第189話 女神代行と言う呪縛と代償
「女神代行って、結局ソラっていう存在の都合のいい存在?」
「なんか、言葉の響きはかっこいいんだけど……やらされていることは何だかな」
「でも絶対大変だぜ、兄貴……。それに、世界龍だと?」
彩音たちは、先生であるハーネイトがある任務を拝命されてこの地球に来ていたことは知っていた。その1つが異世界浸蝕現象の調査であり、その中で自分たちは事件に巻き込まれ助けてもらった。それが出会いである。
また、血徒の件と行方不明になった兵器を探すという任務の他に、女神ソラの代わりに、行方が知れない36柱のヴィダール神を探し連れてくるという途方もないその任務を、翼はいつまでも終わりそうにない事業だと思い彼の身を案じていた。それと、全員が世界龍という言葉が気になっていたという。
「何の用だ、何か私に聞きたいことでもあるのか」
そんな中亜里沙は、ある強い決意で勇気を持って、ソロンに対し質問をしたのであった。それは、自身の家柄と関係のある内容であった。
「はい、もう今まで起きたような事件は、起きないと言えますか?」
「ああ、それに関してはそうだと言えるのう。これ以上魂食獣や魔界の住民による被害は出ない。何せ組織の長が今こうして消滅したからのう」
「そう、ですか……それはいいのですけど、しかし……」
「言いたいことはよくわかる。血徒という、ソラが生み出したという手先、そういう存在による災いはこれからが本格化するだろうな。更に別の災い、あの星が迫っているのも事実だ。この先、超エネルギー生命体ことヴィダールの力を分け与えられしものには、恐るべき更なる試練が訪れる。だが、それは乗り越えられる。諦めなければな」
ソロンは何かを含むような言い方をしつつも、彩音たちに対し魔界の住民に関してはもうこちらへの被害はない。それは攻め込む理由をハーネイト達が消したからであると説明する。
その上で、別の脅威がこの先襲うだろうが、協力すればどうとでもなる。そう彼らに励ます言葉を彼は送ったのであった。
「しかして、謎がある。血徒という存在が悪事を働いていることは分かったが、どういうことだ。まず自らを血徒と名乗っていたルべオラもそうだが、それ以外に同様の力を持つ者、しかも我らとさほど出力が変わらん者が数名もおるというのが気になる」
「俺たちのことだなエヴィラ」
「そうみたいね。あの、私も元々血徒だったのですが!ハーネイトの力で神霊化したのです」
ソロンの疑問に、エヴィラが身を乗り出して答える。それを聞いた彼はフフフと笑いながらあることについて見解を述べる。
「ほほう、それは面白い話だな。もしかすると、それはソラの力とお主の力が合わさってできた奇跡だろうな」
「おかげさまで、もう生物に取り付く必要性はないのじゃ!いい奴じゃろ?」
「人間以外にも好かれるとは、この最後の神造兵器は恐ろしい存在であるな。血は、争えない、のかもしれんな。それと、お主封印をかけられたと言ったな」
「はい、前にあのソラに挑んで、イーブンに持ち込んだ代償、ですね」
ソロンはルべオラや伯爵たちの姿を見て、そのカリスマ性に関してやはりソラの母と父の力を受けているのだなと思いながら、ハーネイト及び伯爵に欠けられている呪い、もとい封印の件についてこう話す。
地球に来る前、ハーネイトと伯爵、その仲間たちはソラに対し戦いを挑んだ。それは世界を壊させないためであり、激闘の末引き分けに持ち込むことには成功した。
だが、あまりある力を恐れたソラは、2人に制限をかけるという呪いをかけたのであった。それを聞いたソロンは、ある懸念について話をする。
「力を取り戻すことは大切だが、取り戻していく過程で恐らくヴィダールの神柱らとの戦闘は避けられないことと、あまりソラの力を使うと、彼女の器となってしまう可能性がある。それだけは留意して、行動せよ、ハーネイト・スキャルバドウ・フォルカロッセ」
ソロンはそう言い、力の行使について一応気を付けるようにと言いながら、彼の体を見てある者が埋め込まれていることを理解した。
「それと、6界の龍の紋章、因子、欠片に気を付けたまえ。どうもお前には、世界龍を支配する証が宿っているようだ」
「あの、その世界龍ってのは?ソロモティクス」
「それを知らないのか、困ったのう。大世界を生み出したヴィダールを生み出した、霊龍のことだ。計6体おってのう、それが目覚めれば、今ある世界は終わり旧世界に戻ると言われているが」
「そんなのが……いるのですか」
「世界龍を知りたければ、世界の玉座にでも座ればよい。大世界が生まれた真の真実と、逃れられぬ永遠の戦いの日々をお前は得るだろう。だが、先の話じゃな。一応、片隅に覚えておくとよい」
ソロンは、彼らが言った封印を解除する方法は間違っておらずいい方法ではあるとは言うものの、解除するにつれて敵は増えていくだろうということと、女神の器に絶対になるなという注意を彼に伝えた後、ハーネイトに対し世界龍とは何か、それが何をしてきたかについて話をした後に先ほどの封印に関する話に重ねて続ける。
「現在、わしを封印する楔となっている塔が7つ、あの空間の中に生えている。それに入り、中にある封印を解くことで封印が解かれる」
「……そう、ですか。でそれを私たちに頼むと」
「その通りだ。でないと本来の力を出せない。災星という件に対して、わしもできる限り何かをしたいのだがな、ったく、全く昔の我は何をしていたのか、今はそう思うのう」
改めて、封印開放について説明をしたソロンは、自身の過去の過ちを思い出しつつ、彼の任務を遂行するためにも必要な協力だと改めて強調した。
「一旦この話、持ち帰っても構いませんか?」
「しかたないのう……まあ、魔界の脅威はほぼ去ったようなものだ。好きにしたまえ」
「解除はしますが、疲れたので一旦休ませてください」
「分かってるんだろ、本調子じゃねえんだ」
「そうだな、では我はここで待っておる。何時でもここで待っておる。疲れを癒し、改めて訪れるがよい」
全てを把握しているわけではないが、あの女神ソラが作った存在が大きな災いをもたらす。それを告げたソロンは、それを止められるのもハーネイトたちだけだと説いた。
「一旦、戻ろう。ここまで事態が進むとは思ってもいなかった」
「誰もがそう思うだろうなあおい。だが、嘘をついているとは思えん」
「他に、まだたくさんヴィダールって存在がいるのか」
「それを、探して確保するのが先生の仕事、だって」
「ああ、その件なら近いうちに解決するだろう。だが、それが大いなる試練なのだ。心してかかれよ未来を紡ぐ者たち」
ソロンは最後に、試練が降りかかるときは自身も助け船を出すといい、いい方向に持っていけるようにすると意思を示す。
「今回の一連の事件、本当に感謝致す」
「いいってことですよヴァストローさん。貴方たちの協力もあったからこそです」
「そう言ってくれると嬉しいな。では私は部下を連れて帰ることにする。全員を魔界人及び血徒の檻から解放してくれたこと、誠に感謝する。ではこれで失礼するぞ」
最後にヴァストローは、ぼろぼろになりながらも正気を取り戻した霊騎士たちを集め感謝の言葉を述べる。そして再び会うときは、共に肩を並べ戦いに出ようと約束し、その場を去ったのであった。
それからハーネイト一同は、再びここに来ると改めて約束してから一礼し、そのあと城塞を脱出して異界空間内に入ってから、ハーネイトと伯爵は響たちに対し、ひとまず魔界の住民による被害はこれ以上発生しないと勝利宣言を出した。
しかしどこか浮かない表情を見せる彼らに、ハーネイトは空気を察しながらホテルに戻ろうと促した。
「これからは、元凶を倒す旅なんだね」
「真の犯人が分かったことはいいが、そいつらが今後どう動くかに注目しないとな」
「そんなに浮かねえ顔ばかりしてるんじゃねえよ坊主ども。考えたってどうしようもねえことはある」
響と彩音、翼と時枝は血徒のことが不安であり、ただでさえ強いのにそれ以上の力を秘めている可能性があることが何よりも気になっていた。そんな彼らの顔を見た韋車はそう言い励まそうとする。
「韋車さん、彼らはまだ若いのです。不安もたくさんあるのですよ。本当に、俺はお前らを教え子に持って誇りに思う。どんな状況でも、食らいついていくその心は何物にも代えがたい力だと俺は思う」
「俺たちも、田村先生を初めとした皆さんとこうして出会えたことに感謝しています」
「その出会いも祝福しましょう!皆さんでね!」
田村の言葉を聞いた高校生たちは、自分たちも同じ考えだと答え、彩音はハーネイトや伯爵、彼らの仲間も含め出会いに感謝したいと言う。
「いいこと言うな彩音ちゃんは」
「そうね大和さん、この出会いには意味がある。それを大切にしたいわね」
「そうだな、私も今回の戦いで分かったことがある。それに気づかされてくれる仲間は、貴重だ」
「そうね、もう私たちは1人じゃないわ」
「同じ苦しみを分かち合い、共に脅威と戦う者よ」
そうして誰一人欠けることなくホテルに戻ってきた彼らは、解散し自由に行動していいというハーネイトの指示に従いホテル内の温泉やレストランなどを利用していた。
そんな中宗次郎は、事務所でハーネイトの帰りを待っており、娘である亜里沙と共に事務所に戻ったハーネイトに対し優しく声をかけたのであった。




