第219話 都市解放作戦・AチームVS血徒スフティス(SFTS)
「このぉ!!纏めて叩いてやるぜ!」
「待て九龍、何かが地面から出てくるぞ!」
「こんなもの居るのかよ、血の蛇かこいつは」
「おやおや、この中を動ける存在がいるとは」
「中央に誰かいるな、貴様は誰だ!」
血徒の呪血より現れしその異形は、その周囲にいくつもの大きく禍禍しい触手を地面から生やし、その中央に人らしき者が立っている姿であった。
何かを従えているのか、それとも体の一部なのか、それはともかく、今まで出現していた血屍人とは比べ物にならないほどの力を見せていた。
「我が名は、スフティスと申します。フフ、少々遊んでいただけますかね?」
「スフティス……?」
どう見ても異形の存在にしか見えない、血徒17衆が1人。その名はスフティス。SFTSこと、重症熱性血小板減少症候群の原因ウイルス体である。
銀髪パーマの髪形に、全身黒タイツで身を包んだような姿で、赤い不気味な紋様が体中にまとわりついており、常に余裕を崩さないその立ち振る舞いが目につく。
ルべオラと一時期行動を共にしており、彼女がU=ONE化したことも聞いている。そのため、彼は独自にその原因となった存在との接触を狙っているようである。
「ざけんなようじゃうじゃ野郎!とっととここから出ていけ!」
「まるで猪武者と言いますか、無謀ですねえ」
「ガアアアアッ、くそぉお、何だあれはッ」
九龍は頭に血が上り、マスラオウと共に突撃を仕掛けたが、寸でのところで触手に大きく叩かれ、防御には成功したが大きく吹き飛ばされ建物に激突する。
「迂闊に近寄れないな。九龍よ、CPFを使った方がいい」
「っ……見てえだな文香のパパさんよ、俺と時枝、初音姉さんでCPFと遠距離攻撃を、残りで叩いてくれ」
文治郎はすぐに九龍のもとに駆け付け、彼女の様子を見るが、PAのおかげでほとんどダメージは負っていなかった。
迂闊に近づけないなら、遠距離攻撃を主軸にし、隙を見て懐に入ればいい。九龍はそう思い連携を取るために指示を出した。
「分かったね!ケイトク、虚空斬波!私も!CPF・バーストモード!」
「親父、衝撃波でやってくれ!俺はこいつを使うぜ、UAトリガー・サブマシンガン!」
2人は息を合わせ、スフティスに対し攻撃を加える。瞬麗は具現霊ケイトクと自身のCPFを同時に繰り出し、九龍はハーネイトからもらったUAトリガーの力でサブマシンガンを手元に召喚し、霊量子の弾丸を浴びせながらマスラオウにも衝撃波を撃つように指示した。
音峰はスピードを活かし撹乱しながら、ベイオウルフのヘルバイトブラストによる衝撃波で責め立てる。
「喰らえ!この化け物が!」
「忍法・爆閃光華!こいつならどうじゃ血徒よ」
攻撃で怯んだ隙に文次郎も空中から火炎弾による攻撃を行うが、触手を前面に展開し、スフティスは完全防御の構えになり、全ての攻撃を受け止めたのであった。
「ククク、すこしはやるようだ。だが満足できないね。串刺しの時間だ!」
しかし怒涛の攻撃により、幾つもの触手を消し飛ばされたスフティスは驚くも、残りの触手を地面に打ち込み、地下から攻撃を仕掛ける。
「なっ、足元からだ!」
「きゃあ!服が……っ!」
「PAが無かったらアウトだったな」
「ほう、今の一撃を防ぐとは……どういう手品だ」
「手品もへちまもある物か、まあ、」
全員がスフティスの赤い触手による攻撃を受けたが、PAの防御機構によりダメージは霊量子バリアが肩代わりし、わずかな衝撃だけが体を伝わるだけであった。
それを見たスフティスは、なぜ確実に通るはずの攻撃が防がれているのか不思議でたまらず、一歩後ずさる。
先ほどのもそうだが、目の前にいる人間からは明らかに只者でない、いや、ヴィダールの気運を感じることに彼は若干怖気づく。
「先ほどからおかしいと思っていましたが、まさか……貴方達はあの力を宿す者か」
「だとしたらどうする微生物お化け!」
「っ、ならばこれを受けて見なさい!噴血弾っ!」
「無差別攻撃か!」
「させるかよ、レンザーデビル!あれを焼き払え!」
そのヴィダールの力は、果たして本物なのか。スフティスはそれを試すため、自身の体から無数の血弾を周囲に無差別に放つ。
しかしそれを読んだナビゲーターの大和は、具現錬レンザーデビルの放つ光線を照射し、血弾のすべてを分解することができた。
それに対しますます彼らに興味と恐怖、両方の感情を抱くスフティスは、ある質問をする。
「何と、まさかまさかと思いましたが貴方達、やはりヴィダールの力を持っていますね。並の生命体では、今の攻撃を防御することも、消し飛ばすことも叶わない」
「持っているとしたら、どうする!」
「そうですねえ、やりづらい相手、というべきですか。……私もU=ONEにさえなれれば、おかしくなった同胞を止めることも……」
スフティスは、先ほどから感じていた違和感の正体が、時枝たちの纏うPAから感じるヴィダールの力、つまり霊量子の力であることに驚きを隠せず、先ほどよりも焦りの表情を見せる。
「同胞を止めるだぁ?」
「そうですよ、猪武者さん」
「俺は九龍だ!」
「血気盛んな人は、少し苦手ですね。ルべオラ様もあれですが……」
スフティスの言葉に九龍が強く反応し突っかかるが、彼は彼女の勢いに押されそうで困惑しつつ、元々協力関係にあった血徒ルべオラのことを口に出した。
「彼女を知っているんだな?」
「え、そちらもですか」
「そうだ、彼女はその、U=ONEとなってこちら側にいるんだが」
「そうですか、ルべオラ様は夢を叶えることができたわけですね。ということは、貴方達はハーネイトという男はご存じですね?」
時枝と文次郎はそれぞれそう言い、スフティスに対しルべオラはいまどうしているかを話した。それを聞いた彼は、どこか喜んでいるようであった。
その上で、彼等こそあの男と関係があると確信しある質問をする。それを聞いた九龍と瞬麗は、一瞬顔に驚いた表情を見せた。
「っ!」
「一瞬焦りましたね?できるだけこういう時も平静を保つのがよろしいでしょうが、彼についてはエヴィラとルべオラから聞いております」
「ちっ」
「なので、今日は引きましょう。どこかで、ハーネイトという人物と出会いたいものですが」
そう言い残すとスフティスは、笑いながらその場から忽然と姿を消してしまったのであった。
「逃げていったぞ……」
「あのルべオラを知っている?」
「怪しいな、あのスフティスと言う奴は」
「どうなるかとおもったな。だが汚染場所が残っている。急ぐぞ」
「言われなくても行きますよ!」
スフティスを撤退させた後も、音峰達は全力で汚染箇所の浄化を行い、無事に任務を終わらせることができた。時枝と大和が代表してハーネイトに連絡を入れる。
「先生、こちらは沈静化しました。汚染も除去できましたよ」
「よくやってくれた。スフティスか、ルべオラの話していた17衆の一番下の奴だな」
「どうもこちらとコンタクトを取りたい感じでした」
「用心した方がいいが、もしあれなら情報でも引き出せそうかな。ともかくお疲れ様です。最後に状況確認後、ホテルまで帰還し休憩してくれ」
「他の支援に行かなくていいのですか」
「いいのかハーネイト?」
「構わない。嫌な予感がするのでね、少しでも皆さんに取れるだけ休息を」
そういうのなら仕方ない、そう思ったチーム員は全員、一旦春花に帰還することにしたのであった。




