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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第246話 桃京防衛戦 桃京国際スタジアム3



 体の関節部分を覆うように、プロテクターと鋭い血の棘で覆われ、両肩にはブースター兼シールド、手には2本のブレード、しかも背中にも副腕と2振りの大剣を装備した、赤くまがまがしいそれをみた大和たちは絶句する。しかしこれは切り札に該当しないとツヴェルクロナは宣言する。


「どう見ても切り札にしか見えないんだがな」

「能ある鷹は爪を隠す、って人間は言うでしょ?B・D・M (ブラッドライブマックス)起動!」

「おいおい、ありゃやべえんじゃ」

「覚悟してよね!」


 ツヴェルクロナは、纏った鎧の各部から赤い噴気を放つと、超高速で直進し、薙ぎ払う形で突進したのであった。その威力は、かするどころか周囲にいた大和たちごと数10メートルも吹き飛ばすほどであった。


「があああああっ!」

「な、んてパワーなのっ……!」

「奴さん、今まで見せたことのない攻撃を……」

「うろたえるな!直線以外の行動を取るのは、どうも不得意らしい」


 壁や地面に激突しながらも、PAの効果でほとんどダメージを受けなかった京子らは、改めて相手が、今までの経験などで測れない、厄介な相手であることを再認識する。また、今の一撃で決めようとしたはずなのに、ほぼ無傷でいる人間たちにツヴェルクロナは何かがおかしすぎると警戒する。


「今のを避けるなんて、面白いね」

「だからどうした?」

「だったら、これも避けられるかな?」


 ツヴェルクロナは、体の向きを大和たちのほうへ傾けると、背中に装備している2本の赤黒い剣を補助腕を使い前方に展開し、切りかかろうとしてきた。


「CPF・解空風壁!」

「UAトリガー・ガトリングガン&フォトレイボム!」


 しかし、その攻撃も今の大和や京子には通じない。各自適宜に選択した戦技やCPFにより、その鋭い血の剣は守りを貫くことはなかった。大和の放つカウンター攻撃の猛襲に回避しようとしたその隙に、ヴァンとシノブレードが彼女の死角から急襲する。


「もらったぁ!雨水銃・水圧弾!」

「蒼紅輝閃斬っ!その腕、断ち切る!」


 その連携で、大和たちに向けられていた2本の剣は大きな音を立てて破壊された。それを見たツヴェルクロナは、信じられないと言わんばかりの表情をしていた。


「くうぅ、……効かないはずの攻撃がっ、どういうこと?」

「どうだ、降参するか?」

「するわけないね。僕を怒らせないでよ」


 シノは、動揺する彼女に降参したほうがいいと言うが、それが彼女に火をつけ、さらに攻撃を仕掛けてきた。


「ブラッドワイヤーショット!」

「そんな攻撃もあるのかよ」

「そうはさせん、はっ!」


 ツヴェルクロナは、肩部分の射出口からワイヤーを2本放ち、ヴァンとシノブレードの腕を捕らえる。がその時、そのワイヤーは何かにより切断され、すぐに二人は解放されたのであった。


「今のは、まさか」

「ようやく、この声の正体がわかったぜ!俺とあんたは、同じくクレイジーだということさ!だから、惹かれあうんだろ?」


 2人を助けたのは、少し離れた位置にいたジャックの攻撃であった。彼は手にしたアーチェリーから矢を放ち、細いワイヤーを的確に射抜いてみせる。その後彼はひとりごとのようなことを言いながら、自身の力が確かにあることを再確認する。それは、彼にずっととりつき行動していたある霊に対して問いかける言葉でもあった。


「あなた、大丈夫なの?」

「へへ、悪いな心配かけてよ。実はな、昔から俺はある霊に取りつかれていてよ」


 ジャックは故郷であるイギリスで、幼いころから父親の影響で様々なスポーツ競技を習ってきた。その中でも一番彼が楽しかったのは、射的やアーチェリーなどの何かを狙い撃つ競技であった。彼はそれをひたすら極めることにした。その積み重ねが、今を導いた。だが、もう一つ、彼を高みに挙げた存在がいた。それが、彼に取りつく奇妙な霊であった。

 

「色々面倒だったが、今では良き相棒みたいな感じなんだ。ただ、俺はその霊の力を100%引き出すことが今までできなかった。だが、皆の戦い方を見て、ようやくわかったぜ」


 ジャックは、どうにかその霊の願いを叶えようとしてみたが、うまくいかなかった。アドバイスを受けての射撃は確かに効果はあるが、真に一つになれない。それがもどかしかった。だが、彼は大和たちの戦い方を見て、そういう方法で戦うこともできるのかとアイデアをもらった。それと先ほどの血徒による攻撃と合わさり、彼もまた能力に目覚めたのであった。


「もはや、わしに肉体などない。だが、こうして力を貸すことはできるかもしれん。若いころのわしを、貴様は思い出させてくれる。そういう者と、出会いたかったのだ」

「フッ、仕方ねえな。その代わり仕事はしてくれよな。この地球を、あんな奴らに好き勝手されてたまるかよ!」

「有無、では行くぞ、若造!」


 ジャックは、熱き闘志を滾らせ弓に手をかけ、怒涛の連射攻撃を行う。無数の矢がツヴェルクロナに襲い掛かり、ダメージ自体は少ないものの、無数の傷を彼女に与える。血の鎧を変化させ纏う技術は、余りにも攻撃を受けると維持するのが困難になるようで、全ての攻撃を受けてしまった彼女は、強化形態を解除せざるを得なかったのであった。


「バカな、僕がここまでっ!」

「勝負あったな」

「ぐっ、いいでしょう。今回は引きます。ですが、後悔することになるでしょう。あれに勝てる存在など、ほぼ皆無だから」

「へっ、どんな相手が来ようと、諦めなければ勝機は向こうから歩いてくるんだぜ?」

「自信満々だね。……だったら、せいぜいあがいて見せてよ。この先起こる全ての事象にね」


 負け惜しみを言い、ツヴェルクロナはその場から瞬時に消え、それに伴い汚染も徐々に消えていったのであった。


「っ、逃げ足の速いことだ。だが、戦って得たものはあるな」

「しかし、向こう側も新たな戦い方を見せてきました。それについても報告をしないといけません」


 汚染が消えていくのを見届けながらヴァンとシノブレードは、この先の戦いは更に熾烈を極めるものになるのは確かだと思いながら、早く報告を済ませないとと思いCデパイサーを操作し、すぐにハーネイトたちに対して報告したのであった。その間に大和たち4人は、周囲にまだ何かいないかを手分けして確認してから、階段に腰かけて一息ついた。


「正直、あれは無視できない代物だ。他にもあるとみていい」

「ふう、とりあえずこの辺は大丈夫かしら?」

「そうであってほしいな京子さん。はあ……参ったな全く」


 大和と京子はそれぞれ、自身らがまだ未熟で、それが故にまだ力を上げられるという確信を抱きながら遠くに見える赤く光る壁を見ていた。


「早く帰って、温泉に行きたいわね南雲」

「そうだな風魔。それにしても、そこの2人もやるでござるな」


 その一方で、忍者2人はどこかのんきな一面も見せながら、異世界観光を楽しみたいと思い口に出し、大和たちを見てから声をかける。


「へへ、そうか?正直自信はないんだがな」

「筋はいいと思うでござる。後は、鍛錬あるのみ。おおっと、拙者は南雲と申す」

「私は風魔、風魔・彩奈・蓮よ。よろしくね?」


 忍者2人は自己紹介を済ませると、道具の確認をしていた。何時でも戦えるようにと、彼らは使う武器や道具には人一倍手入れを行っている。彼らは、ハーネイトに実力を示し、正式に雇用してもらった経緯がある。その力を落とさぬよう、主のために彼らは全力で働いている。


「さて、と。そこの貴方、体の方はどうですか?」

「ああ、俺か?まだ違和感はあるが、まあ問題ねえよ。しっかし強ええなあ。あんな化け物相手に傷入れるとかよ。あんたら何者なんだ全く」


ジャックは、あの少女の姿をした怪物と渡り合い、撤退させた6人の戦いを見た感想を述べながら、体は問題ないと言いつつ、少し呆けた、うつろな表情で空を見上げる。自分も、あれと戦ってみんなを守りたい。その思いと、自身の競技人生を天秤にかけようとするとどうも悩ましい、彼の心境はそういうものであった。


「フフフ、気になりますか?」

「もし、今のような化け物と戦って、世界を救いたいなら私たちについてくるといい」

「まあ、嫌ならそれなりの処置は施すけどな」

「そうかい、フフフ、アハハハハ!いいぜ、その話乗った!故郷を滅茶苦茶にしたやつらだからな、容赦しねえぜ」


 シノブレードらの提案に対し、ジャックはいきなり笑いだすと、その提案に快諾したのであった。


「あ、ああ……マジすか」

「退屈しなさそうで何よりだぜ。それに、世界がやべえってんなら、戦える奴が前に出るしかねえ。少なくともイギリスでお前らのようにあれを倒せる奴なんざいなかったしよ、俺も資格あるってなら、やるぜマジで」


 ジャックは、シノブレード達の戦いに改めて感動し、そのうえで、自分ができることは何かないかと考え、その結果彼は共に戦い、平穏な生活を取り戻す。その答えを導きだしたのであった。


「そうと決まれば早速行こうぜ。俺たちコンビならだれにも負けねえ」

「やれやれ、修業は厳しいぞ?何せあのお方は見た目によらず厳しい特訓ばかりさせてくる」

「音をあげるなよな?」

「ちょうど遠距離から攻撃できる人材が不足気味だったのよね。貴方みたいな攻撃ができる人はありがたいわね」

「うし、どうせこの状況じゃあれだしな、楽しませてもらうぜ、ああ?」


 こうして、新たな仲間を獲得したシノブレード達6人は、一先ず総本部に戻ろうと考え足を進めたのであった。




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