第172話 防衛ライン突破作戦準備1
PAが完成した翌日の夕方、ホテル・ザ・ハルバナの地下にある大会議室はいつもよりもかなりにぎわっていた。それは、ここである作戦についての説明が行われていたからであった。
「本作戦は、4つの敵防衛ラインについて、速やかな突破により敵を混乱に陥れ、それに乗じ転移座標マーカーを村へつながる亀裂の付近に設置、それを利用し直接村まで移動し敵の総司令部ともいえる拠点を破壊するのが一連の作戦概要です」
レヴェネイターに属するメンバー全員は、椅子に座りながらハーネイトの話を聞き、彼は指示棒で、プロジェクタースクリーンに映し出される資料を指しつつ、どのように作戦を進めていくのかを説明していく。
「各エリアにはそれぞれ違った防衛機構が設置されており、それに対応した編成が求められます。また、一時作戦終了後にできるだけ速やかに突撃するため、出撃できる人は全員ローテーションで作戦に参加していただきます。疲労を軽減し、決戦に備えるためです」
「最低4チームいるというわけや。ナビゲーターは、ボルナレロ、エレクトリール、大和、ウォークロードの4人がそれぞれ担当することになる」
防衛拠点を順番に制圧することは理解したが、本来ナビゲーターであるハーネイトと伯爵が参加していないことに気づいた大和は質問を投げかけた。
「伯爵とハーネイトはどうするのだ?研究は今のところ大体終わっているだろ?」
「こちらは陽動を仕掛ける。別に大きな拠点があることが判明したのでね。私たちが気を引いているうちに防衛ラインをずたずたにし、行き来ができる道の確保を頼みます」
ハーネイトとその直属の部下はTミッションにて、魔界復興同盟が異界空間内で置いている拠点を攻略し破壊、そこに転移ポータルを設置し占拠されているであろう矢田神村への奇襲ルートを確保するという作戦を行うという。
「幸い、敵に渡っている私たちのデータは限定的です。こちらも妨害工作はしてきましたが、何よりあのルべオラが血徒側を混乱させる情報ばかり流しているようです。ただ向こうも、こちらの存在に気づき始めた段階であります。今こそ、敵の足並みが揃わないうちに攻め込むのです」
また、別々に行動することで情報を混乱させつつ敵の情報網を寸断する目的があり、それを聞いた大和たちは納得する。
「わかったわかった。確かに敵が浮足立っているところに攻めるのは常とう手段だが」
「すごい作戦、なのね。私、できるカナ」
「だが俺はやるぞ。Aミッションについても勉強してきた。この黒龍、全力で任務にあたるぞ」
「俺もだ。この作戦の成功の可否が、2次作戦の成功率に大きく影響するだろう。ベイオウルフも滾っているぞ」
「音峰も気合入っているな」
ハーネイトの話を聞き、敵を混乱のそこに落としたうえで、致命的な一撃を与えるという趣旨を理解した彼らは、各員意気込んでこの作戦に当たることをアピールしていた。
「フッ、そうでなくてはならんだろうアイドルの男」
「亜蘭って呼んで欲しいのですがね音峰さん。それで、チームについてはもう割り振りは済んでおりますか?ハーネイト先生」
「それを今から決めようと思っていてね。しかし、妙にやる気があるね亜蘭さんは」
「ああ、俺は燃えているからな」
亜蘭は音峰の、自身に対する呼び方に不満がありながらも、すぐに気を取り直しハーネイトに対しチーム編成はすでに終えているかを確認した。
この亜蘭、Aミッションを学ぶCデパイサー内のアプリにすっかりはまっており、先日実際に戦った際も戦いに興奮してその夜は寝付けなかったという。それが理由かやる気は人一倍あるように見える。
「では、4つの防衛ラインについて事前偵察した結果を伯爵から説明してもらおうかと」
「へいへい、んじゃ全員、よく聞いてくれ。拠点をA~Dと名付けそれぞれ整理すると、拠点ごとに必要なクラスが異なってくる」
伯爵とその部下たちによる強行偵察によると、敵の防衛ラインはマルシアスの情報通り4拠点あり、1か所ずつ潰していく必要があると最初に指摘し、その上で、各拠点攻略に関して注意点を説明する。
「まず拠点Dだが、個々の守りはそう厚くない。敵の数もそこまでないが、どうも結界石の数が普通より多いうえに、番号付きだ。だが、難易度は低い」
「このD拠点に関しては、まだ霊量士になって日の浅い人を中心に編成を汲みたいと思うが異存はあるか?」
「とくにはないけどよ兄貴、変なギミックないのか?」
「俺から見たところあまりない。どちらかというと石の数で守るタイプの拠点のように見えるぜ」
伯爵とハーネイトの話を聞いた黒龍たちは、確かに自身らはそちらの方で経験もついでに積む方がいいと判断し異論は出なかったが、心配した翼は他に妙な仕掛けがあるんじゃないかと質問する。
だが伯爵の調査では爆弾もセンサーも、それ以外のギミックも現在特になく、正直ここが一番楽であることに変わりはないと説明を返した。
「となると、瞬麗、宗像さん、田村さんに亜蘭、初音、黒龍に……」
「ということは、ナビゲーターは俺なのかハーネイト」
「そうしてもらえると。負担も少ないエリアだと思われるからね」
ハーネイトは、D拠点で任務を行ってもらう予定の6人の名前を順番に並べ、大和は自分がそこのナビゲーターなのかを確認する。このためにハーネイトは、彼にそのクラスの経験を積ませていたのであった。
「そうか、ではそのD拠点は任せてくれ。だがクラスの偏りが気になる」
「亜蘭と初音はダブルクラスでシューターとサーチャーのセンスがある。サポーターは申し分ないしこの面はとにかく前へ前へ攻めた方がいい。アタッカーをうまく使わないと」
大和は改めて、自身がこのD拠点制圧の隊長であり、ナビゲーターとして6人を率いることをここでしっかり確認した。
この6人チームはサポーターとアタッカーのバランスが良く、ダブルクラス持ちのおかげで対応力は高い方でありハーネイトも、それを見越してここにはその6人に任せると告げ、最初の拠点攻略チームは決定した。
この時ドガについてミッションに参加できるレベルなのかと響たちから質問されたハーネイトは、彼はまだ基礎訓練を終了していないため今回は見送ると先に説明していた。その代わり彼には霊宝玉に関して情報収集を行ってもらうように指示を出しているという。
「んで次はC拠点だが、早速悪い情報だ。ダミーだらけだぜ結界石が」
「サーチャーがいないと話にならないか」
「しかも異界化装置の影響も受けている。市街地戦に心得のある奴がいるな。間城と時枝はできればここに参加してほしい」
備蓄拠点破壊作戦で時枝らが戦った場所と、そこそこ似ている市街地にての任務のため、そう言った場所に慣れている人が必要となるとハーネイトは説明する。
「構いませんが、他の仲間は?」
「君たちがサーチャーでシューターだとすると、サポートとアタッカーだな。アサシンはここではあまり必要ではないし」
ハーネイトは、時枝と間城を見ながら彼らの得意なクラスを把握しつつ、今回の場面で必要なクラスが他にあるかを確認した。いつもより目つきが鋭く、真剣さも倍以上に違う彼の視線は、さながらよく切れるナイフのようでもある。
「では、私が支援を行います」
「アタッカーはどうしようか」
「俺と九龍はどうなんだ」
「そうだな、スカーファが3面で必要だから、五丈厳と九龍、それにジェニファー、このエリアを頼めるか?」
火力がずば抜けて高い五丈厳とスカーファ、九龍の配置をどうするかで悩むも、面制圧攻撃が必要な次の拠点のために、どうしてもスカーファには次で説明するBエリアを担当して欲しいためハーネイトはここでのアタッカーを五丈厳と九龍に任せたのであった。
これに援護攻撃でジェニファーを入れれば、特に問題はないと判断する。サーチャーとシューターの連携は、安全に仲間を前に出すのに重要であり、これで問題ないと判断する。
「いいぜ、兄貴。任せてくれよ」
「はいハーネイトさん。市街地なら銃撃できる人もいりますからね。カウンター決めちゃいます」
「ようし、Cチームは決まりだな。ナビゲーターはどうするか」
「市街地の偵察は、やはりこの俺だろう。あの時と場面が同じで変わり映えしないだろうが」
「別にそれは気にしないですボルナレロさん。どうかこのエリアの観測をお願いします」
「了解した、ハーネイト。魔法工学の力、思い知らしめてやるか。BKの評価査定の件もあるしな」
最後に、Cチームのナビゲーターはボルナレロ自身が適任ではないのかと志願し、すぐにそれも決まり順調に作戦会議は進んでいく。




