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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第2部 桃京血徒戦線 暴走する神造兵器・血徒(ブラディエイター)
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第234話 桃京解放戦 桃京大学防衛戦2


「な、あれは、あの男は何をしておる」


「ちっ、やらせはせん!ベイオウルフ、ヘルバイトブラストだ!」


 攻撃を受け膝をついている大男を見つけると音峰は、すかさず俊足を生かし間合いを詰めながら、具現霊ベイオウルフによる衝撃波攻撃を行い、襲い掛かろうとする血鬼人数体を一撃で吹き飛ばしたのであった。


「どりゃああああ!」


「な、んと。あの化け物を一撃だと?」


 その光景を間近で見たプロテメウスは、若い男が一撃であの吸血鬼を吹き飛ばしたことに驚愕しつつも、ふらふらとなりながら立ち上がり再び拳を構えた。


「大丈夫ですか?」


「なんとかな、だいぶやられているが、まだ立てるぞ」


 そこに、徐々に敵を追い詰める宗像が残りの血鬼人をどんどん攻撃し片付けていく。


 微生界人の眷属操作の力による単純な命令により動かされている血屍人と違い、血鬼人は近くにいる血徒が直接操作しているため脅威度が高い。


 だからこそ彼は、UAと具現霊をそれぞれ使い分け全ての間合いに対処していく。


「やらせるか!UA・ショットガン!マカミ、もう一度火炎息吹じゃ!」


「クォオオオン!」


「なんだ、あの老人は。あの化け物を、片っ端から倒しているぞ」


 プロテメウスは宗像のほうを見て、あれに対抗できる武器があるのかと真剣に観察しながら、宗像の持つUAトリガー・ショットガンから放たれる弾丸が自身の背後にいる守護霊らしきものと同じものでできていることをすぐに把握した。


「カーズ!左翼にいるあいつらを!俺はあれをやる!」


「行くぞ、ドミネイトブレイク!!!」


「こいつでもくらえ!UAトリガー・サブマシンガン!」


 一方田村は事前の打ち合わせ通り、別方面から裏をかく形で大学敷地内に侵入すると、側面から勢いよく具現霊カーズとUAトリガーで手際よく制圧し、さらなる脅威を退けたのであった。


 それを目の当たりにしたプロテメウスは、しばしその光景が目に焼き付いて離れずにいたのであった。


「なんという……でたらめな力じゃ。儂も、この連中に対抗できる力さえあれば……っ!あんなことにはならなかった!」


 あの時、自身に戦う力があれば住んでいた街は多くの犠牲者を出さずに済んだのではないか、そう思った彼はとても悔しそうに歯ぎしりし、こぶしを握り締める。


「どうした、傷が痛むのか?」


 その様子を見ていた音峰は、彼に優しく問いかける。しかし次の瞬間、プロテメウスの目がカッと開き、頭を両手で抑え苦しみだしたのであった。


 まるで頭の中をかき回されたかのような感覚に歯を食いしばる彼を見て、音峰はよく目を凝らし観察すると、彼の背中に何かがいるのに気づいた。


「っ、う、声が……っ!頭が、引き裂かれそうじゃっ、くっ」


「まさか、幻霊か?」


「まずいわね、でも、これはこの人自身が向き合わないと乗り越えられないわ。私たちも、同じだったからね。今私たちは、施設とこの人を守ることしかできない」


「確かにそうだな。元々かなり素質があったのだろうが、ここに来て更に成長した、のかもしれん。渡野、行くぞ!」


「はい!」


 元から音峰たちは、この大男はただ者ではないとは思っていたが、自身らと同類であることがわかるとすぐに彼を取り囲むように移動し、援護する形で陣形を作ったのであった。

 

 一方でプロテメウスは、遥か時を過ぎたかのような感覚を覚えつつ、走馬灯のように昔のことを思い出していた。


 この慈悲深く、勇敢な彼に何があったのか。それは、彼が後悔し続ける人生を歩むことになった事件が影響していた。


 彼は若くして優秀な医者になり、大病院で働きながら外科医師として患者の手術などに携わっていた。地元の人間からはその腕を評価されていた。

 

 だが彼の人生を大きく変える事件がおきた。それがブラッドホワイトデー事件であった。


 アメリカでも事件が発生する中、田舎町にいた彼もまた、医者として不調を訴える患者の診察をしていた。しかしどうしても状態は悪化する。必死の治療もむなしく、その患者は息を引き取ってしまった。だが、それだけでは終わらなかった。


 そう、患者は血徒に取りつかれており、病院で血鬼人として目覚め大暴れの限りを尽くした。病院関係者にも多数の死傷者が発生し、プロテメウスは仲間の医師やスタッフを逃すため奮闘する。


 そして銃で攻撃をするもあまり意味がなく彼は、命からがらおびき寄せると街にある製鉄所の溶鉱炉に血鬼人を落としたのであった。


 これでどうにかなったかと思いきや、負傷者からも同様の症状が発生し、街はパニックに陥った。しかしある日、忽然とその脅威は姿を消したのであった。


 プロテメウスも血鬼人を誘導する際に脚を負傷し、結果的に病院を辞めしばらくは療養してから別の街で今度は牧師として働いていたという。


 だが、風の噂で他の州でも同様の事件が起きていることを知った彼は、真相を突き止めなければならないと思うようになり、各地を回り調べているうちに、日本を初めとした他国でも大規模な被害が起きていること、その前にも奇妙な事件が起きていることを知り、関連がないか調べるために遠路はるばる来日したのであった。


「たとえ、儂はどう周りから思われようと!成すべきことを成すべきまでだぁ!ウォオオオオオオオオオ!!本当の名を、教えてくれ!」


「私の名は、サリエス。あのおぞましき化け物に襲われた私を、最後まで治療してくれてありがとうございます」


「……な、どういうことだ。彼女は、あの時」


 ヴィンダミア・サリエス。そう、彼があの時診察した患者の名前である。語りかけてきた声の正体が分かったプロテメウスは狼狽し、言葉が思わず詰まる。それに対し彼女はなぜ亡き後もこうしていたのかについて説明を始めた。


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