の能力・血衣(けつい)


「フッ、ここにいる者は最近まで、能力を持たない者だったのだ」


「ううむ、ここ数ヶ月での出来事なのか、それは興味深いな」


 そこに文次郎が彼らに声をかけ、自分も少し前までは全く歯が立たない存在であったことを告げ、それは冗談ではないのかと言葉を返すプロメテウスらの背後から、静かに誰かが声をかける。


「そうですとも、何せこの私も数か月前に事件に巻き込まれましてね」


「むぅ、そなたはNEUのドガ博士か」


 さらに、ドガ博士も話に加わり紅茶を口に含んでから話をする。それに対しプロテメウスはすぐに彼が何者かを把握した。彼のような博士も自ら戦っているのか、そう思うと今まで自分たちは何をしていたのだろうかと思い感情を整理できずにいた。


「その通りだ。ここにいるものが皆、何かしらの形で大事なものを奪われておる」


「大事な、物か……ああ、僕もです」


「村を奪われた君ならよくわかるだろうな」


「しっかしよう?女に子供にに爺さんに同年代、色々いるじゃあねえか。全員能力持ちってのか」


「でないとこうして人員を集められないのでは」


 ジャックは少しつまらなさそうに首ごと目線を動かし、周りで盛大に話をしている彩音や渡野などに対しああいった人たちまで力をつけているのかと彼らを心配するような感じで見ていた。


 それはなぜか独り言として口から漏れそれを聞いたエアハルトは、今は少しでも対抗できる存在に前に出てもらうしかない状況なのではと意見を述べる。


 それに対し、それはそうだなとジャックはうなづき、自分の今後の身の振り方を改めて考えねばと部屋の壁に寄りかかりながら目を閉じて考え込んでいた。それはエアハルトも同じであり、料理店をずっとあれからやってきたが、今は非常事態であり自分も何かの形で協力できれば、また今まで通り働けると考え、心の中で意気込んでいた。


「フッ、面倒ごとに巻き込まれてしまったな。いや、既にか」


「姉さんに何て言えばいいんだこれ。だけど、僕は……僕のできることを」


「何だか、少し居づらいな……でも、お姉さんたちもいるんだ。なんか、個性の強いというか、なんというか……うん」


 一方で中学生2人とコニカはテーブルを囲んで、少し暗い面持ちを見せながら話をしていた。よもや自分たちがこういった目に遭い、それでいて無事だっただけでなく駆け付けた高校生たちのようにあれに対抗できる何かを得た自分自身に困惑していた。


 特に切人は姉がおり、どうやってこの状況を説明すればよいのかわからず非常に悩んでいたのであった。そもそも彼は家出をして、タワーにいたという事情があるのでそこについては兎も角である。


「うーん、何でこうなるの!」


「まずいですよ先生!何言っているんですか、全員具現霊持った現霊士レヴェネイターなんですよ?」


 ハーネイトは苦笑いしながらひょうきんな感じでそう言うのに対し、響は慌てたような感じでツッコミを入れる。戦力が増えること自体はうれしく思うものの、師である彼が人の管理をきちんとできるかどうか、少し疑っていたのが慌てて戸惑っていた理由であった。


「ああ、そりゃ見て分かるさ。しかし……いや、こうなった以上責任を取るしかないが、Cデパイサーは全部春花に置いてきている」


「ハーネイトさん、それなら私が貴方が作ったのをたくさん持ってますよ。全てデータ更新済みのです」


「マジか、エレクトリール。ありがとう、助かったよ」


 ハーネイトは思っていた以上の出来事に少々困惑していたが、エレクトリールが予備のCデパイサーを多く持っていることを聞いてホッとし、あとで彼らに渡すようにと指示を出す。


「ええ、以前管理していてくれって言ってましたよ?もう、もう少ししっかりしてくださいね?」


「す、すまない……ああ、では用意の方は頼んだぞ」


 彼女にそういうと、ハーネイトは席を立ちナブハップや楓也のほうを向き大きな声で挨拶をする。


「わざわざここまで足を運んでいただき申し訳ありません。話にはある程度聞いたかと思いますが、私が師長と言いますか、事務所長と言いますか。名前をハーネイトと申します。以後お見知りおきを」


 自己紹介をしてから深々とお辞儀をした彼は、まず最初に謝罪した。それは、彼らを事件に巻き込んでしまったことであった。だが既に今までの経緯を彼の部下や仲間から聞いていたナブハップや切人らは逆に、そういう人材を率いて活動する謎の男、つまり彼に興味を抱いていた。


「そこのおっさんとお姉さんからあんたの名前は聞いたぜ。何でもやべえ未解決事件を解決したとな」


「探偵……なのか?にしてはそうには見えねえな」


「まあまあ、少なくともあの高校生のお兄さんお姉さん方を鍛え上げたのは確かなんでしょう。そう、なんですよね?」


「あの、私たちをこれからどうするのですか、ハーネイト、さん……?」


 ジャックは大和と京子から、ハーネイトについて話を聞き非常に驚いていた。この一見頼りなさそうにも見える優男が、映画に出てくるようなありえない存在の化け物を一撃で葬るという話に疑問を抱いていたが、彼の体から湧き出るオーラを感じ取り、もしかするとと思いつつ彼に話しかける。


 その一方で楓也と切人、コニカはこの優しげな表情を見せながら底の見えない何かに相当警戒しつつも、彼に質問を投げかける。


「怖がらなくていいですよ。ただ、今の状態では肉体も精神も大きな負担がかかります。既にある程度話は聞いている徒は思いますが、貴方たちは具現霊レヴェネイトとより結びつきを深め力に慣れていかないといけません」


 3人が少し怯えているのを感じ取ったハーネイトは、ニコッと笑いながら相手の警戒を解くように優しくそう言い、責任をもって助けると伝える。


「だがよぉ、今からの作戦に連れて行くわけにはいかねえだろうがハーネイト」


 その話を聞いて、ソファーにひどくだらけて寄りかかりぐでっとしている伯爵が起き上がり声をかける。あくびをしながら、まだ能力が安定していない能力者をどうするのか彼に問いただす。


「そうなんだよな……どうしたものか」


「だったら、この前の様にチームに分けて」


「今回は、うーん……そうだな。私と伯爵で例の施設に侵入しよう」


 以前、まだ能力が発現して日が立たない亜蘭と初音を連れて行ったことはあるが、前回と今回で違う点がある。特に敵が新兵器を持ち出しており、その解析が済んでいない以上どういう展開に転ぶか未知数であることが気がかりであった。


 確かに、戦闘偵察ドローンには新たな能力者たちが力を振るい敵を撃退した記録は残っているものの、場慣れしていないという要素も合わせると彼の顔が険しくなる。



「あー、ハーネイト殿。一つ情報提供したいのだが」


「何でしょうか宇田方さん」


「うむ、その施設自体が地下に幾つも通路があっての。伯爵殿は侵入して確かめたというが」


 宇田方は先ほどから彼に声をかけたがっており、話を聞くハーネイトは、彼の話に耳を傾けた。それに伯爵が便乗し情報取集の補足に関して話をするのであった。


「うりっす、そうだよそうだ。結構入り組んでやがる上に妙な仕掛けもあった」


「……なぜそれを早く言わないのだ」


「だってよ、話すタイミングがさあ。タイミングを失ってやっぱあれだよなあ」


「むむ、今回はガチの敵のアジトだ。発現してすぐの人たちを連れて行くのはなあ」


 敵の拠点を探るとき、伯爵がいて本当に便利だとハーネイトは思う。菌界人こと微生界人固有の菌探知は、詳細に情報を集めまとめることができる。


 いくら無限の軍勢という別の意味で恐ろしい能力を持っているとはいえ、できることに違いが出てくる以上よくやるなと思いつつ、地下の構造や罠などの話からどうやって戦力を割り振りすればいいか考え込む彼を見て、亜里沙と星奈がそれぞれ意見を述べる。


「けれど、前の戦いでは新米の人を私たちが……少し危ない面はありましたが」


「亜蘭さんと初音さんの時ね。あの時のケースならば、私たちがサポートをすればよいのでは?」


「本来なら任せたいのだがな。亜里沙さん。だが交戦記録から得た情報が、それにノーを突き付けてくるんだ」


 確かに、まだ能力を得て間もない亜蘭と初音を連れていき戦闘評価を行ったことはあれど、あれはこちらに時間的猶予、戦力的余裕があったからできた芸当であり、血徒が変身し形態を変えるという話を含めると、場合によっては万全の人員と装備でも何か嫌なことが起きかねない、それをハーネイトは2人に話したのであった。


「ええ、あれは全く知らない代物だったわ」


「兄貴、敵は変身ヒーローか何かみたいに姿を変えるんだ」


「いきなりパワーアップしてくるなんてよ、ひでえよな」


 その話に、実際に交戦した京子や翼、九龍も乗り厄介な相手であったことを強調する。実際いきなり防御と攻撃を兼ね備えた装備を出されては、こちらの調子も狂うものである。


「ハーネイトよ、敵の新兵器についてエヴィラや伯爵から話は聞いていないのか?」


 さらに大和は、ハーネイトに対しそう質問を投げかけるが代わりに二人が返答する。


「ごめんなさい、私もすべてを知ってはいない。だけど、あれは血衣けついの力を使っているわね。自身の眷属と大量の血で、あらゆる武装、鎧を生み出す」


「俺は血徒じゃねえし、分かんねえことが多いが……あれは恐らく共通規格ってあれだな。そもそも血徒はそれぞれ固有の能力、血闘術を持っているというが……それを発展させたんだろう」


 エヴィラと伯爵はそれぞれ、現霊士たちが持ち帰った戦闘データから自身が知っている情報についてこう述べる。


 エヴィラは元血徒でそれらを統べる存在だったため離反するまでの研究については知っているがそれ以降のは知らないものばかりで今回の一件に関しては結構戸惑っていた。


 昔から血にまつわる症状などを引き起こす微生界人は戦闘微術、つまり微生界人の使う戦技を改造しより戦闘力を高めてきたと言う。


 その1つが血衣であり、普段は自身の能力を血と眷属で出来た服に織り交ぜておき、任意のタイミングで変化させ消耗を押さえながら火力を一気に出すと言う変身戦闘術に該当する代物であるとエヴィラはそう話す。


 しかし、今回の報告を聞いてまとめた彼女は、その技術をより強化、発展させた可能性があるかもしれないと警戒感を露わにしていた。

 

 それに伯爵は、以前血徒となった同族と戦った際の経験について話を切り出し、強力な血徒は各自固有の力を持つのが面倒だと指摘するのであった。


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