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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第242話 桃京防衛戦 大伊火力発電所3



「ようやく到着したぜ、ヘへへへ」


「そこまでだぜ、血徒のおっさん!」


「覚悟してもらいましょうかね」


「我が主に歯向かう愚か者は、永遠に跪いていたまえ」


 プロワツェキイは、着地した4人に対しても終始余裕ありげにふるまい、1人でまとめて片を付けると自信満々であった。手元に血を集め、奇妙な形の大剣を形成しながら、かかってこいと挑発を行う。


「何だ貴様らは。そんなに死に急ぎたいのかね?」


「へっ、俺たちゃ手前みてえな奴を倒しに来たんだぜ!」


「命を弄び、さらなる災いを起こす貴様らを、我が主は見過ごせんとな」


「ククク、どこの馬の骨か知らんが、血徒という名前を知っているのは奇妙だな。だが、あのお方のために妨害要因は排除する!覚悟せい!血壊波!!!」


「血の波か、浴びたらただじゃ済まねえかもな」


「CPF・離盾装光!ったく、皆ぼさっとするな!」


 九龍はプロワツェキイの放った血の衝撃波を、CPFでカウンター気味に防いだ。いくらPAがあるとはいえ、相手は幹部級である以上攻撃を受けつづける余裕はないと考え九龍は後方にいる人たちを守ったのであった。


「甘いぞ、血棘針を喰らえぃ!」


 すると、流石に少しはやるようだとプロワツェキイは両腕を45度上に傾け、指先から無数の血でできた針を連射したのであった。


「防ぎきれねえ!」


「っ、くっ……」


「大丈夫か少年!」


 ほとんどの攻撃はCPFで防げたものの、真上から大きく弧を描き落下してきた数本の血針が、エアハルトの右腕に刺さってしまったのであった。


 すぐにドガとサインが駆けつけ傷の具合を見る。傷自体は浅いものの、2つの懸念があったためサインはすぐにドガに指示を出した。


「ちっ、思っていたより厄介だな。ドガさん、あの若者の傍にいてください。どうも怪しい。何かに取りつかれているようだ」


「ということは、今の負傷で霊量子を操れるようになったかもしれないと」


「ああ、早く!後は俺たちであれを倒しますので」


 サイン曰く、他の新たな能力者も含め霊量子攻撃により体内の霊覚孔が覚醒しすることで霊量士、現霊士になるのは今までの経験上確定的であり、その少し前から気付いていたエアハルトに取りつくなにかも気になったうえで、異変にすぐ対処できるようにと考えたのであった。


「すまん、距離をとる。そこの二人もついてくるんだ」


「あ、ああ。しかしあの攻撃をほとんど防ぐとか、どういう人材を見つけてきたのだ」


「我らは、あのような存在に対抗する術を磨いてきた組織の一員なのだよ」

はあ……しかし、おかげさまで助かりました」


 ドガはエアハルトを運ぶのを手伝うように御蔵と伊上に指示し、急いで発電所玄関口まで運んでからCPFで手当てを行う。血徒に完全に支配される前ならば、CPFで問題なく治療できる。ハーネイトの言葉を思い出しながら用意していると、呻くようにエアハルトは言葉を発する。


「ぐっ、なんの!村を、滅茶苦茶にした化け物に、僕は、俺は……っ!」


「こやつ、同郷のものか。しかし……村だと?」


「やはり、5年前の事件と関係があるのか」


「あれの対処は、あの人たちに任せましょう隊長。今は、この子の手当てを」


 ドガは、顔つきなどからエアハルトが自身と同じドイツ出身だと判断し、その上で絶対に治すと真剣な面持ちで処置を行っていた。


 その頃、気を失ったエアハルトは奇妙な夢を見ていた。目の前に、黒く霞がかった人らしき何かがいる。それは自身に対し声高に言葉を投げかけてきた。


「ははは、窮地のようだな少年」


「何だ、いつもあなたは一体」


「儂の力を、使おうとは思わないのか?」


「どうやって、俺を助けるというのだ。あなたは幽霊なのですが」


「まあ話を聞け若造、今まで迷惑をかけてすまんかったな」


「今更、謝っても僕の夢はもう……それに、早く起きないとみんなが危ない、んだ……っ」


 エアハルトは、目の前にいる声の主がはっきりとわかっていた。と言っても名前ではなく、自分の人生を狂わせてきた存在そのものであるということである。


 元々彼は、青空を見るのが好きな少年であった。それがいつしか、飛行機に乗って旅をしたいという夢になり、苦労に苦労を重ね旅客機の操縦免許などを手に入れた。だが、旅客機の操縦中に幻聴に見舞われ、それが続き仕事を一旦やめなければならなかった。


 その後落ち着いてから彼は、バイト時代に料理店で働いていた経験から料理人になろうとし、数年の修行の末日本でドイツの料理を食べられるお店を開いたという過去があった。


「起きてどうする。あの人間の域を超えたようなあの4人VS吸血鬼の化け物の戦いにどうやって介入するのだ?一瞬で終わるぞ若造」


「しかし、それでも……村を滅茶苦茶に荒らした犯人の仲間、だっていうなら!」


 エアハルトは男の指摘に言葉が詰まりそうになるも、それでも自分の故郷がもうすめないほどの状態に陥らせた犯人だけは、この手で討つ。それだけはずっと信念を貫きとおしていた。それを見た男の霊は、彼に手を差し出した。


「儂と共に戦うのじゃよ。みよ、あ奴らも自分一人だけの力で戦っておらんわい。1人がだめなら、手を組むしかないのだ。わしには4人も後部座席で共に戦う者がおった。もしあの時、脚を忌々しい高射砲で吹き飛ばされたときあ奴がいなければわしは死んでいた」


 男は、昔を懐かしむ様にそういいながら、協力し合い困難に立ち向かうことの大切さをエアハルトに説いた。自分もそうだった。結局は周りの支援があったからこそ、前代未聞の記録を叩き出せた。自身の体験を織り交ぜた言葉を贈られたエアハルトは、目を閉じてからカッと開き、前に進む時が来たと決意する。


「今こそ、互いに手を取りあの化け物を倒す旅に出ようぞ、エアハルト」


「……っ!じゃあ、この俺に力を貸してくれ!伝説の破壊王・ルーデル!」


「良かろう、地におる者は全てこの対戦車砲で吹き飛ばすまでじゃ!」


「今まで俺に取りついた分、仕事してくれ!!!!」


 そうして、エアハルトは夢から覚める。すると頭の上に小型のプロペラ戦闘機が浮いていた。両翼にはそれぞれ大型の機関砲、特徴的な主翼。


 ああ、本当に自分にはとんでもない者が取り付いていたのだなと思いながらも、やっと前を向いて歩いて行けそうだ、そう感じた彼は薄らと涙を浮かべながら立ち上がり、無意識に霊量子を操り自分の身にまとったのであった。


「っ、この若者も具現霊を?」


「だけど、何か変な感じが……元々幽霊に乗っ取られかけている感じの人が、和解した感じだ。このようなケースは、ほとんどないぞ」


「とりあえず、今は敵の撃退が先決だぞ!後方は任せたまえ!」


「やるしかねえようだな、インテリヤクザ!」


「っ、貴女、口の利き方にもう少し配慮なさい。我が主は細かいことを気にしないほうですが、私は少なくとも違います」


「っせーな、ともかく吸血鬼野郎なんざぶっ潰してやる!マスラオウ!」


 青年の異変に気付く4人だが、サインは今は目の前の敵を倒すことに全力を注げという。そして九龍の口の悪さにあきれながらも彼は仕掛けるため虚空を勢いよく蹴り飛び上がる。


「相変わらず、血の気の多い人もそれなりだな」


「ははは、そりゃ戦うならそう言う奴もいたほうがいいぜ。俺もそっち側だけどな!」


「……後衛は私だけですか。やれやれ、カンタレーラ、皆の援護を頼みます」


「ええ、分かりましたわ」


「フハハハ、まるで止まっているようだな。遅い!」


「……壊嵐脚・技駕螺旋脚ナマステトルネード・ギガドリルサイクロン


 プロワツェキイは数々の猛攻を寸前のところで回避しながら堂々と歩いて迫ってくる。だが次の瞬間、彼は背後から超強烈な衝撃をまともに受け大きく吹き飛ばされた。そう、サインの放った戦技によるものである。


「ごはっ、ぐっ、こ、こやつ!」


「我が主の配下にて最速の執事とは、この私のことです」


「貴様ぁ!人間のくせに……あ、いや、どういうことだ」


 サインは少しずれた眼鏡をくいっと指で直してから、不敵な笑みと今まで抑えていた気運を解放した。それを肌で感じたプロワツェキイは、思わず体を構えてしまう。


「感じ取ったか、フフフ」


「貴様、まさかヴィダールのものか!」


「まあ、少しは当たっていますがね」


「そこだぁ!」


 サインの持つヴィダールの気運に動揺しているプロワツェキイ。その隙を突き九龍は、具現霊マスラオウによる鉄拳制裁を打ち込むが、それは片腕で防がれる。


「っ!だがまだまだじゃ!」


「何てパワーだ、仕方ねえ、UAトリガー・ハイパーナックル!」


「行くぞ娘よ、……黒嵐!」


 九龍は恵まれた身体能力ですぐに受け身を取り、背後にあった施設の壁をすさまじい威力で蹴りながら、とっさに再度間合いを詰めつつマスラオウと共に戦技を繰り出す。強化された拳の連撃は黒き嵐を呼び、プロワツェキイの体を包み込みずたずたにしようとする。


「うぉおおおおっ、まずい!」


「そのまま動くなよ、伯爵の知り合いさん!ブラックムーンだぜ!」


 九龍の攻撃に重ね、発電所の3階のベランダから、翼が黒き波動弾を落下しながら放ち、さらなる攻撃を行う。視界を奪うのも目的であり、更に攻撃が連鎖していく。


「今だ、紫樹縛殺陣!」


「くっ、連携がっ。小癪なぁ!そう群れなければ戦えない弱小生命体が!」


「何言ってんだ?勝てばいいんだよ!」


 プロワツェキイはすかさず翼に反撃を仕掛けるが、その前にドガはカンタレーラの戦技を使用し、紫色の丈夫な蔦を絡ませ拘束する。それを見て翼は更にもう一撃を食らわせる。


 だが恐るべき怪力で蔦を振りほどき、手先から血の弾丸を数発放ちつつ人間の脆弱さについて指摘するプロワツェキイに対し翼たちは、これは生存競争であり、なりふり構うものかと反論する。


 実際そうであり、血徒に支配されれば他の生物種は全て消滅しかねない事態に陥る。だからこそ、

全力で未来を紡ぐため戦うんだ。そうハーネイトたちは全員思いながら危険な場所で戦っていたのであった。だからこそ全員退かず果敢に戦うのである。


「フフフ、そうだな。これはそういう戦いでもあるな。では久方ぶりにこやつを使うかのう、血衣魔装ブルームシュティール・近接格闘形態ぃいいい!!」


「げげっ!あいつ体中から血で剣をたくさん出しやがったっ。ちっ、迂闊に近寄れねえな」


「姿形が大きく変わりましたね、あれは……」


 すると不敵な笑みを浮かべたプロワツェキイの周囲に、血の幕が形成され、その中で彼は変身する。身に纏う血の衣が液状化し、形態を変えながら再度彼の身に纏われる。


 するとその中から体表に血の剣や刃がいくつも形成された、攻撃的な姿がそこにあった。背中に装着した、補助腕と二振りの剣が特徴的な、攻撃的なフォルムに一同唖然となり全員が後ずさる。



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