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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第16話 連れ去られた少年


 学園内に存在する巨大な一枚岩の上で、霊量迷彩を使いながら座っている2人は次に行うべきことを話すことで確認していた。


「明日は例の図書館に行って、街中の調査と、南側にある六道神社の調査か」


「ずいぶん探偵らしい仕事できているじゃあないか。お望みだったんだろ?」


「それはそうだが……俺は魔法で事件を解決するのが好きなだけであって」


「魔法でみんなを笑顔にするのが好きだ、ってのが真の答だろ?」


「そうだけど、うまくいかないことも多々あるものだ」


 伯爵の発言に対し、ハーネイトは少し残念そうにそう答える。彼は幼い時より魔法の師匠からスパルタ的に魔法の運用に関し鍛えられており、その中で苦しんでいる人を魔法で救いたいと言う思いがあり、精力的に活動していたと言う。


 しかしそれでもうまくいかない時があり、どうすればもっとうまくやれるのかとハーネイトは悔しそうにしていた・


「そうかい、確かに相棒のやり方は、魔法で先に答えを見つけ出して、それを使用していないように理論立てしつつ証拠を集め突きつけるやり方、だったな」


「概ねはね。魔法を信じない人たちもあの当時は多かったもの。今回も周りに影響を与えない程度に使っていくよ」


「まあ、お手柔らかにな。しかし響たちまだかねえ」


 伯爵はハーネイトの捜査手法について触れながら、それに彼がそうせざるを得ない理由を述べながら、2人を待っていたのであった。 

 

 ハーネイトが魔法探偵として活動しているのは、旅の中で魔法をどう生かすかということを考えた末に、凶悪な魔法犯罪者による難事件を解決するための証拠集めや行方不明者の捜索、追跡などについて属性魔法以外の魔法を構築し運用するという、新しい魔法の在り方を研究するためでもあった。

 

 そうして彼は、難事件を幾つも解決し時の人になった経緯がある。いつしか付いた二つ名は、問題処刑人、絶対勝利請負人、無血のハーネイト、救世の英雄などきりがないという。


 しかし本人は、有名になるよりは只管だらだらして気ままに日常を過ごしていたかったのであり、人生とは思うようにいかないといつも実感していたのであった。自分自身に宿っている力を呪い、嫌い、拒絶するほどであり、それが彼の心にも深い影を落としている。



 一方その頃、響と彩音はというと翼の質問に戸惑っていた。響も彩音も、あの時現場で翼の顔を見ていた。


 しかしハーネイトと伯爵が魔法で記憶操作をしたことを前提で話を進めようとした。だが彼の返答は2人にとって驚くべきものであった。


「…何言ってんだ、2人とも。知っているだろうが、俺の身に何かあったことを。そして、緑の髪の男と青い髪で角の生えた男。そいつらと一緒にいたのを俺は、確かにこの目で見た。まさかお前らが誘拐していたわけじゃねえよな?」


「……その逆。翼君も含めて全員助け出し、治療したのは、緑髪で紺色のコートを着た男と、紫の和服を着た青髪の変な人と、子悪魔みたいな女の子よ」


 翼の一言に2人とも表情を固まらせるが、彩音はすぐに立て直しその場にいた事実を認めつつ、彼の言葉に反論したのであった。しかし翼にとって彼らに対する疑念は消えることなく、さらに言葉を浴びせるのであった。それは半ば意地の悪い、彼にとってはある意味妬みを含んだものであった。


「だったら、なぜその場にお前らがいた。説明しろよ、それともやはり犯人は……?」


 その時、3人の間に不吉な何かが通り過ぎるのを感じ、全員が身構えた。そしてその先を見た3人は、廊下の先にある人間がいるのを目で捉えた。そしてその人間は、3人に対し言葉を発した。


「お前らが、私の計画に水を差したな?」


「な、なんだ?この声は。女か?」


 銀色の仮面で顔を隠し、金色のショートポニーテールと編み込みが美しい、黄色と白を基調にした貴族が身にまとい、ふわっとしたスカートと体を締め付ける白銀色のコルセット、細く美しい体が目を引く女性が、彼らの反応を見ながらやや威圧するも高い声で彼らに確認をした。


「ほう、私の声が聞こえるのだな。そこの少年よ。丁度いい、この少年には秘めた力がある」


「はあ?てめえ、何勝手なこと言っているんだ」


「おい翼、あれはこの前の女騎士とよく似ている。逃げるんだ!」


「一旦退きましょう」


「逃がすものか!」

 

 その女騎士は、自身を霊量子で飛躍してあっという間に翼を抱きかかえる。抜け出そうと抵抗しながら翼は、自身を捕まえた女騎士とは違う人物であることに気づくも、華奢な見た目と裏腹に力が強く自分の胴体をを締め付ける腕から抜け出せずにいた。


「ぐ、がっ、なんて馬鹿力だっ!」


「おい、翼を離せ!」


「離しなさい、そこの仮面の人!ゼノンさんの仲間なの?」


「っ、なぜ彼女の名前を。まあいい、確かにそうだ。……今日の夜までに私のもとにゼノンを連れて来なければこの少年を殺す。ここに入り口を作っておいてやる。ここから来い」


 そう言い、女騎士は翼を捕らえたまま近くにある光の亀裂の近くまで一瞬で移動し、姿を消したのであった。


「ちっ、なんてことだ。急いでハーネイトさんと伯爵さんに伝えないと」


「ええ、恐らく今の私たちだけでは、翼君を助けられないかもしれない。そうよ。急ぎましょ。あとゼノンちゃんにも連絡しないと。仲間であるのは明らかだし連れて行かないと」

 

 そうして2人は、待ち合わせの場所に移動するため校舎の3階から霊量子を足から吹き出すことで滑空しながら窓から飛び出し、ハーネイトたちの姿を見つけると一目散に走りだした。


 

 そんな中話し込んでいるハーネイトと伯爵は異変に気付きすたっと武器を構える。と後者の方から慌ててこちらに向かってくる響と彩音の姿を見て違和感を感じ、伯爵が先に何があったかを尋ねた。


「おお、どうした走ってきて」


「大変だ、俺の友人が、翼が仮面を着た貴族のような騎士に捕らえられて、昨日あったような亀裂の中に消えたんだ!ゼノンの仲間だあれは」


「彼女を連れてこないと、翼君の命がないの。ゼノンさんはどこにいるのですか?」


 その説明を聞いた2人は、表情を一変させ、周囲を委縮させるほどの殺気を一瞬放つも、すぐにそれを抑えながらリリーを呼び出し、至急事務所にいるゼノンを呼ぶように指示をする。


「分かったわ、待ってて!」


 リリーは急いで場を離れ、ゼノンを呼びに行く。10分ほどして、ゼノンとリリーが合流する。


「話はリリーさんから聞いたわ。急ぎましょう」


「先生、亀裂の場所を案内します。ついてきてください」


「任せたぞ。実は少し前に、鬼塚大和という人物と会ってな。息子を助けてくれたことをすごく感謝していた」


「そうなのですか、尚のこと、絶対に翼のことを助ける!」


「翼君は、私たちと同じ村の出身なのよ。大和さんもだけどね」


 6人は急いで校内の廊下を走りながら女騎士が消えた場所まですぐにたどり着いた。亀裂に全員が近づくと、一瞬で景色が変わり別の場所に移動させられる。


「これは……。しまった!当たりの奴か」


「いきなり姿を消したのは、これを利用しているから?早く追いかけないと」


「昨日入った亀裂とは雰囲気が違い過ぎる。まるで城の中、しかもかなり高級な雰囲気がする」


「だが明らかに異界の物だ。そしてかなり変質化している。伯爵に連絡しておく。先行するぞ!」


 亀裂から侵入した6人は、その内部空間に驚いていた。昨日のとは打って変わり、まるでお城の中にある巨大な廊下のようなものであった。壁や床の色は茶色を主に置き、装飾品が時々目に入る、不思議な、しかしどこか立派な建物の廊下のような空間であった。

 

 しかし霊量子反応のレベルとパターンは昨日の場所と同じであり、それに全員が気を引き締めていたのであった。それから前に進むこと約5分、彼らの目の前に突然黒い影が現れ、それが実体化した後トカゲのような生物になり突然襲い掛かってきたのであった。


「早速お出ましか、全員構えろ!」


「言われなくても!」


「了解です!」


「醸せ、菌幻自在!退かぬなら、醸してやるぜ何とやら!てなあ!」


「伯爵もやる気だな。では俺もだ、創金剣術・剣乱ブレイドランブル!」


 ハーネイトは敵の間を縫うように、華麗に愛刀・藍染叢雲と自身の周囲に展開した剣を巧みに操りばっさばっさと鮮やかに切り裂き、響と彩音、伯爵も霊量武器と微生物を凝縮した長剣でそのトカゲたちを無駄なく切り裂いたのであった。その間にゼノンも敵の背後を取り一振りでトカゲの首を切り裂く。

 

 魔法探偵でありながら、実際には戦闘を行うことが多いハーネイト。彼の剣裁きはとある剣士の夫婦により鍛えられたものであり、正確さと緻密さ、そして破壊力を兼ね備えた絶対の剣技として力を昇華している。


 元々剣術の素質はあまりなかった方だが、彼は努力と研究の末でに一流の剣士になったという。だがその過程は、厳しい道のりだったと言う


 その姿を見ていた伯爵も、そして直接武技を叩き込んだ響と彩音も剣の腕に覚えはあり、次々と現れる小型の魂食獣を倒していく。


「これじゃ私の出番ないわね、ハーネイト」


「確かに、な。とりあえず敵を片付けたが、まだ先に進めそうだ。進もう。気配もこの先だ」


「おい相棒、あれを見ろ」


「ほお、巨人型か。いいだろう。大物狩りは私の得意分野だ」


 たった数分で20体以上の奇妙なトカゲたちを倒すと今度は、顔と首のない、白い巨人が一体、ずしんと音を立てながらこちらに向かってきたのであった。


 それに全員が冷静に対処し、前衛3、後衛2に陣形を変えて、ハーネイト、響、彩音が突撃を仕掛ける。


「遅い、遅い。せめてこれで楽に果てろ。弧月流・十六夜乱舞!」


「言之葉、言呪・縛!」


「崩れなさい、音解波!」


 ハーネイトは動きの鈍い巨人の足をのぼりながら、腕の攻撃をかわしつつバク転を決め、それに合わせ霊量子の噴射による高速移動を用いて巨人の頭部に無数の斬撃を繰り出した。


 それに合わせ、響と彩音は具現霊をそれぞれ召喚し、言ノ葉の力で動きを拘束し、胸の部分に彩音の弁天が持つ音叉薙刀を突き出し、音波を一点に集中させその部位を振動で破壊することに成功した。


「醸せ、菌幻自在。食らいつくせ眷属たち!」


「天魔の彩 獄鬼の黒 6つのかいなに枝分かれ 穿通せよ、魔の理よ!大魔法18式、六魔天閃ろくまてんせん


「グ、グノオオオオオウウウウ」


 さらにとどめを刺すため、伯爵は天に手を掲げ、微生物を凝縮してチャクラムを作り、それを巨人に対し投げつける。それに合わせリリーの大魔法が炸裂し、手から6つに分かれる光線を放ち、2人の攻撃が巨人の頭部と胴体部を完全に破壊することでその肉体は崩れ去ったのであった。


「へっ、幾らでもかかってきやがれ!」


「これで邪魔者はいない。急ぐぞ」


 そうして邪魔者を倒しながら5人は行き止まりにたどり着く。


 そこは奥行きがある一つの神殿のようなものであり、階段の上にあるステージらしき場所に、翼が光る縄で捕らえられているのが見えた。


「こ、これは」


「くっ、昨日助けたのにまたこうなるとは。同じようなことを考えている人が他にいるなら、更に監視をつけるべきだった」


「同感だぜ、全くよ」


 ハーネイトと伯爵は、それを見て昨日助けた人の一人がなぜその場にいるのかと驚き、それが響と彩音の友達であり、翼の父親、大和と同じ霊的感知能力を持っていることを理解したのであった。


 2人が助けに行こうとした時、突然突風が吹き荒れ、ハーネイトと伯爵の足が一瞬止まる。次の瞬間、ゼノンとは違う様相の仮面騎士が目の前に現れたのであった。


「残念、だったわね。あの後侵入者を捉えていた監視者からの報告でだれが入ったのかすぐにわかったわ」


「それが何だ」


 ハーネイトは前に出て、仮面騎士の顔を見ながらそれがどうしたといった。それに対し仮面騎士は、美しく銀色に輝くバスタードソードを持ちながら彼らにこう言い放った。


「私たちの計画に仇なすもの、この場で全員殺してくれるわ」


「待ちなさい!私よ、ゼノンよ!」


「無事だったのね、だけど本物かどうか改めて相手してもらうわ!」


 仮面騎士は勢い良くハーネイトと隣にいるゼノンに飛び掛かり切りかかろうとする。しかしそれをすでに見切り、最小限の動きで右に交わし、藍染叢雲で彼女の手元を軽くついて武器を落とそうとする。しかし距離を取られ、ゆっくりと剣先を互いに向けていた。


「突撃が分かりやすすぎる、ほら、こいつはどうだい?」


「ぐっ、読まれている?」


「そりゃねえ、殺気が漏れすぎて次にどう攻撃してくるか分かるから」


「そのふざけた言葉、言えないように切り刻んであげるわ」


「ふざけてはいない。どうした、もっと来てくれよ仮面の騎士さん?」


 ハーネイトの言葉に若干イラっとなり、彼女が左へ回り込みながら走ると、急に間合いを詰めて姿勢を低くし、懐に入ると剣で切り上げようとしてきた。それを彼は難なく受け止め払いのける。


「少しはやるじゃないか。だが、こちらも行くぞ。弧月流・新月!」


「速いっ…!ぐはっ…っ」


 そしてハーネイトは剣を構え突きの態勢に入ると、眼にもとまらぬ速さで刀を突き出しながら突撃し、彼女を吹き飛ばしながら前方へ猛加速したのであった。吹き飛ばされた彼女は足で地面を踏ん張り滑るのを防ぎ、ハーネイトの方だけを向いていたのであった。


「まだまだだね。剣を振るスピードは認めるけれど、足りない点が多い」


「なに、よ。剣の指導をされに来たわけではないっ!ふざけるな!こいつを使ってやるっ!」


「何?ぐっ、どういうことだ?」


 その時彼女の体が光りだし、全員が光を防ごうと腕で目を覆った。次の瞬間、目の前には姿を変えた彼女の姿が写っていたのであった。


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