第173話 防衛ライン突破作戦準備2
「Cもいいみたいだな。さあ次のB拠点が厄介だ。なんとピース型の結界石が中央に鎮座している上に敵の頭数が多い。それだけ敵の懐に近いというべきだな。ここでは、面制圧に長けた人材が2人、とサーチャー1人、アサシン2人という普段ではあまり組まない編成が必要だ。ダブルクラス持ちも欲しい」
「アサシン……そのクラスを任せる人って」
ハーネイトはスクリーンに映し出されるB拠点の特徴について触れながら、アタッカーとアサシンの双方による前と後ろの挟撃で、敵陣を速やかに攻略した方がいいためアサシンをここで起用することを述べた。
問題は、明確に現在アサシンクラスを名乗れる人材があまりにも少ないと言う点である。
「私たちかな?パピーもでしょ?」
「うむ、隠密行動と暗殺はお手の物だがな」
「そうそう、こういう時こそ私たち天糸一族の出番ってね!」
「拠点の奥まで行ってもらう危険な任務だが、サーチャーと連携すれば鍵を探し回収するのは難しくない。頼んだぞ」
そのため、現状アサシンクラスを担当できるのはマスタークラス持ちを除くとこの2人しか存在しない。そこに両人とも投入するのはどうなのかと響たちは疑問に思っていた。
「質問いいですかハーネイトさん」
「どうしたのだ星奈」
「面制圧なら、殆どアタッカーにしてもよろしいのでは?」
星奈は、そこまで汚染区域が広大ならば、纏めて焼き払える火力の人材を集中投入するのが先述の基本ではないかとハーネイトに対し質問した。だが、彼にはある考えがあった。
「普通はそうなのだが、アサシンは移動に関し特に制限がかからない希有なクラスでね。彼らには特殊な装備を付けてもらっているのだが、制圧攻撃能力がその副作用で低下している。しかしその機動と偵察でサーチャーと連携の上、速やかにキーピースを回収してほしいのと、敵の頭数減らしが目的だ」
単純にそれなら、星奈の言う通りこの拠点に九龍と五丈厳を配置した方がいいかもしれない。
だが敵の中ボスなどを確実に減らしながら、戦線を素早く移動できるアサシンは今回のようなキーピースによる解除が必要な場合、有効に働くと彼は考えていた。
時間がかかれば、それだけチーム員全員の体力、精神力を消耗する。それを防ぐ狙いもあるという。
「なるほど……では、そこは私も行きます。ワダツミはサーチ能力を持っています。イルカなどを呼び出し、エコーロケーションを使えば、大体は分かるかと」
「分かった、星奈はサーチャーとアタッカーのダブルクラスを頼む」
星奈はハーネイトの考えを理解したうえで、自身も広域サーチできる能力を訓練にて手に入れたことを説明する。それとの連携がカギを握るとハーネイトは言いながら、星奈をこのB拠点に向かわせようと思い指示を出した。
「となると、文香、文治郎さん、星奈は確定だが後はどうしようか」
「わ、私行きます!ピクシアもサーチできますし、最近広範囲を攻撃や回復できる技を身に着けましたよ」
「俺もそこに行きたいのだがいいか?俺の具現霊・ベイオウルフは敵の動きを抑えたり味方の強化もできる。回復は少し残念だが、機動力と制圧力はあると思う」
すると渡野と音峰が、自身のできることをアピールしながら、その拠点の攻略に参加したいと申し出た。確かに双方ダブルクラスの才はあるとみて、ハーネイトはそれを快諾した。だがその背後で、彼をじーっと不満そうに見ている女性がいた。
「私のこと、忘れていないかハーネイト?」
「ああ、スカーファ。このB拠点を好きなだけ暴れて、壊滅させてくれ。手加減も遠慮もいらない。破壊し尽くせ!」
「フフフ、血沸き肉躍るとは、こういうことか。任せておけ、この私が全てを消し飛ばす!」
「殺気が怖いな。だが、攻撃についてはこのチームが一番だな」
B拠点を攻略する最後の一人は、事前に決めていたスカーファを再考したうえで確定し、彼女の有り余る攻撃力を用いて、音峰との連携にて場面制圧を行う形で決定した。
「ナビゲーターは、この私。エレクトリールが務めます!」
「任せたぞ。彼女の特別支援攻撃も面制圧に長けたあれだ。どうしてもあれなら彼女に要請したまえ」
「はい、お任せください!」
さらにハーネイトは、ここにきてエレクトリールをナビゲーターとして充てることでいざという時の支援攻撃による拠点の制圧もできるように調整していたのであった。
「最後にA拠点だが、まずナビゲーターは自前で偵察ができるミタカに任せる。というか残り君だけだし」
「フッ、このカーノ・ミホークの目から逃れることは誰もできないぞ」
「自前で探索能力を持てる人は、ナビゲーターにもなりやすいな」
ハーネイトは、最後のA拠点攻略を担当するナビゲーター、ミタカを任命する。この男の能力は、具現霊である鷹を用いた高度な偵察技術と情報支援にある。
最も、愛剣である双刃大剣・アイロダストによる白兵戦も恐ろしく強い。そこでハーネイトは双方の技量に長けた彼を起用したのであった
「ここは二手に分かれ、ファイアウォールを解除しながらそれぞれ奥地にある結界石を手分けして破壊、その後中央の道に構えている巨大な門を制圧する。ここが一番難しいと思うし警備も分厚い」
「だから、大分経験を積んだ奴がいる。響に彩音、翼に亜里沙、韋車と……」
このA拠点こそが、敵総司令部がある矢田神村に一番近いエリアであり、防衛も激しい。ここを響たちが攻略するまでに、ハーネイトはある拠点への陽動作戦及び制圧が必要になると話した。
それこそが、敵の対応を乱し確実に優位にもたらす情報戦であると彼は説明する。
「おい、俺がそこかよ。責任重大じゃないのか」
「韋車さん、あそこまで具現霊と短時間で息を合わせられるのはもはや天才の領域です。火力面に期待し、Aチームに加わってほしいと」
しかし韋車は、響たちに比べ霊量士、現霊士になって日が浅い点についてハーネイトに質問、指摘し不安だと気持ちを説明するが、ハーネイトは彼の天才的な能力を高く評価していた。
具現霊が人型以外の場合、術者本人が人よりも大切なものがある。それと心を通わせ連携するのは非常に難しく、それを実行できる韋車になら機動戦と制圧戦の両方を任せていい、そう考えていたのであった。
「仕方ないな。まったく。だが回復いるんじゃないのか?」
「私はアタッカーとサポーターのダブルクラスですよ韋車さん」
「私はサポーターとサーチャーを兼任できますわ」
韋車の指摘に、彩音と亜里沙はそれぞれクラスを説明し安心させる。意外と彼は心配症であるが、それも作戦を無事に進める上では重要なファクターにもなるとハーネイト、伯爵はそう思っていた。
「そ、そうか。しかしあと一人……誰にするんだ?」
「一人足りないか……しまったな。先ほども言ったがこちらの直属の部下は全員敵の大拠点を落とすためそちらに手を回せない」
「では、伯爵は陽動で、私が裏をかくわ」
「エヴィラ、逆でなくていいのか?」
ハーネイトらの目標は、4拠点の攻略が完了するまでに、敵に対し偽情報を流しまくり時間を稼ぎつつ、総攻撃への布陣を整えるため、マルシアスが提供したデータを基に通信の総拠点とも呼べるX-1-4エリアと呼ぶエリアに存在する敵拠点をほとんど破壊するというものである。
そのため手を回せないと彼は言った途端、エヴィラは名乗りを上げて前に出た。
「敵に近いってことは、血徒になった何かがいる可能性を考慮しないといけないわ。それくらい考えているわよね?」
「うぐっ、た、確かにそうだが」
「なら、私はAチームに加わるわ。微生界人は能力の関係上、マスタークラスになってしまうけど、いいわよね?」
「マスタークラス、先生と伯爵さんと同じ、全クラスを担当できる究極の器用貧乏……」
エヴィラは口酸っぱく、同類の存在に気をつけろと注意したうえで、Aチーム攻略に加わることになった。
ハーネイトは、微生界人であり、自身の力により究極生命体になったこの2人に、自身と同じマスタークラスの権限を与えている。これは全てのクラスの力を引き出し運用できる、類まれな力を持つ証でもあった。
「器用貧乏言わないでちょうだい、それは彼にふさわしいわ」
「どこがだ全く。だが頼むエヴィラ。表と裏で敵を引っ掻き回し、敵の調子をグダグダにするのだ!」
「遠慮とかマジするなよお前ら、俺様も全部ブッ醸す勢いで行くからよぉ!」
「以上でいいかお前ら!」
「異存はねえ。やるなら早めに行こうぜ、ああ?」
こうして、各チームのメンバーが決まりハーネイトは、一呼吸おいてから作戦の開始を告げるのであった。
「全く、血の気の多い人たちばかりだよ。ああ、その通りだな。では、本日20:00より、敵防衛ライン突破戦及び敵拠点強襲陽動作戦の開始だ!全員覚悟して任務にあたる様に!」
「了解だ!」
「了解です!」
その後時間が来るまで響たちは、休息を取ったりRGEの調整を行ったりと、作戦に向けて準備万端の状態を迎えるために行動し、時間である夜8時に、各チームはホテル屋上のポータルより戦闘区域に向かったのであった。




