第231話 桃京解放戦 桃京ビッグスカイタワー防衛戦3
「そうはさせっかよ!うらぁ!」
「だ、誰?」
ビックスカイツリーの正面玄関に迫る複数の血鬼人を謎の力で吹き飛ばしながら、勢いよく施設内に入ってきたのは、五丈厳達4人であった。すぐに周囲を確認し、楓也らを見つけると声をかける。
「ふう、間一髪だったなおめーら」
「た、助かったが君は……」
「話はあとだぜオッサン。今はそこのガキどもを避難させるのが先決だ。確かあんたが防警軍の隊長か?」
「ああ、いかにもだが」
「そうか、それで他に人は」
五丈厳は目の前にいる男に声をかけ、他に誰がいるのかを確認する。もし逃げ遅れた人がほかにいるなら、こちらでどうにか安全に連れ出すしかないと考えていたからであった。
「ここを管理している職員や隊員たちは地下にいる。このタワーで大切なのは実は地下なのだが……勿論タワーを壊されてもダメだ。だが、向こうは人を狙ってばかりのようだ」
「そうか、っと遅せえぞ」
「まったくもう、あんた突っ走りすぎよ」
「ケッ、取り合えず残っている関係ねえやついたぜ」
半沢の話を聞いた五丈厳は、仕方ねえなと言いつつも引き受けた以上は全力でやるまでだという。すると後を追いかけてきた間城たちが追いつく。
「貴方が防警軍第3小隊の隊長さんですね?」
「そうだが」
「今私たちの仲間が道を切り開いています。それを使ってここから脱出しましょう」
こうして彼らは、外にある装甲車のある所まで向かおうと急いでいたが、目の前に突然謎の男が立ちはだかる。
それはビックスカイツリーの周辺を血の海にしたのとは違う者であり、手にした妙な形状の剣を突き出しながら進行を妨害する。
第3級血徒、タイレリア・エクイスと言うこの血徒は、ある計画を実行するために必要なアイテムの回収のため、このタワー周辺を一気に汚染し自身を囮として惹きつけていたのであった。
「フフフ、強き力の波動を感じてきてみたら、これはこれは」
「なっ、こいつは!」
「さっきのとは違うわね。邪魔よ、退きなさい!」
「それで退くと思うなら、舐められたものだな!喰らえ、血棘針っ!」
そう言いながら、中学生たちを守るために亜蘭と間城は先に出て、立ちはだかる血徒に対し攻撃を加えるも、血の膜を自身の周囲に展開し防御しながら、そこから棘をいくつも生やして手痛いカウンターをお見舞いする。が寸でのところで後方に跳んだ2人はダメージをほとんど受けはしなかった。
「ぐっ、先ほどの様にはいかない、わね」
「フフフフ、これを受け止めるとは只者でないのは確定的に明らかだ、さあ、我らの血となり肉となるのです」
今度は血徒エクイスが攻撃に出る。周囲に広がる血海に手をかざし、先ほどのとげを地面から、自身の前方に大量に召喚して攻撃する。
「キャアッ!」
「ガㇵっ、こいつはやべえな」
「お兄さんたち!このっ、僕だって、僕だって!!!」
護衛対象を守るために4人は前に出て盾となるが、攻撃を受けて怯む。PAのおかげで痛み以外は何もなかったのが良かったため、すぐに起きてUAを手にして構える。がその時、突然切人が亜蘭達4人の前に立つ。
「おい、やめろ!お前に何ができるんだ!」
「できるさ、僕にだって!何時までも、影に怯えて、生きていたくはないっ!応えろっ!マグネットセイバー・プラズマエース!!!」
切人は振り返りながら勢いよく啖呵を切って、精神集中する。すると、彼の背後にぼんやりと騎士の様な何かが現れる。そう、それは半具現霊とも呼べる代物であり、前にハーネイトがスカーファと出会った際に目撃した、潜在的に力を持つ者の証拠ともいえるものであった。
切人のそれは、磁気を帯びた剣を手にし、一振りで血徒の防御を消し飛ばす。しかしすかさず血の針を飛ばして来た。それに対し今度は楓也が内なる力を呼び起こす。彼もまた、潜在的に力を持ち、それと対話してきた者の1人であった。
「今こそ力を貸せ、アスカロット!!!」
「御意!」
終始クールな装いに徹していた楓也は、拳に力を込め天に掲げる。すると彼の背後にも、切人と同じように半具現霊が出現したのであった。
切人のと似て非なる、漆黒の鎧に身を包んだ、禍々しい騎士が静かに剣を構え、強烈な一振りから放たれる暗黒衝撃波で血徒の攻撃をすべて吹き飛ばす。
「何だと?完全に制御できていないはずなのにどういうことだ」
「私たちの時よりやるじゃない……っ」
「フン、お前も同じ力を持つのか。これも運命という奴か?」
「はあ、はあ、どうだ化け物め!」
今まで警戒していなかった存在が、急に自身の攻撃に対応できるような力を見せたことに血徒は驚き、話を聞いていないぞと言わんばかりの顔をしながら後ずさる。
「くっ、何故攻撃を。……そうか、ちっ。もうここにいる必要はないか」
「待て!貴様!」
「フッ、どういう原理で力をつけたかはわからんが、次は覚悟しておけ!我らが計画の前に、絶望に屈した顔を見せてくれよハハハハ!」
そう言い放ったエクイスは、その場からすっと姿を消し、それに伴い汚染されていた地面はすべて元に戻ったのであった。慌てて五丈厳たちは追いかけようとしたが、間に合わず少しの間、呆然としていた。
「っ、逃げ足の早いことだ」
「嘘でしょ……この子たちも」
「驚いたな、だがまだ荒すぎるぜ。制御がまともになってねえし、疲れの表情が出てやがる。俺たちでさえ、慣れるまで制御に苦労したしよ」
自身の背後で、慣れない力の行使からか疲れた表情を見せる楓也と切人を見た五丈厳と初音は、UAトリガーをCデパイサーに格納してからそう言い、やれやれだという感じで2人を見ていた。




