第222話 都市解放作戦・Cチーム
名古屋(C) ジェニファー 彩音 翼 亜里沙 亜蘭 宗像 ナビゲーター ミタカ
「名古屋については私がナビゲート致しますが、他の地域でも同様に、結界石などがない状態ですね」
「そうじゃな。ということは、全部この赤い血の沼らしきものは血徒によるものか」
「血の沼どころか海みたいですよ宗像さん」
「うむ、そうじゃな亜蘭殿」
ミタカの指示で現場に誘導された6名は、その光景を見て思わず固まっていた。既に被害者が、変異して血屍人として血を求め彷徨っていたからであった。これ以上の被害は出せない。しかしそれを可能にできると彩音たちは信じていた。
「魔界の人たちと戦っていた時よりもやりづらそうね。でも、私たちには先生と先生が開発したすごい物がたくさんあるんだから!」
「そうですね。何よりも、ジェニファーさんが大喜びですでにトリガーを使っています」
「やる気十分すぎだな彼女は。まあいいさ、僕たちもやろう」
「そうじゃな、早くあれを倒さなければ、泣く者が増えるぞ」
5名はそうして準備を完了させ、具現霊を召喚する。しかしジェニファーは、どこか遠くを見ながらあることを思っていたのであった。
「ありがとう先生、私のためにも、こうして使いやすい道具を作ってくれた。だから借りは、戦いで返すわ。カラミティ、行くわよ!」
作戦に参加する前から、ジェニファーはどこかいつもと違う様子を見せていた。そう、自分の提案したことがこうして形となったからであった。
事実彼女の持つ具現霊も遠距離型であり、霊媒刀は持っていても使いこなせずにいた。憑依礼装はある程度霊量子の扱いに慣れなければ運用自体が非常に厳しいが、加入時期が遅い彼女にとってはやりづらいことこの上なかったのであった。
しかしこのUAがあれば問題がない。彼女は自身の意見をくみ取ってくれたハーネイトのために、秘かに練習していた技を繰り出した!
「了解……!アウトレイジブレイク!」
「いきなり大技?武器が違うとここまでなの?先生、もしかして……でも」
ジェニファーは具現霊カラミティと共に敵陣に突撃し、それに合わせ周囲に銃撃の嵐を巻き起こし、最後に敵陣を突破した後そのまま背後に射撃を連続で加え、血屍人10体を纏めて葬り去ったのであった。
その光景を見た彩音は、彼女の喜びようからハーネイトがジェニファーに対し好意を抱いているから研究開発したのではと思い浮かない顔をしていた。
実際はそうでないが、彩音はどこか腑に落ちないなと思い、それに気づいた翼が声をかけた。
「彩音、今は余計なこと考えるな。俺はこれどう使えばいいか分かんねえが……おっ、俺専用に具足を?さっすが兄貴!」
「ご、ごめん翼君……ってこれは、私が得意な薙刀!しかも両刃のがあるわえへへへ」
翼はノリノリで自身に合う武器を見つけ使用、彩音も、召喚する武器の中に自分が競技で使っていたような薙刀を画面で見つけ、フレームの端にある言葉を見つけると、彼女は吹っ切れてからUAトリガーで武器を召喚、そのまま頭上で回転させながら切り込み、自身を起点に汚染箇所を大きくまとめて吹き飛ばしたのであった。
「わしは近距離戦に向かん具現霊だが、その分遠くから仕留めさせてもらうぞ。マカミ、煙霧息吹を頼むぞ」
そんな中宗像は、自身の間合いを十二分に理解し、5人とは少し距離を取り、遠方からの支援攻撃を徹底するとチーム員に告げる。
それから具現霊マカミに対し煙幕を展開するように指示を出し、身を隠しやすいように場を整えた。
「年寄りには、こういう機械の扱いは慣れんがのう、やるしかない。UA・スナイパーライフル召喚、さて……早速仕留めるか」
それから彼は、UAトリガーをしっかり握ると狙撃用の長銃を召喚し、すっと構えてから他の個体と見た目が違う血屍人に狙いを定め、霊量子エネルギーレーザーを銃口から放つ。それは一直線に向かい、狙った標的の頭部に直撃し吹き飛ばしたのであった。
「これでも、我が家は様々な武道を極めてきた護国の一族。ならば!」
「ほう、そいつはいいな亜里沙」
「はい兄さん、このUAトリガー・長太刀で!覚悟っ!」
「ウギャアアア!」
同学年の仲間が大暴れし、それを見ていた亜里沙も負けじと具現霊と息を合わせ、武器召喚を行い真正面にいた血屍人数体を、一刀両断しつつ碧緑孔雀の放つ祓風で浄化したのであった。
「相変わらずすごいですね皆さん。もう赤く染まった場所があんなに。では行きますよ!僕の華麗な戦技に酔いしれなさい!UAトリガー・ツインハンドガン!&ゾロ、響鳴のシンフォニアで蹴散らします!」
亜里沙が突破口を作ったおかげで、亜蘭も奥に進み、周囲八方から迫る血屍人に対し、具現霊と連携した銃の乱射を実行、具現霊ゾロは回転しながら手にした剣で旋風を生み出す。
「うぉ、亜蘭の兄貴もよくやるなあ」
「皆、鍛錬を欠かさず行っている。翼、お前ももっと行けるはずだ」
勇敢に突撃し蹴散らす亜蘭を見ていた翼も、ロナウに促され攻撃態勢に入る。思っていた以上に豊富な武器データがCデパイサーに登録されていることに翼は、心の中でハーネイトに感謝しながら、気合を入れて垂直飛びで上空に上がる。
「んだなロナウ!やるぜ、CPF・バーストモード!ついでにおまけだぜ!」
「俺も決めるぜ、魂を燃やせ、プロミネンスボレー!」
翼はCPFを連続使用しながら、空中爆撃を行い、ロナウも翼の背後から火炎弾による支援攻撃を行う。その攻撃を浴びた、彷徨える血屍人は次々と焼かれていき、血徒による肉体の支配から解放されていくのであった。
「っしゃあ!相当片付いたぜ。やっぱ兄貴の研究はすげえや」
「そうね、こんなになじむなんて驚きだわ」
「ハーネイト様が苦心されて作り上げたこれを、私たちは感謝して使わないといけませんね」
「全く、我らにたてつくとは大したものだ。だが、後悔することになるぞ」
UAという新技術、新装備の性能の高さに驚きながらチーム員は感謝していたが、そんな中不気味で不吉な声が領域内に響く。
するとそれからすぐに、呪血で汚染された道路の中心部から、一人のやや大柄の男らしき者がずずずっと出現し、赤く燃えるような目で彩音たちを睨みつけたのであった。




