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レヴェネイター  謎多き魔法探偵と霊量士(クォルタード)の活動録  作者: トッキー
第1部 邪神復活事案 レヴェネイターズ始動!
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第171話 決戦は既に眼前にあり


 時間はその少し後、伯爵はお気に入りの屋上のスポットで風を浴びていた。大分時期も暖かくなり、湿気も多くなる。そうなると細菌系の微生界人は活動的になる。


 問題は、そのほとんどが現在離反し、中には血徒になったものもいるという。一体何を考えているのか、伯爵は思案に老け込んでいた。


 その時エヴィラが屋上に訪れる。またいつもの場所かと思いながら、彼の傍に来るとハーネイトの研究について経過を話した。


「相棒、うまく研究成功できたみたいだな」


「何でも、今までより霊量子を抑えながら防御効果を持つ装甲を、自在に変えて変装やステルス機能まで簡単に持たせる代物よ」


「確かに良くイメージするバリアって消耗激しそうだが、服として纏うなら消費は減りそうだな。うへえ、よーやるわ。だが、やるじゃねえか相棒」


「途中で遊んでいたけどね彼」


「大目に見てやれよ。さあて、俺たちはどう出ようかね」


 相棒の研究がうまくいったことをw人は密かに祝い、自身らは魔界の住民マルシアスが集めた情報を基に事前偵察した結果をうまく使い、早期に戦いに蹴りをつける。そう考えていた。


「どうするもこうするも、全部裏切り者をぶっ潰してやるわ」


「オー怖い怖い。だが、奴ら。絶対にろくでもないことしかしないぞ。他の命を奪い続けて、尽くしたときにそれ以上生きていけるのかってな」


「あいつらはそれを分かっていないわ。いえ、正確には精神支配されて判断力を完全に欠いているとしかいえない」


「おっと、そこにいたとか2人とも。って邪魔をしたか」


 伯爵もエヴィラも、ハーネイトと交わったおかげか副作用か、究極生命体にして神霊化ことU=ONEアルティメットワンの力を得ていた。


 他の生物の命を奪わずとも生きていくことができ、あらゆる面において非の打ち所がない存在。実質的にこの2人はヴィダールの力を得た半神のようなものであり、神霊としての力も持っている。


 だからこそ、他の仲間たちも自分たちの様になれば、一族が追い求めた長年の課題も、苦しみもすべて解放できるのにと2人は考えていたのであった。


 すると2人の姿を見た、取材から帰ってきた大和と、街中の警備を担当していた文治郎の2人が駆け寄って声をかけたのであった。


「どうした大和さんと文治郎さんよぉ、急ぎか?」


「もしよかったら、これを見ていただきたい」


「大和が調査しに行った四国と本州を繋ぐ橋の周辺で、これが目撃されている」


「そうかしこまるなよ、フランクに行こうぜ」


 大和は、四国と本州を繋ぐ大橋の周辺で現在目撃されている新生物について、運よく写真を撮りしかもその生物の体の一部も回収したという。


 もちろん防疫措置はとってあり、安全にしているのを先ほどハーネイトに届けて来たばかりだという。


「あぁ……しかし俺は魔獣についてはそこまで詳しくない。だが、この世界にいていい奴じゃねえ」


「そこの2人、それはハーネイトに見せた?」


「いや……というか貴女は」


「そうね、まだ自己紹介していなかったかしら。私はエヴィラという者よ。その写真に写っていたの、この街の端にある森林にもいたわよ。地球における、血徒汚染の状況を一刻も早く調べないと」


 新生物の写真を見た伯爵もエヴィラも、それは魔獣だときっぱり言い血徒特有の症状が目と鼻に出ているという説明を二人に行う。


「で、それはどうなったのだ?宗次郎さんから討伐したと聞いたが」


「その通り、ハーネイトと私で全部仕留めたわ。血清と試薬もできて、先ほど新装置についても製作

と運用に成功したところ。んで私は休憩しているのよ」


「早いな。ということはやはり黒だったのか」


「ええ、あれはかつての同胞の物だったわ。だからすぐに分かった。……何故、なのよ」


 大和は今日、ハーネイトが山の中で襲撃する謎の生物を討伐したと聞いたが、それが事実だと知り喜んでいた。


 しかしエヴィラは、急に昔のことを思い出し感傷的になり、3人から少し離れて、屋上のフェンスに体を預け、悲しそうに空を見ていた。


「すまんがエヴィラのことはそっとしといてやれ。っと、とにかく血徒は親を叩けば子となった存在も基本的に解放される。追跡戦だな」


「ああ、絶対に逃さん」


「わしらの一族は、怪異とも戦っておった。もしかすると、先代の死にその吸血鬼風情が関わっているかもしれん。仇を、取るしかないのう」


 その翌日、ハーネイトは朝食を済ませてからPAの最終実験を行い、もう他にバグはないと確信し、Cデパイサーで全員に特別なメールを出したのであった。

 

 それは、夕方6時にホテル地下会議室まで集合し、新装置の組み込みを行うという内容であった。


 全員は出席できると返事を返し、ハーネイトは午後になっても調整を行い、それと並行して今までの事件に関する一連の流れについてパワーポイントを用いて資料を作成する。


 そうこうしていると時間になり、ホテルの地下には霊量士たちとハーネイトの部下がほとんどそろっていた。


「ようやく装置ができたようだな」


「いよいよだな、彩音」


「そうね響。後は敵陣に強襲をかけて、突破して故郷に行くわよ」


「父さん、絶対に勝つぜ」


「ああ、勿論だとも。皆、あの時の悔しさをぶつけるんだ」


 全員席に座り、今かと待ち遠しく待機していたその時、ハーネイトが会議室に入り、リリーと伯爵がアップデート用の装置を持ち運んできたのであった。


「皆さん、事前に連絡を行ったとは思いますが、血徒による攻撃を防ぐ機能をCデパイサーに組み込めるようになりましたので、更新作業のご協力をお願いします」


「いいぜ兄貴、ほらよ」


「私も、はい!」


 その後ハーネイトの指示に従い、響たちはCデパイサーをハーネイトに渡し、データの更新を随時行っていく。今回わざわざ来てもらったのは、情報の機密という面もあったが、これが終わった後に彼は作戦会議を開く予定であったというのが一番の理由であった。


 全員にデータを配信し終えると、使い方の説明をし、PAを実際に使って試してみるように促す。すると次々と集まった人たちの服装が変わっていき、その光景に誰もが目を丸くしていた。


「なっ、これは以前俺たちが拾った装備……!?」


「しかしよう時枝、これ確かに実体化しているが、全部霊量子じゃね?えらく軽いな」


 時枝は、選んだ装備が自身の体に装着されているのを見て驚く。


 これが、自身らを血徒から守る新たな機能か、そう思うと何故か感慨深く、しばし彼は不思議な感覚に浸っていた。


 翼もそれを試しに使うと、重そうな装備なのになぜか服を着ていないかのように軽いという違和感に戸惑っていた。


「先生、本当に完成させたのね。どう、似合うかしら?」


「ああ、よく似合うぞ」


「まさか……それ着たいために先生に無理言ったのか」


「もう、響ったらひどい」


「ったく、先生は本調子じゃないんだからさ、少しは気を遣えってあれだ。それと、似合ってるな彩音」


「むう、素直じゃないんだから」


「へへ、しかし折角なら俺も恰好よさそうな見た目の装備をPAで纏ってみたいな」


 彩音も自分が来てみたかった装備、アンドレアの戦闘ドレスという装飾の美しい装備をPAにして纏って見せ、ハーネイトに感想を求める。しかし響は少し白い目で、無理やり先生に無茶難題を言ってそれを作ってもらったのかと冷たいことを言う。


 勿論、彩音にその気持ちはあったが、先生はそのおかげで早く研究が進んだと感謝していたといっていたため、響に対し反論する。


「こらこら、3人のおかげで閃いて、これを作ることができたのだ。ありがたいよ」


「そうなのか……先生、やっぱすごいな。これを着ておけば、血徒に感染しないんだな?」


「そうだ。だが血徒が奥の手か何かを使ってくると今の研究レベルだと貫通もあり得る。治療薬を作ったとはいえ、近接戦に持ち込むなら回避を怠らないで。私が力を取り戻していくたびに、その防御効果は連動して強化されるはず、それも踏まえて行動して」


「仕方ねえな、だがこれで安全に敵をぶっ潰せるんだ」


「良く、できましたわねハーネイト様。私もうれしゅう思います」


 ハーネイトはこの研究について、自身の力がCデパイサーを通して連動するならば、力を取り戻すことで皆の強化に繋がるのではないかと考え、改めて親である造物主に恨み節を言いつつ楽しそうにしている響たちを見つめていた。


 その後も多くの人がPAプロテクシオン・アルミュールを色々試し、自由に服を着せ替え出来るなと思い楽しんでいた。


 このPAは、後にハーネイトの故郷でも普及し、色々な商売の動きを変える要因となったらしい。

 

 ハーネイトは一通りみんなの姿を見て、問題はないと判断すると全員席に着くように指示した。


「必要なものはすべて揃った。後は、どう動きどう攻めるか、それだけだ皆。今までよくついてきてくれた。それを、私は非常にありがたいと思っている」


「先公、これからだろうが。んなフラグ立てんじゃねえよ」


「そうだな。五丈厳の言う通りだ。決着をつけ、これ以上被害を防がなければならない。ではこれより、敵防衛ライン強襲突破作戦及び、敵総拠点制圧破壊作戦に関して説明を行います。全員着席し、渡された資料をまず見てください」 


 ハーネイトはオンの顔を見せ、プロジェクターより映し出される作戦概要について説明を始めたのであった。



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