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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第248話 桃京防衛戦 NRBブリッジ2



「げっ、何だあれは!」


「今までのとサイズが違いますわね」


「2人とも回避を!」


「っ、こいつ!」


 赤く怪しく光る目が4つもあり、もはや人であった原型がなくなるほどに変異したそれは、4人を目でとらえると一目散に橋を大きく揺らしながら、纏めて喰らおうと襲ってきたのであった。


「そうはさせません、円刃盾プレートシールド!更に、CPF・厄道水月!」


 すると、オフィーリアは韋車たちを守る形で前に立ちはだかり、手にした巨大な円刃で突撃を受け止め、カウンターでCPFを発動し、敵の急所である脳を一撃で射貫いて行動を停止させた。


「ギ、ギガ、ガガガ!!!」


「今です、総攻撃を!」


「ああ、任せてくれや!」

 

 オフィーリアの作った好機を逃さず、韋車たちは分散し、同時に攻撃を仕掛け標的の撃破に成功したのであった。


「助かったぞ、ハーネイトのお仲間さんよぉ!」


「全く、まだあなたたちは未熟ですね。もっと、強くなりなさい。いくらでも楽に生きられるから」


「まあ、そうだよなあ。だがよ、簡単にはいかねえよ、人生は」


 オフィーリアは、楽に生きるならば力をつけるべきだと3人にアドバイスする。すると後方から走ってきた、腕や足が完全に機械のものになっている男が3人に声をかける。少し遅れて、メッサーが到着したのであった。


 彼の腕から展開した幾つもの鋭く光る刃には、血糊がべったりとついていた。それを振り払うと、面倒だったと言わんばかりにため息をつき、周囲の状況を素早く確認する。


「貴方は、確かハーネイト様の……」


「そうだ、お前らの後方で敵がいたんでな、片づけてから来たわけだ。橋を下りようとした人たちは全員無事だ。防警軍の連中が保護している」


「そうか、すまねえな」


 メッサーは、橋に向かう途中で出現した血鬼人を片っ端から倒し味方の支援に回っていた。そのうえで、逃げてきたほとんどの民間人は無事防警軍の手で保護されたことを伝えた。


「さあ、わらわらとわいてくるあれを、全部倒すぞ!はっ!」


「私がシールダーとして皆さんの支援をします。その間に押し寄せる敵を倒します。反対側から増援があと5分程度で到着するので、それまでお願いします」


「わかったぜ、やるぞ!」


「あんたらは橋から早く逃げな」


「そうは言いてえが、俺は、あの敵の正体を知りてえんだ兄弟」


ナブハップは、迫りくる敵の姿を目で捉えながらも、その場から離れようとしなかった。それを韋車は指摘し、すぐ逃げるように促すが、それでも彼は指示を聞かなかったのであった。


「ちっ、こんなところにまでいやがる」


「全部倒すぜ!」


「いわれなくてもな!」


 その後も韋車をはじめとした4人は各自ド派手に立ち回り、ぞろぞろと歩いて迫ってくる血鬼人を片っ端から浄滅させる。


「しかし、橋の反対側って大丈夫なのか?」


「早く確認しないと」


「それならご心配なく。それよりも眼前の敵をすべて倒さないといけません」


 韋車や亜里沙は、ここまで血鬼人が多いと既に橋の周辺は大変な事態に陥っているのではないかと不安になるが、オフィーリアは別動隊を既に向かわせているといい、自分たちは眼前の敵をすべて消滅させるべきだと説く。


 そうして、大攻勢が始まる。ハーネイト及びその仲間に鍛えられた韋車と亜里沙、更に彼らの師にもあたるオフィーリアとメッサーの同時攻撃は、橋の上で増えつつあった血鬼人及び侵食域である血海を蒸発させていく。


 その光景を、まじまじと目に焼き付けていたナブハップは、心の中で歯がゆさともどかしさがぐるぐるし居ても立っても居られない状態であった。


「やられっぱなしじゃ、いられねえんだよ!なあブラザー!」


 ナブハップは、果敢に戦う現霊士たちの奮闘ぶりに感化され、今まで押さえつけていた気持ちを解放しようと叫び声をあげながら、内なる闘気を解放せんとしていた。昔の記憶、つらい経験。それが彼を、今まで支えてきたのであった。


 傷つき、倒れていく仲間に対し、自分はあまりにも無力だった。銃弾をありったけ浴びせてもあれは倒せなかった。だけど、あれを倒せる存在が今目の前にいる。自分にできない、何てもう思わない。ナブハップの覚悟が、彼自身に戦う力を呼び覚ませる。


 すると、彼の周囲が徐々に暗くなっていく。最初亜里沙は霧を生み出しているのかと思ったが、よく見てみるとそれは、無数の虫で構成されていた。


「これは、無数の虫……?」


「一匹一匹が、具現霊のようですね。かなり変わっていますが」


 亜里沙とオフィーリアは、ナブハップの周囲に漂うそれを凝視し、その正体を完全に把握した。それは、黒い蟻の大群であった。ナブハップの具現霊、それは数万匹で構成される蟻の軍勢なのであった。


「俺だけ生き残って、何の意味があるのか分からず、ずっと暗闇の荒野を歩いているようだった。だが、ようやく意味を理解した!皆の分まで、戦い守れってことだ!オルミガよ、俺の言葉が聞こえるか?」


 彼は今から8年ほど前に、軍に所属していた際ある村での任務に就いていた。それは、連続で住民が何者かに襲われ無残な姿で発見されたという事件について、警察などと協力して犯人を捜索していたものであった。


 当初は警察だけで解決しようとしたのだが、警察にまで犠牲者が起き、その前後の情報や遺体の状況などから何か怪物のようなものがいるという証拠をつかんだため、当時在籍していた陸軍のある部隊がそこに派遣された。その部隊に彼は配属されていたのであった。


 だが、結果は非常に悲しいものであった。ナブハップらは、彼一人残して全員何者かに襲われ、血を吸い取られ絶命したのであった。その事件が影響で、彼は軍人として働くのが困難な状態となり除隊し、実家の銃販売店の手伝いや運送業で生計を立てていたという。


 だがどうしても、あの時のことが彼は忘れられなかった。それからしばらくして、世界各地で同様の事件が起きていることを知り、真相を知るために仕事で貯めたお金を使い旅に出ることにし、いつの間にか日本で暮らしていたのであった。


「フッ、そうか!じゃあ暴れるぜ!蟻壁オルミガ・エスクード!!!」


「なんだなんだ?まるで黒い壁みたいだぜ」


「全部、虫なのこれ」


 ナブハップは、意識を研ぎ澄ませ自身から召喚される黒い蟻の群れに指示を出す。すると一糸乱れぬ動きで自身の前方を覆う黒い壁を作り上げ、血鬼人が放つ血針弾をすべて防いで見せた。


 なぜ彼の具現霊が人型でないのか、それは彼の幼少期と関係がある。親からも、同級生からもひどい扱いをされ、心を閉ざして生きてきた彼は、自然の多いところでただ一人、ずっと空を見ていたという。


 そんな中、彼はある存在と遭遇する。それが、蟻だった。彼は昔から人以外の生き物と心通わすことのできる力を持っていたが、あまりに強力すぎて自身に災いを及ぼしていた。だからこそ、彼の友は人ではなく、それ以外だった。


 軍に在籍し共に戦った仲間も、心のどこかでは打ち解けられずにいた彼は、結果的に見殺しにしたことを悔いながらも、今も複雑な感情を受け止めきれずにいる。今後、どう成長するかは彼次第である。



「これは、群体型の具現霊ですね。数が非常に多いのが気になりますが」


 オフィーリアはそれを冷静に分析し、この男が珍しいタイプの具現霊を行使できる可能性が高いと踏み、どうやってこちら側に引き込むか考えていた。その間にも血鬼人は血海を通じて召喚させていく。それを見たナブハップは、更に技を行使しようと、右手を前方に突き出し技の準備に入る。


「兄弟、力を貸してくれ!蟻弾オルミガ・バラ!」


「…………!」


 ナブハップは、無数の黒蟻を手元に集めると、それを弾丸のように打ち出し、血鬼人一体の脳を貫通する一撃を与えた。


「す、すげえな兄弟……アハハハハ、これならやれるぜ。あんな卑劣な奴らに、もう負けてたまるかよぉ!」


 放った一撃が、明らかに効いていることを実感したナブハップは、さらに蟻を集めると風に乗せるかのように動かし、黒い風となって複数体に襲い掛かり、風と重なった肉体の部分を消滅させたのであった。そう、放った黒蟻が、血鬼人の肉体を食らい霊量子に還元したからであった。


「なかなか、やりますねあのお方。ですがまだ不安定です」


「援護するしかねえだろ」


 確かに、今のナブハップの一撃は強力だったが、まともな訓練を受けていない人が無理に技を行使すると、後々体に重大なダメージが発生しかねない。それを懸念した韋車と亜里沙は、再度構えて、迅速に敵を倒すため怒涛の猛攻を見せるのであった。



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