第225話 都市解放作戦・DチームVS B.ドゥンカニ
「フハハハ、飛んで火にいる夏の何とかか。貴様らの運命もこれで終いだ。ヴァヴェシア・ドゥンカニが終命を告げよう」
汚染された広場から、不気味に出現したそれは、名乗りを上げながら手にした奇妙な刃の形をした槍を突き出す。
その名前はヴァヴェシア・ドゥンカニという。学名はBabesia duncani、これはバベシアという原虫系微生界人の一種で、貧血などの症状を引き起こす病をもたらす者である。
「自ら名乗るとは武士かなんかか?」
「フン、これから倒される貴様らが、俺の名前を知らなければ地獄で悩む羽目になるだろうが」
「それはそのまま返すぜ菌の化け物が!」
「趣味の悪い話だな、全く、フフフ」
「それに、儂は菌ではない、原虫の微生界人じゃ!」
ドゥンカニは何故名乗ったのか、響の質問に答えるが、答えを聞いた五丈厳とスカーファは一笑し、武器を構えた。
だが少しだけドゥンカニの方が動きが早く、地面から無数の血でできた槍を発生させ攻撃してきたのであった。
「我が贄となれぇい、呪血鎗!!!」
「ぐっ、装備は無事だが、痛みがっ!」
「五丈厳!」
「大丈夫だ、あの先公の作った装備は、本当にすげえ、へへへ。ここからだぜ、吸血鬼風情が!」
五丈厳は回避に少し遅れ、攻撃を受けてしまうがPAのおかげで物理的な痛み以外の被害は受けなかった。
それに対し五丈厳はハーネイトの研究に素直に感心し、一方で攻撃によるダメージを殆ど与えられなかったドゥンカニは首をかしげた。
「なに?今の一撃、確実に致命傷の筈だが。それと、吸血鬼風情だと?違うな、大世界を生んだものの意思であり手先だぞ我は!」
「驚いているな、今だやれ!」
「勿論ですナビゲーター!CPF・十雷架縛!言乃葉・鋭刃斬だ!」
「俺もやるぜ!黒龍王、黒龍炎華だ!」
思わず動きを止めたドゥンカニに対し、ボルナレロは攻撃指示を出し、それに呼応し響と黒龍がそれぞれ挟み撃ちする感じでCPFと具現霊の戦技を放つ。
響の放った雷の十字架は体を拘束し、黒龍の放つ火炎攻撃が追い打ちをかけた。それは見事に決まり、ドゥンカニの体に傷を入れた。その間に後方にいた京子は具現霊・ナイチンゲールと共に味方に支援を行い、技の強化を行う。
「ぐぉはっ、貴様ぁああ!ぐぉ、馬鹿、なぁあっ、どういう手品を、使ったぁ!何故、攻撃が入るっ!」
「俺たちは一々説明ほど余裕ないんでね!」
「調子に乗るなよ人間が!我ら微生界人こそ、究極の境地に至る存在!」
「だから何だってんだ?うらぁ!」
「処置完了よ、さあ、後はお願いしますね」
痛がるドゥンカニにさらに追い打ちをかける形で各員攻撃し、前に出ている人に対し京子は追加で強化を行うと、敵に対し注射器の弾丸を飛ばし、刺すことで能力をダウンさせたのであった。
「ぐぬぬ、これはっ、小癪な真似を!」
「遅いぞ貴様、もっと楽しませろ!破魔槍・ガジャルグ!」
「ぐぬぬ、何だこの力は!っぎいいいい!」
「そこ!水竜巻」
そこに、空からはスカーファ、ドゥンカニの背後に星奈が位置取り、波状攻撃を仕掛ける。闇を祓う神々しい槍と、荒れ狂い全てを飲み込む水の奔流による攻撃により、彼は相当体力を消費していた。
「はあ、はあ、何故攻撃が、刺さるのだ……むぅ、これは!」
「驚いてるみたいだな。悪いが、霊量子の力ならお前らも倒せるってな!」
「ハハ、道理でな。おかしいとは思ったぞ。……くっ、ヴァリオラ様に永遠の命をもらえば、他の生き物などに頼らず、生きていけるのに、な。今日のところは引いてやる、次は覚悟しておけ」
冷静になり、ようやくカラクリが分かったドゥンカニは、最後に思っていたことを吐き出すとすぐにその場から跡形なく消えたのであった。
「こっちもこれで終わりか?」
「永遠の命?それが向こうの目的?でも分からない……U=ONEのことなら、ハーネイトさんに頼めばいいのに」
「俺はそれだけじゃないと思うがな」
「違和感しか残らないわね。血徒は、何を目指しているのかしら」
最後に言い残したセリフが気がかりな響たちは、それもハーネイトに伝えるべき話だと思い急いで準備をする。
「その真相を知るのも、俺たちにとって大切なことだと俺は思う」
「そうね……響」
「どちらにせよ、向こうがこちらの勧告を聞くならそれもよし、そうでなければ、全力で叩くまでだ」
「ほう、戦うことにしか興味がないと思っていたが」
「フッ、ハーネイトの影響を私も受けているか。どうもな、私もおかしいと思う」
この戦いの結末を、自分たちは見なければならない。響と彩音はそう思っていた。
また、スカーファは何かを感じたのか、血徒の中にもいやいやながら従っている者がいると思っていた。
黒龍は意外な彼女の意見に驚くも、伯爵やエヴィラのような存在もいるしこちら側につく奴がいるかもと思い、きれいになった広場をじっと見つめていた。
「そうだ、血徒も元は、伯爵という男と同じ微生界人という変わった種族なのだろう?今思えば、どうして彼らは道を違えたのかが気になってな」
「てことはよぉ、先ほどあの血徒が言っていたヴァリオラ様とかいう奴を見つけ出してどうにかすりゃいいんだな?」
「そういう、ことでしょうね」
血徒の真の目的を探るため、彼らはそう決断し、響はそのあとハーネイトに連絡を取った。報告を聞いたハーネイトは、ホッとするも彼らからの話を聞いて少し言葉が詰まる。
「北海道の方も、無事に終わりましたね。お疲れ様です」
「はい、先生。次はどうしますか」
「……、ともかく、一旦春花に戻って皆さん。休憩なしに、いい仕事はできない」
「分かりました、これより帰還します」
こうして、4地域で発生した血徒出現事件はひとまず解決し、各都市の汚染を防ぐことはできたが、これはまだ前座であり、真の恐怖はこれから始まるのであった。




