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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第190話 今は勝利を祝おう


「ハーネイト、帰ってきたか」


「はい、宗次郎さん」


「そうか……うまくいったのか?」


「はい、これでこれ以上魂食獣などによる被害は出ません。敵組織は崩壊しました。」


 その報告を聞いた宗次郎は、よくやったなと彼を抱きしめたのであった。今は話からでしか状況を把握することはできないが、それでも彼の顔を見るとうまくやれたのだなと理解した宗次郎であった。


「ハーネイトよ」


「はい、宗次郎さん」


「改めて言わせてもらうが、娘を助けてくれて、私らの名誉挽回も手伝ってくれた礼は、一生かけても返すからな」


「いえいえ、あれも成り行きですから。今は。新たな問題に向けて解決案を出し実行しなければならない局面です」


「まだ、終わってはいないのだな?」


「はい。新たな戦いが、近いうちに起きるかと。そのために今は準備をしなければなりません」


 宗次郎は、娘の亜里沙を助けてくれた時からハーネイトに対し特別な感情を抱いていた。


 恩人であり、実の息子のような、不思議なものであったが決して嫌なものではなく、むしろとてもよく、彼の仕事ぶりや誠実な態度などから彼にはできるだけこの世界にもいてほしいと思っていたのであった。


「それと、1つ言いたいことがあるがいいかハーネイト君」


「はい、なんでしょうか」


「終わって事件が解決して、故郷に戻ってもたまには顔を見せてくれよ」


「そういう話ですか、ええ、勿論ですとも宗次郎さん。しかし、当分この地球にいることにはなりますがね。血徒の野望を止めないといけませんから」


 ハーネイトはニコッと微笑んでから、宗次郎に対しパーティーの様子が気になるので事務所を空けると伝え、部屋を出てしばらく研究室でデータを入力してから、レストランに向かうためエレベーターに乗ったのであった。


 その頃ホテルのレストランは貸し切り状態であり、パーティー会場として非常に賑わっていた。そんな中響は母である京子と共に屋外のスペースに出て、ある話をしていたのであった。


「母さん、俺……」


「響、よくここまで成長したわね。天国にいる勇気さんも、貴方の今の姿を見て安心していると思うわ」


 京子は少し元気のない響に対し優しく言葉を返し、歩み寄ると普段見せない優しい表情で彼を慰めた。響は自分の持つ具現霊が実の父の魂を宿していることを言おうとしたが、


「……俺、母さんに言ってないことが」


「ええ、響の具現霊、それが勇気さんの魂が宿っていることは知っているわ」


「……うん」


 既にそれは京子自身も把握していたのであった。だからこそ、そのことについては口に出さずに2人を見守っていたといいながら夜空を見るように響に促す。


「静音も、そろそろ帰ってくる頃ね。もうあの時の暮らしはないけれど、皆集まって、幸せを分かち合える。……私ね、ハーネイトさんたちに出会えてよかったと思うのよ」


「いなかったら俺も危なかった。……変な人だけど、強さと優しさを兼ね備えたすげえ存在だって」


「そう、ね」


 思えば、自分があの亀裂に近づかなければ、そこにいたハーネイトと伯爵に合わなかったら自分は何をしていたのだろうか、あるいは死んでいたのだろうか。友を救うことができなかったのだろうか。そう思うと彼らとの出会いは本当に大切なものだと再び実感していたのであった。


「おーい響!それと京子おばさん、料理冷めちゃうぜ」


 そんな中翼が片手に料理を乗せたお皿を持ちながら二人に声をかけた。翼は体育会系の部活に属しているからかよく食べる。


 響は相変わらずだなと思いながらも友である翼がすごくうれしそうにしているのを久しぶりに見たなと思ってもいた。


「ああ、今行くよ」


「私たちも食事を楽しみましょう、響」


「うん、母さん」


 そうして2人は再びレストランの中に戻ると、食事を楽しんでいたのであった。一方間城たちは食事をせっせと皿にのせては食べまくりながら伯爵と話をしていた。


「あれ、そういや先生は?」


「ああ、相棒は用事を済ませてから来るってよ。本当にあいつは生真面目なところが……なぁ」


「早く来て話をしたいな……ふう、これで1つ、恐ろしい事件は解決できた。そうだけど……」


 本当に、今祝っていいのだろうか、間城はある不安を口に出した。新たな敵の存在を知った今、それも今後何をしでかすか分からないし、目的も分からない。それが怖くてしかなかったのであった。


「おいおい、今は気にするな間城ちゃんよぉ」


「そ、そうね。……ひとまず、乾杯ね!」


「ああ、こういう時はとことん祝うに限る」


 そんな間城を励ます伯爵は、いつになく楽しそうにしていた。


 彼もまた、勝利を共に祝い喜ぶ楽しみを理解した1人であった。すると伯爵の言葉に乗る形で、すぐ近くでジュースを飲んでいた時枝は少し格好をつけてから楽しんだもの勝ちだと間城に言う。


「いいこと言うじゃねえか時枝」


「ブラッドさん、大分飲んでいますね?」


「あたぼうよ、仕事した分飲まなきゃやってらんねえぜ。さあ、勝負だボガー!」


 時枝の言葉を聞いたブラッドは、ボガーの肩を抱きながら飲み比べだと笑いながら酒をボトルごと飲み干していく。


 少し困っていたボガーをヨハンたちが助けようとするが止まらない。ジェニファーや九龍が止めに入ろうとし場は更に賑やかになる。


 それを少し遠目で見ていたエヴィラは、いつもの冷徹な表情を見せずに大人の女性として蠱惑的に微笑みながら、人間たちのやることは理解できるところとそうでないところがたくさんあると伯爵に口をこぼす。


「……みんなこうして、楽しそうにしている。それを見て自分も嬉しくなる。昔なら、分からなかったわ、この感情は」


「それは俺もだぜエヴィラ。だが、それが人という心を理解したってことじゃねえのか」


「……そうね。……血徒の動きが気になるから私は先に上がるわね。私も、この世界を守りたいわ。彼が愛してやまない、新世界をね」


「ああ、慎重にやれよな。ブラッドクイーン」


 かつてはエヴィラも、エボラ出血熱として多くの命を喰らってきた恐怖の存在であった。だがそれは、踏み込んではいけない領域に入った人間たちへの警告でもあった。


 力の制御ができず取り付いた存在を殺してしまう自分たちの宿命が何よりも嫌で、それを克服しようとしたのが血徒の始まり。だけど意外な形で真の力に目覚め理解した彼女は、今までの償いとこれからの未来を守るためにアルティメットワンとして、皆と共に戦う覚悟をすでに決めていた。


 というのだが、実は彼女、人間に感染したことがないのである。先ほどの話は先代についての話であり、実は自分がある計画のために生み出された試験体であるということは、絶対に隠していたのであった。


 それをルべオラは見抜いていた。人の血の匂いがほとんどしない、それが理由であった。エヴィラはルべオラやアントラックス、ぺスティスに対しあくまで最強のU=ONEは私であると豪語するのだが、本当はある理由で伯爵の方が更に上であるという。


「こんな所にいるとはな。あやつらに交じって楽しめばいいじゃないか」


「そうさせてもらおうかのう、ハハハハ!誠に面白いのう!」


「全くルべオラ様も、大分砕けましたね。あれだけ人間嫌いだったじゃないですか」


「U=ONEになったからのう、怖いものなしじゃ!」


「もうあんな薬に怯えなくていいぜ」


「太陽も、水も、熱も、生存を脅かすものはほとんどない。ついて来た甲斐はあった」


 伯爵は、少し離れたところで話をしていたルべオラたちにも声をかける。


 3人ともU=ONE化し、新たな人生を謳歌しているようであった。そのやり取りを見て彼は、エヴィラやルべオラたちの決意と想いを十二分に理解し、昔の自身と重ねて見ながら彼女の後姿をしばし見て、それから再び祝いの席に参加して場を盛り上げまくったのであった。


「もっと祝うしかねえな!料理長にオーナーさんまで来てるじゃねえか。今日は1つの区切りだ、とことん祝うぜ!」


「全く、でもたまにはいいかしら!」


「伯爵さんたち、こっちに来てよ!」


「さんはいらねえって、へへ!」

 

 伯爵は間城たちの声掛けに応じレストラン内に戻る。それをエヴィラ達も追いかけ、謎の宴会芸で場を盛り上げるのであった。


「全く、皆何やってんだか。まあ、一区切りついたしたまにはいいよな。俺も楽しむぜ」


「みんな好きにやっているな。フフフ」


「やっと終わったか相棒!さあ、主役来たでお前ら!」


 そんな中、ハーネイトもようやくレストランに到着したが、大分出来上がっている人が多く彼はやれやれだといいながら机に置いてあったぶどうジュースをグラスに注ぎ、全員と乾杯をする。


「先生、今日は特に楽しくいきましょう」


「ああ、そうだな響。皆さん、ここまで強くなって私は今、猛烈に感激しているぞ!さあ、遠慮はい

らないよ!飲もうじゃないか」


 珍しくこのような場でハーネイトの素の姿を見た響たちは、驚きながら会話を楽しんでいた。一見堅物そうにも見えることがあるが、彼の正体は結構ノリのいい、優しいお兄さんなのであった。


 するとハーネイトの背後からレストランの料理長である天王寺が抱き着いてきて彼は驚く。


「ええ、ってわっ!料理長さん?」


「よくやったな、全くよ!宗次郎様から話には聞いていた。これで、恐ろしい事件も収まるんだと」


「はい、今のところはですね。まったく、皆さんはめを少々外しすぎでは?」


「良いではないか!」


「天王寺さん、少しは自重なさい」


「雨月オーナー、彼らは数々の怪事件を解決した英雄だ、我らも祝うしかないだろう」


 料理長の天王寺も普段とは違う顔でハーネイトに絡み、ねぎらいの言葉を送りながら豪快に酒を決めていた。


 ハーネイトたちが何をしているのか、事情を聴いていたホテルのスタッフたちもどさくさにまぎれ祝いの席に参加し、みんなと意気投合していたのであった。


 生まれた世界こそ違えど、こうして仲良くなれる。その光景を、彼は微笑ましく思いながらここまで来た甲斐はあったなとしみじみに思い、祝勝会を楽しんだのであった。


 そのあと夜遅くまで、ホテルの関係者まで巻き込んだ祝勝会は続いて、結局高校生である響たちやその親族の人以外はホテルで一夜を明かすことになったのであった。


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