第180話 A防衛拠点攻略
A防衛拠点 ナビゲーター ウォークロード 響、彩音、翼、亜里沙、韋車、エヴィラ
「予定外のことが起きているけど、やることに変わりはない」
「ここが、最後の砦ね」
「のようだが……な。案の定敵の数が多い」
「互いに互いの敵を妨害しあい、敵を混乱のどん底に陥れる。今頃ハーネイト様の方もうまくやっていることでしょう」
エリアの状態を見た彩音たちは、ここを突破できれば一気に流れが変わると信じていた。
別動隊でハーネイトたちが暴れまわり、混乱させるような情報を流している今、自身らもこの機に乗じ双方から敵を揺さぶり戦力を削る。それを理解していた彼らは、早速仕事を始める。
「ああ見えて、彼の戦術は恐ろしく嫌なものばかりでしょ。さあ、哀れな悪魔たちを探し出して治療するわよ」
「そうだな、フフ。じゃあ手はず通り、両脇にある最奥の結界石までをどんどん壊していこう。後は、総力戦だ。だがファイアウォールらしき妨害がある。鍵も同時に探してくれ」
そうして、ナビゲーターであるミタカ・スギヤギ・ウォークロードの采配のもとに、今作戦最後のAミッションが始まったのであった。
早速響と翼が前方に突撃し、敵の迎撃を憑依武装で吹き飛ばしてから、見えている結界石に直接切り込んで破壊する。
「こちら2つ目の結界石破壊したぜ」
「こちら韋車、進路を阻む装置の解除キーを入手成功、至急解除に入るぜヒーハー!」
「セキュリティの鍵を見つけたわ、今解除する」
「敵が神出鬼没ね、だけど!!!お兄様、あれを!」
「任せておけ、旋風だ!」
その間に彩音と韋車、亜里沙は連携し行く手を阻むファイアウォールの鍵を探索能力で見つけ出し、エヴィラにそれを渡していく。
「今のところ順調かしら、そこっ!血禍呪弾!」
「今の俺たちを、止められるものは誰もいないぜ!」
「その通りだ!一気に蹴散らす!」
「こちら3つ目のファイアウォールの鍵見つけたわ!今解除しに行くわね」
彼らはその後も順調に作戦を進め、妨害を難なく解除していく。
しかしこのエリアの門番に見える寝ていた全長30mほどの、青褐色の鱗が目を引くドラゴンがここにきて目を覚まし、近くにいた響に対し火焔球を口から放ち地面ごと焼き払おうとしてきたのであった。
「ちっ、ドラゴンが火を吐いてきた!」
「させるか、獄真風!」
「助かったぜ!凄い防御力だ」
それを自身の持つ盾で防ぐヴィシャル。颯爽と駆け付け、シールダーの役割をしてくれるこの悪魔に、何故か響は仲間意識を強く持つ。
悪魔たちがいなければ、父は死ななかった。ソロンと言う存在を蘇らせるために抜け殻の様に命を吸い取られて死んだ父、勇気の顔を思い出すと泣けずにいられない彼だが、それでも今は割り切ろう、彼らもまた血徒という彼等よりも恐ろしい者による陰謀に巻き込まれた駒に過ぎず、自分たちと同じように翻弄されている。
そう思えば魔界人に対する復讐心が和らいでいく。その気持ちが憑依武装にも連動し、さらに力を向上させる。
「風の盾が焔を消していく……危なかった」
「攻撃はこちらが盾となる。早く探し出してくれ」
ヴィシャルはそう言い、亜里沙や韋車の方にも支援に回るためその場を駆け飛んだ。その時翼が響と合流し、一気に石を壊そうといってきた。
「ちっ、予定外のことばかり起きるな響」
「それでもやるしかないだろう翼!そこ!」
「見つけたぜ、一気にぶっ壊す!」
そういい、若い学生2人は怒涛の勢いで現れる魂食獣を撃破し、エリア中央部へ続く道の開放を行い、それに成功したのであった。
更にカギを集めてエヴィラは敵陣を突っ切りファイアウォールの解除にも立て続けに成功する。
「残りの石は2つだ、だがこちらで反応をキャッチした!」
「来たか、エンベルス!」
「……ゴォオアアアアアアア!!!!!」
ミタカは全員に対し強大な反応の接近を通達、その後すぐに、エリア中に空気振動を与えるほどの強烈な叫び声が轟いた。
そう、最後の四天王エンベルスが現れたのであった。既にかなり汚染が進んでおり、正気を完全に失っている状態であった。
「これはまずいな、兄貴しっかりしろ!」
「なんて声だ、聞いただけで体がしびれるぞこれ」
「これは、大分症状が進んでいるわね。取り憑いているのは……なっ!彩音、そのアンプルだけでは効き目が薄いわ。私と協力して。それならいける」
エヴィラはアンプルを持っている彩音に対しそう声をかけて近寄ると、左手に持っていたそれに力をそっと込める。それを使えば今の状態でも治療できると彼女は言う。
昔の自分ならともかく、U=ONEになった今なら不可能も可能の域に引きずり込める。そう自分を信じアンプルに自身の新たな力を注ぎこんでいく。
究極の1、その力を手に入れる前は自分も只壊し、奪う事しかできなかった。けれどハーネイトと出会い、与え治す術を学んだ彼女はその力も自分の物にして前に進む。
「ええ、エヴィラさん!」
「攻撃来るぞ!」
「させるものか!獄皇盾!」
「やるな、この悪魔」
「同胞を共に助けるなら、既に仲間だ。我らの仲間が犯した罪、少しでも晴らすのだ」
その間にも怒涛の勢いで突撃しながら手にした武器を振るい周囲を薙ぎ払いながら彩音たちに迫るが、それは突然止まった。そう、ヴィシャルが盾となり、突進を受け止めたのであった。
「全く、お前らもあれだね。だけど血徒については私も責任がある。血闘術・血鎖牢!」
「すごい、これが伯爵さんのお友達の力!」
「友達じゃないわ、じゃなくて今よ彩音!私の力で強化したアンプルなら、あれに取り付いた血徒も除去できる!」
エヴィラはそのチャンスを生かし、血徒の力を開放するな否や、血の鎖でできた籠をエンベリルの周囲に展開し拘束する。
その間に間隙つかず、響と言乃葉による散刃斬、翼とロナウによるブラックムーンが左右からエンベリルにヒットし抵抗力を奪う。
「響、翼くん!あとは任せて!」
「いっけえええ!!!」
全員の援護をもらった彩音は、恐れることなくエンベルスの腕にアンプルを注射し、素早く後退する。するとすぐに効果が発揮されていく。
エヴィラの力を込めたのも影響したのか、血徒による浸食がどんどん抑えられていくのを見た彩音たちはこのままどうなるのか目を離せなかった。
「……!あ、あああ……ガハっ!」
「き、効いているのよね?」
その場に崩れ落ちたエンベルスをヴィシャルは抱きかかえ、様子をうかがう。恐らく彼が一番重症であり、どこまで治るかがまだ分からない状態であった。
「おわったようですね。こちらも韋車さんと共に石の全破壊に成功しました」
「危なかったぜ、なあ。んでそいつの調子はどうなんだ」
「……大丈夫のようだ。……感謝する。だが、既に同盟幹部の3分の2と一部の魔界の住民は手遅れ、かもしれん」
「……うっ……ここは、それにヴィシャルか。我は何を……?」
血清の効果で見る見るうちに元に戻っていく上司を見たヴィシャルは全員に対し礼をしながらもすでに手遅れの仲間も少なくないだろうという見解を述べる。
「この我も、感染していたのか。……全く、異界の住民に借りができてしまったな」
「お目覚めのところ悪いけど、今のところ錯乱したり変な紋章が出ている魔界人は、そちらでどのくらい把握しているのかしら」
「軽く8000人もの魔界に住む魔人や獣人が病に侵されている。しかし、血徒ルべオラと名乗る者が仲間を連れて治療をしていると」
エンベルスはようやく一人で立てるようになると、ヴィシャスに感謝した後同じように響たちにも謝罪した。
そんな中エヴィラはどの程度悪魔たちの住む世界で患者数についてそちらで把握できているのかを確認する。ルべオラの話を聞いて、すっかり彼女も変わったなとエヴィラは思っていた。
「あの、フューゲル様に指示され集めていた情報を、提供して頂けませんか?」
「ああ、そうだったな。フューゲル様より命を受けて情報を集めていたのだが、ほら、これだ」
亜里沙の質問に対しエンベルスはそう言い、集めていた情報を響たちに手渡しする。それを確認すると響と彩音は話をする。
「これは、ドガ博士たちに見せた方がよさそうだ」
「幹部たちの特徴と、変化している点についてまで記載されているわね。確かに、感染して大分末期のようね。もし17衆の誰かがこの者たちを操っているなら、感染者の治療は不可能かも。そうなれば、再葬、つまり葬らないとダメかもしれない。ステージ3になっていれば、もう死人同然だから」
エヴィラもそれが気になり覗き込むと、感染したと思われる幹部たちの今の状態が記載されている資料を見て口を出す。
「エヴィラさん、そこまでその17衆は強いのですか?」
「ええ、もし感染憑依を解除させたとしてもその本体の肉体が耐えきれるかは運次第としか言えないし、そもそも死人になっていた場合はどうしようもないわね」
「あっ……その場合は、どうすれば」
「そうなった奴は、倒すしかねえ。せめて肉体をこれ以上弄ばされないようにしてやるしかないな」
「そうだね、響。うん、もしものことは覚悟して挑まないといけないわ」
一番最悪の事態だが、感染して大分時間が長いことから完全に肉体も精神もその感染した血徒の者になっている可能性が高く、その場合はもう治療は不可能であることを説明するエヴィラに対し、彩音は17衆について話を聞くが、それを聞いてから少し俯く。
しかしそうならばせめて解放しないといけないだろう、そう思い全員で挑もうと意思統一を図る。
「では、これにて失礼する。弟と兄の命を助けてくれたこと、誠に感謝する」
「これからが大変だな、あんたらは」
「ああ、だが協力者がいるならばどうにかなるかもしれん。折角魔界の空が戻ったという報告が来ているんだ。それを楽しみに帰ろう」
「フューゲル様よりの伝言だが、そちらの方の作戦が順調にいくように祈っているということだ。あれらを倒し、血徒という存在に共に立ち向かおうぞ。異界の勇者たちよ。さらばだ!」
ヴィシャルとエンベルスは互いに礼をし、魔界の方に帰っていくことになったのであった。それを見送ってから、響やエヴィラはハーネイトや伯爵に作戦完了の連絡を取ることにしたのであった。




