第169話 ハーネイト、キノコ狩りに夢中?
「私としたことが、邪魔者は消し去るわ」
「残り4体、全員感染しているとみて間違いない」
「まとめて処分するまでよ」
「では御照覧あれ!創金剣術・剣乱!光咲き乱れ、万象穿て!霊閃・集束滅光!!!」
「閃血散華!!!あんたらが私に、敵うわけないでしょ?だって、U=ONEなのだから!」
数体の魔獣、しかも感染済みと思われる群れが2人の逃げ場を奪うように包囲するも、ハーネイトもエヴィラも普段見せない恐ろしい表情を見せるな否や、それぞれの戦技が炸裂し、わずか1秒ですべての魔獣が、創金剣の剣先から放たれた霊閃やエヴィラが周囲に無差別に放つ血の刃に胴体を貫かれ絶命していたのであった。
「ふう、十分集まったよね検体は」
「まあね。さて、もう帰りましょう……って何しているの、ハーネイト」
「え、今からキノコを探しに……」
「ちょっと!あのねえ、そんな時間あると思ってるの?って待ちなさい!こらぁああ!」
ここから先は完全にやり取り自体がギャグというべきか、ハーネイトは山を駆け回り手際よくキノコを見つけつつ写真を撮ったり丁寧に採集したりとやりたい放題であった。
ちなみに本来キノコなどを勝手に採取し持ち帰ると場所によっては色々問題があるが、この森一帯はあの宗次郎の所有する土地であるため特に問題はない。というかそこで事件があったため早期に解決してほしいと土地の所有者である宗次郎から依頼を持ち込まれたのが今回の流れである。
「異世界に来て、良かったと思える。こんな変わったキノコ見たことがないぞ!これは……カエンタケか。書店で図鑑購入してよかったぞハハハ」
「みーつーけーた!こらっ!」
「な、いつの間に!」
「もう、貴方ったら突っ走ると人の言うこと聞かないときあるよね」
「こんなに宝の宝庫あるとそりゃはしゃぐって」
「はあ……ある程度したら帰るわよ。韋車さんだっけ、待たせるとまずいんじゃない?」
中でもハーネイトは今回、あるキノコに注目していた。それはカエンタケ。もちろん超猛毒の、もはや生物兵器級の化学兵器ともいえる威力を誇るカビ毒たっぷりのキノコである。どこをどうして間違えるか冬虫夏草と間違えて酒に漬けて飲んで死んだ人もいるあれを、ハーネイトは見つけて無邪気な子供の様にはしゃいでいた。
それを背後からジーっと見つめるエヴィラは、久しぶりに見た彼の嬉しそうな顔に思わず笑みがこぼれてしまう。
いざ戦場に出れば、彼は戦神として全てを消し飛ばす。彼の名前、ハーネイトには戦神としての意味があると言う。
その時の表情を初めて見た時、ひどい寒気がした。動けないほどの恐怖を感じたけれど、今目の前にいるそれは無邪気な子供のように見える。そのギャップが、とてもたまらないようであった。
本当の性格は後者の方なのだろう、けれど世界のために、皆のために彼は性格すら変えて戦い続けている。そんな彼を、どうすれば楽にしてあげられるのだろうかと彼女は思い続けていたのであった。
「全くもう、しかもそれ超猛毒じゃない。てかそれ素手で触っちゃ……あっ」
「私毒効かないのでね、問題ないのだ」
「そうだったわね。貴方を倒す方法なんてほとんどないわよね」
「同じ親から生まれた者は、まあね。あときついこと言われるとショボーンってなるけど、それくらい?あと苦いものは本当ダメ、あれは気を失う」
問題はそのキノコを素手で掴んでいたのだが、本来カエンダケを素手で持つのは危険にもほどがある。
だがご心配する必要はない。そう、ハーネイトも伯爵も、毒が一切効かないのである。何せ最近も猛毒で知られる彼岸フグを釣りで釣った後、丸焼きで食べていたという出来事があり、それを見ていた響と彩音、星奈とジェニファーは慌てるも、ピンピンしている先生の姿を見て呆れていたのであった。
エヴィラも大分彼と付き合いが長い古参組に入るが、彼を観察していると未だに色々な発見をする。
料理は全般とても得意だが苦いものがダメで庶民舌、何らかの乗り物に乗ると寝込むほどに酔う、力を開放すると周囲一帯を虚無に帰す恐ろしい力を持つなど、人間ではないことは分かっていても、人間臭さと常人離れしすぎた一面が両立しているこの男は、観察すればするほど変化が常にあって楽しい、そう思いながら彼の行動に付き合っていたのであった。
そうして予定の時間よりも1時間も遅れ、2人は韋車のいるところまで戻ってきたのであった。
「ったく、大丈夫かなハーネイト。予定より遅かったな。ったく、結果はどうだい」
「韋車さん、やっと終わりました!やはりクロでした」
「何かあったのかと思ったぞ大将さん。けがとかしてねえか?」
「それは大丈夫です。それとしっかり検体取ってきたから、これで血清と試薬を作れる。量に限りがあるのと対応した抗体でないと効き目がないのがあれなんだけど」
車に乗り込んだ2人は、韋車の言葉にそう返し安心しろと言う。彼は少しばかり大丈夫かなと思いつつも、大将がそう言うなら任せるかと言う。
「それならいいんだがな、ここは夜になると明かりがないからな。早めに車動かすぞ」
「了解しました。ではホテルまでお願いします」
「ハーネイト……もう、今度はきちんとデートしてよね」
「ごめんねエヴィラ」
「お熱いじゃねえの、何なら今度いい場所案内するぜ」
「本当?是非教えて欲しいわ」
韋車はそう判断し、すぐに戻ろうといいそれを快諾したハーネイトは、寄り道せずホテルまで運んでほしいと告げる。それに韋車は従い、車のエンジンをふかし速度を一気に上げ、山道を下っていく。
「で、首尾よくいったのかい?」
「おかげさまで。やはり、クロでした。全く、面倒な事ばかりしてくれる」
「このまま放置しておくと、近いうちに大変なことが起きるわ」
「全く、落ち着かないな。動物園を廃園に追い込んだ奴等……っ、俺も全力で事に当たるぜ大将」
運転しながら韋車は、魔獣は結局どうだったのか質問し、やはり敵の手に落ちていたことにそれ相応に驚くも、だから倒すしかねえと言いその後も話をしていた。
「あとは、ハーネイトが防御装置を作り上げるだけか。頼んだぜ」
「ああ、言われなくても」
韋車の運転する車がホテルの地下駐車場に入り、駐車すると急いでハーネイトは研究室に向かい、2人を呆れさせていたのであった。
その日の夜、ハーネイトはPCや紙の資料とにらめっこし続けていた。どうも研究が思うように言っていないようであり、焦りの表情が見えていた。
「……うまくいかないな。理論は確立できているが、これだと消費量に対し防御効果が期待したのよりも低い。何か別にやり方は……。別の見方から検証すれば分かることもある。それと、響たちの意見も聞いてみよう」
霊量創甲という、霊量士高等技術の1つは自身を霊量子で包み、あらゆる攻撃を防ぐという恐ろしいものであるが、これについて問題があり、燃費の悪さをどう是正していくかという課題があった。
それにいくらCデパイサーの容量が桁違いに多く拡張性に富んだものであっても、霊量機関はいいとしてバッテリー自体の機能向上も同時に行わないと現状、うまくいくかどうか分からない状態であった。
そんな中、研究所の扉が開き彩音と九龍、亜里沙が入ってきたのであった。




