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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第192話 番外編・泳げないなら(海底を)歩けばいい



 矢田神村での激闘から数日後、特に何もなく響と彩音、翼は、学校終わりにホテルを訪れ、エレベーターで屋上に上がってから街を見下ろしていた。


「ふああ、天気がいいなあ」


「こういう時は、屋上でお昼寝も悪くないわね」


「兄貴とか普通に寝てそうだけど」


 最近はこうして話すのも楽しい一時である。和気あいあいと最近のテレビの話題やある有名人の結婚など、話の話題は尽きず話続けていたそんな中、彼らはあるものを見つけていたのであった。


「あれ、父さんと文治郎爺さんじゃねえか?」


「担架で誰かを運んでいる?」


「手伝った方がいいかしら」


 彩音はそう思い先に動いてエレベーターに乗り込もうとする。それを追いかけ2人も乗って、1階に到着するとホテル裏口より外に出て、何があったのかを確認した。


 一体誰が、どうしたのだろう。しかも病院でなくこのホテル。3人はまさかと思いながら大和たちのもとに駆け寄る。


「父さん!一体何が……って兄貴!?」


「せ、先生!何があったんですか?まさか、事故に巻き込まれたとか?」


 担架に乗せられていたのは、意識を失っているハーネイトであった。なぜか海の香りがするのに気づいた3人は、まさか溺れたのではないかと思い心配し運ぶのを手伝う。


「ひとまずベッドまで運びましょう」


「気を失っているのか?」


「そうだぜ。しかも正直しょうもない理由というか」


 事は数時間前にさかのぼる。というか厳密には前日のあるやり取りから始まる。ハーネイトの話題をしていた響と彩音、それに間城と時枝に亜蘭はある噂について話をしていた。


 それは、先生である彼が泳げないということについての話であった。それを聞いて彩音が放った一言を偶然ハーネイトは聞いており、それだと思うと翌日、仕事を手早く片付けてから大和に頼んで大阪まで海に連れて行ってもらったという。

 

 さて、ここでなぜ彼が海に行きたいと言ったのか。それは海の底を歩けるかどうかという実験を試したかったという理由である。


 そう、彩音が放った一言とは、泳げないなら(水底を)歩けばいいじゃないという、どこぞで聞いたような言葉の亜種であった。それを偶然資材整理のために通りかかったハーネイトは聞いてしまい、興味を抱いたのであった。

 

 その結果どうなったかというと、普通に成功していた。まあ予想の範疇というか、彼は創金術で金属の管を作り空気を会場から吸っていたのであった。


 さながらその絵面は、海面を動く鉄の棒というシュールにしてホラーな現象であったのは言うまでもない。


 ただし、本人はその気になれば呼吸などいらないのでそこまでしなくていいのだが、海の底を歩くということにあまりに集中していたため、一応保険をかけていたとのことであった。

 

 そんな中ハーネイトは、海中に様々なゴミや不発弾などを見つけていた。せっかくなどで綺麗にしていこうと創金術で片っ端からごみをきれいにし、作業前後の記録も写真に撮ると魚たちと戯れていた。これを聞く限り、彼は変人にしか見えない。


 そこに通りかかるは一隻の漁船。怪しく動く鉄の管が海面から伸びているのを見て思わず声をかけた船長は、次の瞬間垂直に、勢いよくトビウオのごとく海面に上がってきたハーネイトを見て腰を抜かしたが、彼の顔を見た瞬間はっと思い出した。

 

 この漁船の船長は以前、春花記念病院に入院していた患者であり、左足切断のためリハビリで義足を装着していたのであった。その際に星奈と京子を助けるため、病院を訪れたハーネイトはうっかり病院全体に治療魔法をぶっ放してしまった。

 

 その結果、ふつうあり得ないことだが切断されていた左足が生えてきたという。思わず己が目を疑う男であったが、夢でないことが分かると喜んでいた。


 そのあと偶然街中で有名になっている探偵事務所の所長がその原因であるかもしれないと思っていた矢先、こうして奇妙な出会いで2人は対面したのであった。


「だ、大丈夫か若いの」


「全然大丈夫です~!」


「そうか、良かったら船に乗っていかんかい?」


「あ、ではお願いします……海の底を歩いていたら場所が分からなくなって」


 ハーネイトは空中で返答すると、再度海底まで潜ってから思いっきり踏みしめてジャンプし、今度は空中に飛び出すとくるくる回転しながら、新体操の選手の如く漁船の甲板に着地し船長の目を丸くさせたのであった。


「はあ……変わった人だ。……まず、一言。この前、俺の脚を治してくれて助かった、礼を言う」


「えぇ……一体どういうこと?って……まさかあの病院の事件の時に?」


「やはりそうであろう、他の患者も同じように喜んでいたからな」


「なぜあなたは足を切断、されていたのですか?事故によるもの?」


 話を聞くに、このもうすぐ60にもなろうかという逆立った髪とハチマキがトレードマークなこの船長こそが例の恩恵を受けた男である。


「巨大鮫に、海に引きずり込まれてな。仲間の船に助けられたが、足を食われてな」


「それで、私の術で脚が治ったわけですと」


「その通りだ。しかし、どういう手品かはわからんがの、これで再び漁に出られるわけだ、感謝する」


 船の上でそのようなやり取りがあり、船長は自己紹介をする。名前は海 錬次郎と言い、45歳でベテランの漁師であるという。ハーネイトも改めて自己紹介をすると、海の底で何をしていたのかという話になり、ハーネイトは写真撮影で撮った写真を見せながら説明すると、握手を求められなすが儘に応じる羽目になった。

 

 それは少し前に起きた土砂災害による流木やごみが海の底に沈殿しており地引網漁などに影響を及ぼしていたからであり、それを除去した彼は感謝されたというわけであった。


 問題はこの後である。港まで運んでもらったハーネイトは大和と合流し、錬次郎の飲み仲間と共にもてなしを受けたのであったが、出された海の幸たっぷりの料理が今まで食べたことのないものばかりで、情報量がオーバーフローして盛大にぶっ倒れ眼を回したのであった。


 それでこうして、ハーネイトはホテルまで運ばれた。以上が一連の経緯である。なぜ倒れたのかは、彼は深い山の中で育ったため、海の物を食べる経験が乏しく、慣れない味に頭が混乱してしまったという理由であった。


「先生、冗談通じない人?」


「いや、そうではないと思うけどなあ。でも先生研究好きだから、実験も好きでこうして……」


「現にこちらの出したアイデア、全て採用されて実現しているもの」


「兄貴……何やってんだか。だけど、いいことしたな」


 彩音は少々先生の言動に不安を覚え、それに対して響はフォローを入れる。翼は2人の言い合いを見ながらも相変わらずハーネイトはいい人だと思っていた。


 実は数か月前の大雨などで海に河川から流れたゴミが沈殿しており、漁師たちを悩ませていたという。それをきれいにした彼の行動に、素直に感動していたのであった。


「そうだ、彼は海をきれいにしてくれたのだ」


「貴方は……まさか例の漁師さん?」


「ああ、海 錬次郎と申す。この度は君たちの上司に迷惑をかけてしまったな」


「それは問題ないと思います。足の方、治ってよかったですね」


「有無、正直今でも夢を見ているかのようじゃがな。……不思議な男だ」


 錬次郎は苦笑しつつも、再生した脚を見ながら、まだ気絶しているハーネイトの方を見て一礼した。


 変わった男であるなと思いながらも、その対応や行動、言葉遣いなどはとてもいい青年だと認識した上で、自身の素性も明かしていく。


「大阪の方で漁師をしている俺だが、何か仕入れなどに関して要望があれば言ってくれ。そこで寝ている彼への礼も兼ねて、このホテルまで良い魚を運送しよう」


「それはすごいな。錬次郎さん、その件についてはこのホテルのオーナーやスタッフと相談する形でお願いします」


「分かった。他にも彼に感謝しておる人は多いぞ。……では、俺はこれで失礼する」


 錬次郎はそう言い一礼すると、別の仕事があると言い事務所を後にしたのであった。その彼の顔は、普段見せる厳しい表情ではなく、どこか笑みを浮かべたものであった。


「先生、貴方が多くの人から好かれる理由が分かってきました」


「人たらしというか、接するときに一切嫌みがないというか」


「妙な魅力のある男だ」


 見送った響たちは、錬次郎の嬉しそうな顔を思い出しながら師であるハーネイトが、なぜ多くの人を引き付けるのか。その理由に一歩近づけてそれを口に出していた。


「全く、この人は……もう。さあ、君たちもハーネイトが気絶している間に修行して腕上げよう。俺も、レンザーデビルと共鳴を深めたい」


「じゃあ修練の部屋に行こうぜ親父。なあ皆も来るだろ?」


 大和は鬼の居ぬ間になんとやらと言わんばかりに、響たちに対し修行相手を申し込んでから、全員で修練の部屋に移動し、スパークリングなどをして基礎能力を高めていたのであった。

 

 その翌日の朝、普通に目を覚ましたハーネイトは、置手紙を見ると一通りベッドメイキングを済ませ、身だしなみを整えてから急いで部屋を後にし、宗次郎の依頼をこなすため奔走していたのであった。


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