第163話 調査準備と血徒の目的
研究所の事件から3日後、ハーネイトは亜里沙、翼、響、彩音、大和の5人を地下会議室に集めてある話をしていた。
それは、魔界同盟及び死霊騎士たちが集う真の拠点が響たちの生まれ故郷である矢田神村にあるということを完全に突き止めたという話であった。
「では、敵の本拠点が島根と鳥取の県境にある矢田神村にあることは確定なのですねハーネイト様」
「ああ、マルシアスの残した置き土産と、ドガ博士、ボルナレロらの協力ではっきり分かった。それにある場所の亀裂を使えばそこまでショートカットしていけることも調査済みだ。マルシアスの情報と重ねても間違いない。やはり、同胞を止めて欲しかったんだろうね」
「そこまで……いよいよ、決戦というわけですね」
「まだ死霊騎士たちは洗脳されている状況、魂食獣もいるし、幹部は血徒まみれ。連携を崩さない限りきついな」
それを聞いた5人はやはりそうだと思っていた。研究所でドガの話したことを思い出し響たちは、村に祭られていた宝玉を求めて村の人を襲ったという話と合わせて、関係性はあって十分だと思っていた。
「ああ、君たちを不幸に追いやった存在の親玉と直接対決することになる」
「ボルナレロさん、敵の数はわかっていますか?」
「概数だが、30体近くの死霊騎士がいるらしい。あの発信機のおかげでよーく分かる」
ハーネイトはそういい、これが実質決戦だという。同席していたボルナレロは亀裂を使い追跡した結果について事前に収集できた情報を5人に提示した。
「今まで倒した奴らも完全に消えたわけではない。そいつらともう一度戦う必要がある」
「マジっすか……前に戦ったのもかよ」
「だが、憑依武装まで覚えた君たちならば大丈夫だ。問題は、残りの同盟幹部だ。フューゲル曰く、何をしでかすか本当に予測がつかないらしい。そもそもほとんどがあれの操り人形と化しているのだから、当然と言えば当然ですが」
死霊騎士は一度死んでいるため時間がたてば何度でも復活する。だがそれを利用したおかげで場所が分かったとハーネイトとボルナレロはそう述べた。
その中で最大の懸念は、魔界復興同盟の動向とソロンの封印解除がもたらす影響、血徒感染への対策である。
「まあ、ここまでがあの悪魔や以前から集めていた情報をまとめ上げ整理しなおしたものであるが、ある意味予想外というべきか、厄介なあれが……」
「ああ、血徒のことだな」
「別々に目的を果たそうとしているどころか、その魔界人の組織を乗っ取っていたってのは中々読めないわね」
「確かに、それは私も思う。さて、これに関して最終決戦の前にやることが今2つある」
今現在の状況をすべて話し終えたハーネイトは、いかにも面倒だと言わんばかりの顔をしつつ机に置いてあった血徒に関する資料を軽く目を通してから全員の方を向いてやるべきことを二つ話した。
「1つ目は血徒の検体及びCP回収、2つ目は矢田神村に繋がるであろう亀裂内のAミッション。これだ」
「あと少しなのに、もどかしいね先生」
「それは君たちの方が、そう思っているだろう?……しかし、分かっていながら危険な目に遭わせたくない。それに、勝つなら確実にだろ?」
ハーネイトの話を聞いて彩音は、ここまで来て足止めを喰らうなんてと思っていた。しかし迂闊に踏み込めば何が起こるか分からない。
はやる気持ちを彩音たちは抑えながら、絶対に全員でこの戦いに勝つと決めていた。
それを見てハーネイトも同感だと言い、自身がついた戦いで負けは一度もないと豪語しつつ今後の話について詰めていく。
「検体集めについては伯爵とエヴィラを中心に菌界人で行う。このため2人はナビゲーター支援などはしばらくできない」
「ということで、お前らはAミッション頼んだぜ。調べたところ血徒の反応はなしだし、敵の警備についてもハーネイトが既に攪乱用の装置を開発しているから安心してイケヤ。ルべオラも変な情報ばかり流しとるようだし、こちらの動きが完全に読まれることはない。あっても敵の迎撃が少しばかりきつくなるぐらいだ。全部醸しちゃるけん」
伯爵たちが抗体を作るための情報収集に就くこととなり、代わりのナビゲーターとしてウォークロード・ミタカ・スギヤギとエレクトリールが任務にあたることとなった。
大和とボルナレロはいつでも行けると言っていたため、力を温存する必要のあるハーネイト以外で響たちの支援ができるのは現在4人であった。
「先生って、そういうところ本当に用意周到ですよね」
「皆で祝勝会をしたいからね、そのためなら惜しまないよ」
「先生……ええ、皆でそうしましょう!」
「さあてとぉ、先生。どこからやればいいか教えてほしい」
ハーネイトの言葉に彩音と響はそうだなと同感し、何をすればいいか質問し、ハーネイトは実験を手伝ってくれという。彼らはその後研究室に向かい、何かを研究していたのであった。
「しかしよぉ、エヴィラ」
「どうした伯爵、いつになく真剣な面持ちをしているが?」
「そういう時もあるわ。それに、私は貴方ほどおちゃらけてはいないもの」
「言ってくれるな。俺は楽しくいきたいだけなんや。人生は一度切りやしのう」
そんな中ホテルの屋上の片隅で、街を見下ろしながら話す男女二人がそこにいた。それは伯爵とエヴィラであった。調査に行く前に、2人は静かに話を続けていたのであった。
「……なぜおまえの元仲間は離反して、どこかに行ったのかなってよ。殆ど居場所の1つすら分かんねえとかもうイラっと来るぜ、なあ」
「……前に言ったはずだけど。……考えたくないけれど、おそらく私の仲間たち、何者かに操られているって」
伯爵は長年疑問に思っていたことを口に出す。それは、菌界人の中でも最強クラスの存在であるウイルス界人の中で一体何が起きたのかということであった。
「同族の中でも最強クラスの存在を操るって、誰だよ」
「ヴァリオラ……分かるでしょ?名前だけなら聞いたことあるはずよ」
それに対しエヴィラは、推測ではあれどある存在がカギを握っているのではないかと言葉を返した。
それは、大昔に暴れまわり多くの命を奪ってきた、邪神ともいえる存在だという。
知っている人ならば、そのヴァリオラと言う存在の真の姿は理解できるだろう。それを知れば、何が何でも阻止しようと思うほどの力を持つ微生界人の頂点に立つ存在であった。
「何故、そう言い切れるんだ?あれは邪神か何かだろ。実際にいるのか?」
「……私の同族が持ち出したものが、その邪神が封印されている石碑だとしても?」
「どういうことだよ、聞いてねえんだけど」
伯爵はエヴィラの言った、ヴァリオラという存在について話には聞いたことはあれど、それは伝承上の何かではないかと存在について疑っていた。
なぜそのヴァリオラが関係するのか、それをエヴィラは悲しそうに話した途端彼の顔に動揺が見られる。
「まだ確証はないけど、あれが皆を操って、恐ろしい計画を手伝わせているんじゃないかって」
「どうなんだろうな。計画ねえ、あいつらはあれ、見えるか?」
「ええ、赤く光る、あの星ね」
「あれをやたら気にしているようだ。なあ、あれと血徒が持ち出したその石碑、関係あるんだろうか」
「私は、なくはないと思う。思うだけだけど、いやな予感しかしない」
「そうか、あーあ。何で面倒なことばかりなんだかな」
2人はその後も互いに持っている情報を出し合い話を続けるが、どうもしっくりこない点ばかりであり、彼らは悩んでいたのであった。
何故血徒は王であるエヴィラを裏切り、そのような行動に出たのか。星との関係は何なのか、理由が掴めていない状況が本当にもどかしいと思い、しばらく夜景を見続けながら2人は話していた。
屋上に吹く風が彼らの間を無理やり通り抜け姿勢を乱そうとし、それを戻すと彼らは調査のために屋上を後にしたのであった。
一方でホテル地下休憩室及びその廊下ではある3人の男が何やら話をしていた。




