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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第244話 桃京防衛戦 桃京国際スタジアム1

桃京国際スタジアム 京子 ヴァン 大和 シノブレード



「ここが、舞台か。はっ、確かにすごいが……」


 桃京国際スタジアム。2年前に建設された8万人もの観客を収容できる、巨大なスタジアム。そこに一人の男が訪れていた。目つきが鋭い茶髪のポニテのその男は、背中に何かを背負っていた。観客席から、スタジアム中央を見ながら彼は不敵な笑みを浮かべこう言い放った。


「アーチェリーでの金メダルは、俺が頂く!」


 そう、この男は世界的に有名なアーチェリーの選手であり、ある世界大会でこの会場一帯が使われるため、付近にあるアーチェリー会場を訪れてから、ここを訪れて景色を眺めていた。


 名前は、ジョン・ケールヒニスト・ジャック。通称ジャックアイアン。鋼の心を持つ、冷静沈着な男からそう言った異名がつけられたという。


 国の代表として、背負うものがある。近年恐ろしい事件が数多く発生しており、少しでも多くの人に技術を見せ、感動させることで何か役に立てればいいと彼は思っていた。しかしその技術はのちに、別の形で生かされることになるのであった。

 

 彼はしばしの間、スタジアム内で過ごしていた。そろそろホテルに戻ろうかとした矢先、窓の外が異様な光景に代わっていることに気づいた。


 かなり遠くに、赤く光る壁か何かがあり、ただ事ではないと急いでスタジアムを出てペデストリアンデッキに移動する。するとどこかで悲鳴が聞こえてきたのであった。


「キャアァァア!!!!ば、化け物!!」


「ん、なんだこいつ………げっ、人を襲ってやがる」


 急いでジャックは駆けつけると、見るからに人間とは異なる、全身から血を流しているゾンビのようなものが若い女性を襲おうとしていた。このままでは間に合わない。全力で走ってもだ。そう思ったジャックは無意識に、背負っていたアーチェリーを手に持ち、すかさず矢を放った。


「そうはさせねえぜ、こいつを喰らえ!」


 ジャックの撃った一撃は、風を切り裂くかのように血鬼人の胸と左腕を射貫いた。だが一撃では倒れず、ジャックのいるほうに向かって走り出したのであった。


「こいつ!武器が利かないだと!?」


「ピギャアア!」


 今のは狙った場所が悪かった、ゾンビ相手なら脳以外にない。そう思い、弓を構え再度矢を放つ。今度は脳に直撃し貫通した。これでどうだと彼は期待したが、大きくよろけるも立ち上がって向かってくる血鬼人に思わず慌ててしまう。


「どういうことだぁ?確かに今の一撃、脳を貫いたはずだ。しかし……なっ!」


 自身が思っていた以上に、向こうは頑丈であり更に間合いを取るジャックは、数年前に新聞やニュースで見た地方都市が大きな被害を受けたゾンビ事件のことを思い出した。


「何なんだこいつらは……っ!そう言えばロンドンを恐怖に陥れたやつも、確か銃や爆弾が効かないって、新聞に書いてたなあ」


 ブラッドホワイトデー事件はイギリスでも猛威を振るっていた。それでも他の地域よりは大分被害は少ないものの、何をしても倒せず増えていく吸血鬼ゾンビは多くの人間に容易にぬぐえない脅威を心に植え付けたのであった。ジャックは、少しでも多くの人を逃すため、おとりになろうと考えた。それは、後悔したくなかったからであった。


「今は少しでも、あの人たちを逃がすためにひきつけるしかねえ」


 そうしてジャックは、大声を出して挑発することで吸血鬼ゾンビをおびき寄せようとする。だが彼の思っていた以上に、それはこの付近にたくさん出現していた。


 これはもう、名運尽きたかもしれねえ。その上吸血鬼ゾンビが何かを飛ばし、それが自身の胸に直撃しけがを負う。駄目だと思いつつも最後まであきらめるものかと、力を込めて矢を放とうとしたその時、自身の背後から何かが横をかすめ飛んできて、前方にいた血徒に直撃したのであった。


「どのような治療がお望みかしら?スリープインジェクション!」


「蒼紅飛閃斬!」


「雨水銃・拡散弾だ、感想でも聞かせてくれよ」


 それは、ハーネイトの派遣した現霊士及び霊量士であった。京子と大和、ヴァンとシノブレードの4名が現地に到着し、同時に攻撃を加え血鬼人の集団を散り散りにしたのであった。


「逃すかよ、喰らえ!UAトリガー・スプレッドボム!!」


 距離を取ろうと逃げる血鬼人に対し大和は、容赦なく山なりに飛翔し着弾と同時に霊量爆発を起こすグレネードを発射する。それはちょうど敵の退路をふさぐ形で炸裂し足取りをおぼつかないものにさせた。


「だ、誰だお前らは!」


「あ、俺たちはその化け物を倒しに来たんだよ。つか胸の傷……」


「ぐっ、今さっきあれにやられてな。大分血が出てやがる」


 ジャックは胸を押さえながら、駆けつけた人たちがどう見てもただ者でないことはすでに今の状況から把握しており、内心かなり期待を寄せていた。警察はおろか軍でも全く歯が立たないと言われる代物を、どう倒すのかがどうしても彼は気になっていたのであった。だが、彼が受けた傷は深く、その場に膝をついてしまう。


「私が手当てします。こちらに」


「京子さん、けが人のほうはお願いしますよ!」


 京子はすぐにジャックの肩を担いでからスタジアムの出入り口まで移動し距離をとると傷の具合を見てから治療を行う。


 その間にも新たに出現した血鬼人を相手に、大和たちは奮戦するのであった。周囲は夜に近づき闇が深くなり、スタジアムやペデストリアンデッキに設置されている照明が彼等にとっての頼りであった。


「とっとと始末するぞ!」


「速やかに仕留める!」


「俺は後方から援護するぜ。レンザーデビル、フォトレイガンだ!」


 得意な間合いが割と近距離であるヴァンとシノブレードが突貫し、大暴れしながら後衛の大和が具現霊による遠距離攻撃でアシストする。無駄のない連携に、次々と血鬼人は粉砕されていく。


 霊量子を扱うものでなければ、このような芸当はできない。毒を以て毒を制すと言っても過言ではないだろう。


「蒸発してしまえ!吸血鬼ゾンビがよ!」


 大和の背後に召喚されたレンザーデビル、その腕には巨大な望遠鏡みたいなレンズが装着されており、そこから放たれる光の一閃は周囲を昼間のように明るく照らしながら汚染された場所を浄化していく。


「おい、背後からも来てるぞ!っ、数だけ無駄に多いのが癪だな」


 ヴァンはその間に慌てふためきながら、血をまき散らし再度汚染しようとする血鬼人を的確に銃で射貫く。


 彼は本来水の銃で戦うガンナーであったが、霊量士の修行を経てリシェルたちと同じように霊量子をエネルギー弾にして放つ魔銃士になった。華麗なる銃捌きで、確実に敵を追い詰めていくが、とっさに包囲されつつあることをシノに伝える。


「そうはさせませんよ。蒼紅堕星斬ツインカラード・フォールコメットセイバー!」


「な、に?空から赤と青の剣が……どういう手品だこりゃ」


「動かないの、今治してあげますから」


 シノは迫りくる敵の増援を見て、これ以上長引かせないために強力な戦技を発動する。すると夜空より、光り輝く赤と青の光剣が雨のように降り注ぎ、血鬼人を数十体まとめて撃破する。


「幸い、傷は深いですが致命傷ではなかったですね。CPFで治療しましょう。これ便利ですよね大和さん」


「あの、京子さん…?」


 そんな中、京子はジャックの胸の傷を治すため、CPFで治そうとしたが大和が声をかけとめに入る。


「何か問題でも?」


「それ使うと、俺たちのように力に目覚める可能性が……」


「でも、時間はないのよ?それに、あれの攻撃を受けた人も素質があればなるわけですしそもそも、この人元から素質あるわ。だって、凶悪なのが取り付いているんですもの」


 京子は優しく傷口に触れると、ハーネイトより教わった治療系のCPFをフルに使いジャックの傷を治していく。それを見たジャック本人は、まるで夢でも見ているかのようだと感想を述べた。大和はその光景を見て、確かにこの若い男には何か底知れぬ物があると感じた。


「へへ、そうかい。確か能力者同士惹かれあうって話があったな。スカーファのような半霊持ちならなおのことだ。ちっ、それ以上越させねえよ!」


「まだ取り残されている人が何人もいるぞ」


「だが、俺たちだけでは手に余る物量だぞ」


 その間に、空から翼を生やした血鬼人が大和たちに襲い掛かろうとした。一瞬動きが止まり、攻撃を回避できないと思った3人は次の瞬間、ある声を聴いて驚いていた。


「へへっ、覚悟しな!黒鉄・碑殴ひおう!」


「私たちが来たからには、もう安心なさい!白銀伸剣!!!」


 すると空を飛ぶ血鬼人よりも高い場所から、忍装束の男女2人組がそれぞれ強烈な攻撃を繰り出し、あっという間にそれを叩き潰したのであった。スタっと着地した2人は、服を軽く払ってから全員のほうを向く。


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