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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第249話 桃京防衛戦 NRBブリッジ3



「このまま、黙ってみているなんて、もうできない!母さんの、皆の無念、ここで晴らしたい!」


 その光景を見ていた少女は、泣くのをやめ、こぶしを握り力を入れる。自分も、あれを倒したい。自身の母親だけでなく、親愛なる友達も犠牲になった。


 あれさえいなければ、そう思うたび、ふつふつと募る仇討の気持ち。幼いながらに少女は、その感情と向き合い、今までどこか感じていたが、恐れていたそれを呼び出すことにしたのであった。


「応えて、アストライア!」


 すると、彼女の目の前に鎧と槍を手にした女性の騎士が召喚される。それは具現霊であり、彼女の家に代々伝わる守護霊でもあった。アストライアと呼ぶその具現霊は、彼女をじっと見てから、微笑ましく彼女に接する。


「我の名を呼ぶものよ、ようやく私を、認識できたようだな」


「え、う、うん。……あの、私にも、あれと戦う力を」


「ならば、我が力を貸そう。貴様が、幼き頃より我は見守っておった。今こそ、目覚めの時だ」


 この少女はコニカ・ナズナといい、日本で生まれるも家庭の事情で中東のとある国で父親や兄弟と暮らしていた。だが彼女にさらなる災厄が降り注ぐ。彼女の父も兄弟も、彼女一人置いて全員吸血鬼の犠牲者になってしまったのであった。命からがら逃げ出し、協力者のおかげで母のいる日本にまでどうにかたどり着いたが、彼女の運命は無慈悲にも程があった。


 そう、ようやく再会できた母親と共に暮らしていたものの、ブラッドホワイトデー事件でコニカの母は、娘を守るために犠牲になってしまったのであった。


 愛する者との別れ、それが自分の非力さが原因だと考えたコニカは、口惜しさとむなしさ、憎しみをばねに今まで生きてきたのであった。彼女もまた、ある事情で霊量子の力を知らずのうちに会得していたが、ここにきてようやくその力の使い方を知り、彼女は内なる力を爆発させたのであった。


「うん、今なら……いけそうな気がするっ!この流れる感覚、これなら!」


 勇ましく振る舞う戦乙女のごとく、アストライアは天に槍を掲げ、自身に力を集めていく。コニカも、精神を集中させて内なる力を増幅させていく。だが、彼女の背後から他の個体の死体に隠れていた、まだ活動できる血鬼人の凶牙が襲う。


「ちっ、そんなところに居やがっただとぉ!間に合わねえ」


 韋車は一目散に割り込み助けようとすると間に合わない。その時、コニカとアストライアは振り返りながらカウンターをお見舞いする。


「そうはさせない……!アストライア!」


「行くぞ!ディヴァイン・シールド!」


 白く輝くその結界は、アストライアの戦技によるものであり、はじき返されながら襲った血鬼人は光に還元され消滅したのであった。


「Oh……こいつぁ美しいな。まさか、嬢ちゃんも」


「そう、よ。私の家族は、父は、母は、弟は!あの吸血鬼に襲われて亡くなった。だから、だから……っ!もう、あんな思いしたくない!」


 涙を流しながらそう言い、気丈に振る舞おうとするコニカにナブハップは、自分の幼いころの面影を重ねながらも、彼女のように、前に足を進めていかなければならないと改めて自覚した。それが、今こうして生きている者の枷であり、使命なのだ。そう彼は感じていたのであった。


「嬢ちゃん……ああ、俺たち、いや、ここにいる戦える奴らは同じような体験をしているのかもしれんな。行こうぜ、あれを倒そうぜ!」


「おじさん……はい!」


 こうして二人は、互いに連携を取りながら戦うことを決め、覚えたての技で勝負を仕掛けるのであった。


「韋車さーん!聞こえますか?」


「おう、響の坊主じゃねえか、どうした!」


「今ニューレインボービッグブリッジの反対側にいます。こちらも作業開始するので、そちら側は頼みます」


「任せとけ、へっ」


 その間に、ようやく味方の支援が到着したようで響たちは韋車たちのいる場所の対岸にある入口より、橋を下りて周辺を襲おうとする血鬼人らの群れを撃退していた。


「双方挟み撃ちにするわけね。彩音さん、そちらのほうは?」


「どうにかこっちが優勢ね。しかし、血徒ってのも変身能力あるなんて驚きだわ」


「そういうのがいるのですか?」


「そうよ、あれは焦るわよ。さあ、残りも片付ける!覚悟なさい!」


 他チームからの情報を聞いた響や彩音は、変身能力を持つ可能性のある個体に注意しろと瞬麗やスカーファにそう伝え、更に制圧していく。少し前まで橋を埋め尽くさんとばかりの勢いで出現していた血鬼人だが、わずか数分でほぼせん滅を完了していた。


 その光景を、遠くから見ていたナブハップは、この韋車やメイド服の女性の他にもあれと戦う仲間がいることに驚嘆しながら、自分の能力開花もきっと何か意味があるのだろうと思い思わず独り言を口にした。


「へっ、あの時の無力感が嘘のようだ。力を、貸してくれてありがとよ……兄弟」


「母さん……私、私っ!あれを、倒せるの……?」


そんな思いにふけるナブハップの背後で、彼の背中を見ていたコニカは、急に体の力が抜けて地面にへたっと座り込んでしまう。


 まだ完全に扱いなれていない力を使用した代償で、彼女はその場から動く力がほとんど残っていない状態であった。それでも、自分の手で家族を死に追いやった存在を倒せると自覚した幸せを、彼女はかみしめていたのであった。


「おっと、小さい体で、よく戦ったな。いいガッツもってるじゃねえか兄弟」


「おじさん、もよ。えへへ……でも、すごく疲れたよっ……」


「能力に目覚めたのが2人もいるとはな。お兄さん驚き隠せないぜ」


 へたり込んでいるコニカに手を貸し、おんぶしてやるとナブハップは言い、彼女は言葉に甘えて彼の背中に乗せてもらうことにした。


 それを見ていた韋車は、自身が能力を手にした時のことを思い出しながら、共に戦える力を持つ仲間が増えるのはいい半面、それだけその人たちがつらい生活を送ってきたという事実に戸惑いを隠しきれなかった。


「複雑な心境ですね。仲間が増えれば、あれと戦いやすくはなるけれど、それだけ悲劇も起きているということです」


「だが、四の五の言ってられない状況だ。現に、見える脅威として存在している。今のままの生活を送りたいなら、戦うしかないんだ」


「メッサーさん、ええ……そうですよね」


 その少し離れた場所で、被害などについて調査していたオフィーリアとメッサーは、これ以上悲劇に巻き込まれてつらい思いをする人や生き物が出ないように、自分たちは戦わなければいけないという思いを口に出していた。


 それからオフィーリアは、しばしの間目を閉じて考えてから、コニカとナブハップのもとへ向かい、2人に話しかけた。


「すみません、そこのお二方」


「何の用だい、美しいメイドさん?」


「唐突で申し訳ありませんが、私たちに同行してください」


 オフィーリアは、橋の地面に座って休んでいたナブハップとコニカに近づき、声をかけるが、その言葉に2人は驚いてしまう。


「WHY?どういうことだ」


「お姉さん……?私たちを?」


 動揺と恐怖の顔を見せている二人に対し、オフィーリアは服についた埃を手で静かに叩き落としながら、大事なことを教えるため笑顔で彼らに接した。


「今のままでは、折角力を手に入れても、体に大きな負担がかかります」


「なあ、2人とも。俺たちと共にこないか?俺たち以外にも、仲間がいるんだ」


「あの敵の正体についても、詳しく教える」


「このまま放っておいては、大事なものをすべて奪われてしまいます」


 オフィーリアを筆頭に、後ろにいた韋車とメッサーがそれぞれ、今戦った相手の正体も含め、戦い方を教えるから自分たちとともに防警軍総本部まで足を運んでほしいと懇願する。


 特にオフィーリアは、2人の肉体、精神にかかっている負荷を見抜いたうえで処置を施す必要があると判断しての発言であった。


 最後に、亜里沙は事の重大さを教え早急に対処しなければ人類滅亡もありえると指摘した。


「……そうかい、お前らただ者じゃねえのは分かった。だが、少しばかり心の整理って奴はさせてくれよブラザー。正直戸惑ってるんだぜ全くよ」


「本当に、教えてくれます、か?」


 ナブハップもコニカも、どうしようかと迷いつつ、彼らのこと、敵のこと、何が起きているのかということを何よりも知りたい気持ちで体がいっぱいな状態であった。少しの間、間をおいてから2人は今後どうするか話を切り出した。


「私、ついていくわ。母さんを食い殺した犯人、私の手で……」


「嬢ちゃん……、仕方ねえなあ。どうせこのままじゃ同じ過ちを繰り返すだけだ。オーケー、アンタラについていくぜHA!」


「では、周囲の片づけを終わらせてから総本部に戻りましょう」


「私たちの先生は、貴方達を手厚く歓迎するでしょう。フフフ」


 2人とも同行して来てくれることにオフィーリアと亜里沙は歓迎し、韋車とメッサーもうれしそうな表情を見せ2人に握手を求めた。


「おーい、そっちは大丈夫か?」


「もう響ったら、おいていかないでよもう!えーと、皆大丈夫なようだけど、貴方達は?」


 その間に、響が真っ先に駆け寄り、韋車たちと話していたナブハップとコニカに声をかける。オフィーリアから力に目覚めた人だと説明された響は、2人に笑顔で接し、よろしく頼むという。

 

 その後ろから勢いよく走ってきた彩音は、たまに響が向こう見ずで突っ走る点について文句を言いながらも、ナブハップとコニカのことが気になり質問した。


「Oh,可愛いお嬢さんだな。俺の名前はナブハップだ。訳合って、事件に巻き込まれてYO」


「綺麗なお姉さんですね、私はコニカと申します」


「えへへ、そういわれるとね。私は如月彩音。そこにいる響と共に毎日修行したり戦ったりしているのよ」


「そうだ、俺の名前は結月響。何だかあれだが、自分と同じ能力者になったみたいだな。よろしく頼むぜ」


 彩音と響はそれぞれ自己紹介をし、師であるハーネイトの教えを受ければ、体にほぼ負担なく具現霊を行使できることや様々な装備の配給について説明を2人に行う。


「では、後は防警軍とやらにお任せしましょう。私たちは所詮よそから来たものですから」


「一旦本部に帰って、状況整理したほうがいい。そろそろ他の仲間たちも仕事を終えて向かっていると思う」


 そのやり取りを見ていたオフィーリアは、自分たちもハーネイトのいる本部に戻ろうとしていた。メッサーは、橋の上で焼けた数々の車を見ながら同意見だと述べ、背伸びをしてから1つ息を吐いた。


「んだな、お兄さん疲れたぜへへへ」


「貴方はもう少し前に出て働いてください」


「んなこというなよな。結構怖えんだぞあれ」


「貴方方が、例の能力者集団ですか?司令官から話は聞いております」


 韋車はいかにも疲れたぜという顔で笑いながらそう言うが、オフィーリアはもう少し彼にはまじめに職務に取り組んでほしいという感じで指摘する。その間に防警軍の隊員が到着した。事前にオフィーリアがハーネイトに連絡し迎えを寄こしたのであった。


「どうも迎えの者が来たようですね」


「では、スカーファさんと瞬麗さんとも合流してから帰りましょう」


「では、ナブハップさんとコニカさん、ついてきてくださいね」


「勿論だぜ嬢ちゃん」


「はい、よろしくお願いいたします」


 こうして、オフィーリアたちは新たな仲間をつれて、防警軍の大型車両に搭乗し本部まで帰還したのであった。




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